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第2章 検査と認証
 
2.1 一般
2.1.1  本コードで認められた例外を除き、1.2に規定された全ての舶用ディーゼルエンジンは、次の検査を受けなければならない。
.1 エンジンが設計され組立てられた状態において、附属書VIの第13規則に定められたNOx排出制限値に適合することを確認するための予備検査。この検査で適合することが確認された場合、主管庁はエンジン国際大気汚染防止(EIAPP)証書を発給する。
.2 エンジンが搭載された後、就航前に船上で初回検査を実施しなければならない。この検査は、予備検査の後にエンジンの改造や調整が行われた場合も含み、エンジンが船に据え付けられた状態において、附属書VIの第13規則に定められたNOx排出制限値に適合することを確認する。船の初回検査の一部として行うこの検査により、船の初回の国際大気汚染防止(IAPP)証書の発給又は新しいエンジンの据え付けにより必要となる既存のIAPP証書の更新が行われる。
.3 附属書VIの第5規則に定められた船舶検査の一部として行われる定期検査及び中間検査は、エンジンが継続して本コードの要件に完全に適合することを確認するためのものである。
.4 エンジンの実質的な改造が行われた際には、その都度、改造されたエンジンが附属書VIの第13規則に定められたNOx排出制限値に適合することを確認するため、エンジンの初回検査を船上で行わなければならない。
2.1.2  2.1.1に規定される検査および認証の要件への適合のため、選択可能な5つの手法が本コードに規定されている。エンジンのNOx排出値を計測、計算又は試験するためにエンジン製造者、造船所又は船主は、以下に示すそれらの手法から選択することができる。
.1 予備検査として行う試験台での試験。この試験は、第5章の規定に従い行う。
.2 予備認証を受けていないエンジンに対する、予備検査と初回検査を同時に行う船上試験。この試験は、5章に規定される試験台上での全要件に従い行う。
.3 予備認証を受けたエンジン又は前回の検査後に前もって指定されているエンジン構成部品又は調整可能部分に改造又は調整がなされているエンジンに対して、初回検査、定期検査及び中間検査において適合性の確認を行うための船上におけるエンジンパラメータチェック法。この手法は、6.2の規定に従い行う。
.4 定期検査及び中間検査において適合性の確認又は予備認証を受けたエンジンの初回検査における確認を行うための簡易船上計測法。この手法は、要求される場合6.3の規定に従い行う。
.5 定期検査及び中間検査時のみにおいて適合性の確認を行うための船上直接計測及び監視。この方法は2.3.4、2.3.5、2.3.7、2.3.8、2.3.11、2.4.4及び5.5の規定に従い行う。
 
2.2 エンジンの予備認証のための手順
2.2.1 船に搭載する前に、2.2.2及び2.2.4の規定で認められた例外を除き、全てのディーゼルエンジンは以下に従わなければならない。
.1 該当するNOx排出制限値に適合するよう調整すること。
.2 本コードの第5章に規定された手順に従い試験台上でNOx排出値を計測すること。
.3 主管庁によるEIAPP証書の発給により予備認証を受けること。
2.2.2  シリーズで製造されるエンジンの予備認証においては、主管庁の承認に基づきエンジンファミリー又はエンジングループという概念が用いられてもよい。(第4章を参照のこと。)この場合には、2.2.1.2に規定される試験は、エンジングループ又はエンジンファミリーの親エンジンのみに適用される。
2.2.3  エンジンの予備認証を取得する手法は、主管庁としては、以下のことを行うことである:
.1 試験台におけるエンジンの試験を証明すること。
.2 エンジンファミリー又はエンジングループとして出荷されるエンジンがあればそれも含めて全ての試験されるエンジンがNOx制限値に適合することを検証すること。
.3 該当する場合には、選ばれた親エンジンがエンジンファミリー又はエンジングループの代表であることを検証すること。
2.2.4  エンジンのサイズ、構造及び出荷スケジュールにより、試験台での予備認証を受けることができない場合があり得る。この場合、エンジン製造者、船主又は造船所は、主管庁に対して船上試験の申請を行わなければならない。(2.1.2.2参照。)申請者は、主管庁に対して、その船上試験が本コードの第5章に規定された試験台での試験の要件に完全に適合することを示さなければならない。このような検査は、単独のエンジン又はエンジングループの親エンジンに対してのみ認められる。しかし、エンジンファミリーに対する認証に適用されてはならない。有効な予備認証試験を行わず初回検査を船上で行う場合、計測の許容ばらつきは認められない。
2.2.5  予備検査の結果が附属書VIの第13規則に示されるNOx排出制限値に適合しなかった場合には、NOx低減装置を装備してもよい。同装置を装備した場合には、この装置がエンジンにとって不可欠な構成部品であることを認識し、エンジンテクニカルファイルに記録しなければならない。この低減装置を装備したエンジンに対するEIAPP証書を取得するためには、装備状態においてNOx制限値に適合することを示す再試験を行わなければならない。ただしこの再試験は、6.3に規定される簡易計測法により行ってよい。このNOx低減装置を、主管庁により要求される他の全ての記録と共にEIAPP証書の上に明記しなければならない。エンジンテクニカルファイルには、この装置が正常に作動していることを確認するための船上におけるNOx検証方法を含まなければならない。
2.2.6  エンジンファミリー又はエンジングループに属するエンジンの予備認証に関しては、親エンジン及びその認証の下で製造される全てのメンバーエンジンに対して、主管庁が定める手順に従ってEIAPP証書が発給され、そのエンジンが当該主管庁の権限下にある船舶に搭載されている間備え付けられるようにしなければならない。
 
2.2.7.1  エンジンが、搭載される船舶の主管庁のある国以外で製造される場合、船舶の主管庁はエンジンが製造される国の主管庁にそのエンジンの検査を要請することができる。このNOxテクニカルコードにより、附属書VIの第13規則に適合すると認められるときは、エンジンが製造される国の主管庁はEIAPP証書を発行するか、又はその発行を委任する。
2.2.7.2  証書の写し及び検査報告書の写しは、できるだけ速やかに検査を要請した主管庁に送付しなければならない。
2.2.7.3  このように発行した証書には、当該証書が主管庁の要請に基づいて発行された旨を記載しなければならない。
2.2.8  船に据え付けようとする舶用ディーゼルエンジンに対する予備検査の要件に適合するための要領を示したフローチャートを本コードの付録2の図1に示す。
2.2.9  本コードの付録1にEIAPP証書のひな型を添付する。
 
2.3 エンジンの認証手順
2.3.1  エンジン製造者のオリジナル仕様から調整又は改造が行われていないエンジンは、有効なEIAPP証書をもって、該当するNOx制限値に適合したとみなされる。
2.3.2  船に搭載後、どの程度NOx排出に影響を与え得るエンジンの調整又は改造が行われたか確認されなければならない。このためエンジンは船内搭載後、IAPP証書の発行前に改造に対して検査され、船上におけるNOx検証方法及び2.1.2で述べられた方法の1つを用いて承認されなければならない。
2.3.3  予備認証後、最適な性能とするために最終的な調整及び改造を必要とするエンジンの場合、変更後でもそのエンジンが制限値に適合することを確認するために、エンジングループの概念を用いてもよい。
2.3.4  船主は、NOx排出値をエンジンの運転中に直接計測する方法を選択してもよい。このデータは、通常の状態でエンジンの全運転範囲に亘って他の運転データと共に記録する抜取り検査の形をとるか、又は、連続的に監視し、データを保存して結果を残してもよい。データは、最新のもの(30日以内に計測されたもの)でなければならず、また、このNOxテクニカルコードで規定される試験方法を用いて得られたものでなければならない。この監視記録は、1997年の議定書の締約国による検証のために3ヶ月間船上に保管しなければならない。更にデータは大気条件や燃料仕様による補正を行わなければならない。また、計測装置は、エンジンのテクニカルファイルに記載される計測装置製造者により指定された手順に従い正しい校正と作動が確認されなければならない。NOx排出値に影響を及ぼす排気ガス後処理装置が装備される場合には、計測点を装置の下流としなければならない。
2.3.5  直接計測法により適合を示すために、本コードに従い重み付けによる平均NOx排出値を計算できる十分なデータを採取しなければならない。
2.3.6  船に据え付けられた全ての舶用ディーゼルエンジンには、テクニカルファイルを備えなければならない。テクニカルファイルはエンジン製造者により用意され、主管庁の承認が必要とされるそしてエンジンが船上にある期間を通じて備え付けなければならない。テクニカルファイルには2.4.1に規定される情報を含まなければならない。
2.3.7  排気ガス後処理装置が装備され、NOx排出制限値に適合するためにそれが必要な場合、附属書VIの第13規則に適合することを検証するための簡単な手段を与えるオプションの一つとして、2.3.4に従ったNOxの直接計測及び監視がある。しかし、使用される装置の技術的な可能性によっては、主管庁の承認に基づき他の関連するパラメータの監視を行ってもよい。
2.3.8  NOx制限値に適合するために、アンモニア、尿素、蒸気、水及び燃料添加剤などの添加物が導入される場合、添加物の消費量を監視する方法を備えなければならない。テクニカルファイルには、その簡単な手段が、そのような添加物の消費量が該当するNOx制限値に適合していることと矛盾しないことを示せるよう十分な情報を備えなければならない。
2.3.9  予備認証後、エンジンの調整又は改造が行われた場合、その全てについてエンジンパラメータ記録簿に記録しなければならない。
2.3.10  船に搭載された全てのエンジンが、テクニカルファイルに記録されたパラメータ、構成部品及び調整可能な主要部分について規定範囲内にある場合、これらのエンジンは、附属書VIの第13規則に示すNOx制限値に適合すると認められる。この場合、本コードに基づきIAPP証書が船舶に対し発給される。
2.3.11  調整又は改造が行われ、その内容がテクニカルファイルで承認を受けた範囲を超える場合、NOx総排出量が制限値の範囲内にあることを次の方法により検証した場合のみIAPP証書が発給される。その方法とは、主管庁により承認された船上直接NOx監視、船上簡易NOx計測、又はその調整又は改造がNOx排出制限値を超えることにはならないことを示す該当エンジングループの承認のための試験台での試験との照合である。
2.3.12  主管庁はその裁量により、EIAPP証書が発給されたエンジンに対する船上における検査の全ての部分について本コードに従って簡略化又は軽減することができる。ただし、少なくとも1つのシリンダー、又はエンジンファミリー又はエンジングループの中の1つのエンジンあるいは該当する場合は予備品に対しては、船上における詳細検査を行わなければならない。この場合、他の全てのシリンダー又はエンジン又は予備品が、検査されたシリンダー又はエンジン又は予備品と同じような性能を有することが予期される場合のみ省略できる。
2.3.13  船に据え付けられた舶用ディーゼルエンジンに対する最初の検査、定期検査及び中間検査の要件に適合するための要領を示したフローチャートを本コードの付録2の図2及び3に示す。







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