ISO/TC8
(船舶及び海洋技術)
NEWSLETTER
JMSA NO.6
(ISO/TC8 NO.9)
2002年7月
財団法人 日本船舶標準協会
ISO/TC8 Secretary
国際部長 小郷一郎
今回のニュースレターは、2002年6月5〜7日スペイン国のカディツ(Cadiz)で開催されました第34回ISO/TC8諮問グループ会議の概要報告を中心に、ISO/TC8の動向についてご紹介いたします。
●第34回 TC8諮問会議(Advisory Group)の概要
2002年6月5〜6日スペインの大西洋に面したリゾート地カディツのホテルで二日間の諮問会議が開かれ、続いて7日にISO/TC8セミナーが開催されました。
今回の諮問会議の主な内容は、TC8議長が自ら提案された「海上安全/テロリズム対策支援」に関する事項が中心となりました。
ご存知のとおり、昨年の9月11日、米国ニューヨークの世界貿易センタービルは、テロリストからの攻撃により壊滅いたしました。この事件を受けて、海上からのテロリストの攻撃の可能性が示唆され、予想される被害の甚大さを配慮し、「海上安全対策」がIMOを中心に検討されております。
以前からNews letterでご紹介させていただいておりますように、TC8はIMOと密接な協力関係を保持しており、かつTC8議長は元海軍軍人ということもあり、IMOでの「海上安全対策」の検討段階から、関係するIMOの会議に出席するなどして、国際標準化の立場から本件に対する協力・貢献の可能性を模索しております。
今回のAG会議では、この一環として、IMOが主導する「海上安全対策」国際諮問グループ(IMO、ILO、ICS、WCO、IAPHなどから構成)に積極的に参加し、その‘Pilot Project’(運搬中のコンテナ貨物の識別と足跡を電子的に把握するための試験プログラム)に、TC8やTC104が開発する国際規格を提案したり、国際規格の有効性を確認するなどの観点からIMOに協力することが決まりました。
また、同じ観点からIMOで審議中のAIS(Automatic Identification System)の機能向上や早期適用などにTC8として最大限の協力を行うこととなりました。
一方で、TC/8/SC11(Intermodal and Short-Sea-Shipping)の今後の重要性を配慮し、これまで進展のなかったSC11議長の交代(ルーマニアからスペインへ)を決めるなど、TC8の活性化のための審議も合わせて行われました。
最後に、AG会議の翌日行われました‘ISO/TC8セミナー’には50名以上の参加者があり、次の講師が有意義な発表を行い盛況裏に終了いたしましたので、その資料の一部を巻末に掲載いたします。
・ISO/TC8セミナー発表者
TC8 議長:International Standards for a Prosperous and Safe International Maritime Industry-the ISO/IMO Partnership
Mr. Palomares, (IMO):IMO maritime safety regulations of imminent application:an update
Mr. Rafael Gutierrez Fraile, (IZAR):European Short-Sea Shipping―A Turning Point
Mr. Manrique Alvarez-Acevedo, (IZAR):The Challenge of Merging two Cultures in a single Material and Components coding system:IMCCP
(プレゼンテーションの内容をお知りになりたい方は、小郷までご連絡ください。)
我がISO/TC8のプログラムは、継続して拡大しており、我々の顧客−産業界、IMO及び世界経済界の要求に迅速に対応する柔軟性を維持しています。今日、論議の的である重要な海事安全/テロリズム対策を支援することで、我々が既に持っているか、又は計画中の提案の幾つかをこのニュースレターで紹介します。我々は、IMO特別会議、IMO総会及びIMO/MSCに規格の提案を持って参加し、要求される国際規格の開発を実行するための加速された手法を用いて、積極的に、軌道に乗ったプログラムの支援をすることで、直ちに対応しています。また、他のISO/TC議長、IAASP(国際空港及び港湾警察)、WCO(世界税関)等との必要な連合を形成しています。
我々は、明確なゴールを持ち、それに焦点を合わせ、顧客に対する責任を持ち、「必要なものは何で、それが必要なのは何時か」という目標に合わせて提供する努力をしています。
TC8議長 Capt.Charlie H.Piersall
Tel: +301-934-4655 Fax:+301-934-5785
E-mail:amadis@olg.com
ISO/TC8から海事安全対策の重要性の提案
第22回総会中に、IMOは、ISOのオブザーバ会議(議長、ISO/TC8)によるISOの海事安全に関する規格の開発作業に関する助言を受けました。ここでは、3つの提案が提出されました。
・ISO 15849−船舶管理システムネットワーク実施のためのガイドライン、2001年9月発行
・ISO 16917−海事、インターモーダル輸送及び安全のためのデ−タ伝送
・コンテナ貨物の識別番号と電子封印を使用した‘追跡’に対する国際的な「試験」的試み。この「試験」的試みは、近年主要な海運会社と電子封印の製造者とからの支持を約束されています。我々は、このための規格を開発し、結果を試験します。この提案の二つの目的は、コンテナを封印する人を積極的に識別(ID)するためと、輸送中及び港のコンテナターミナルに置かれた間のコンテナの「安全警察」の警戒を損なういかなる不正への警報装置を持たせることにあります。この海事安全に関係する我々の作業は、ISSAP(国際空港及び港湾警察)からの支援も受けています。
・データ伝送
潜在的なテロリストの攻撃から守るための輸送産業安全システムの必要性が、最近の出来事から示されています。国際輸送のその多くが海上輸送によることから、こうした貨物輸送に携わる全ての船、又は船積みされる貨物の全てを港で検査することは不可能です。即時的な唯一の解決策は、現在あるデータを解析するための情報技術を利用することにより、何がしかの警告が発せられる場合があるということです。このような安全システムは、特別な情報へのアクセスと、その情報を非常に迅速に有効な様式に変換する能力とに深く依存するのです。要求された情報は、電子的に利用可能であり、情報そのものは、世界中の政府機関及び産業界両方のデータベースに存在しますが、これらデータベースの多くは、主として彼らが所属する組織の必要性のために構築されたものであり、その他のデータへの変換を考慮した設計とはなっていません。
電子データを継目無く変換するための必要性は、通常の経済社会では何年も前から明らかになっています。こうしたデータ変換問題を解決する努力が、EDI(電子データ変換)メッセージの実行を通して行なわれていますが、これは時間がかかり、組立てるのに多くの手間がかかり、かつ、統一された単一の国際規格ではありません。各データメッセージは、それぞれが独自のデータの定義を有し、そのデータは、今日産業界で使用されている多くの異なったデータ伝送メッセージに変換されています。一般に海事産業界の問題同様、海事輸送安全の問題を解決するキーは、これらの情報共有を容易にし、現在ある蓄積されたデータベースのインターネットを介した利用により、迅速な国際規格を開発することです。
データの定義は、メッセージとは独立させなければならず、個々のEDIメッセージの集まりとするよりは、むしろ標準化されたデータ辞書内で識別されなければなりません。データ辞書は、最新のXMLデータ伝送技術の利用を容易にします。合意されたデータ変換用の規格が、標準データ辞書を構成するデータ要素という名前と構造で、特定の産業界グループに割当てられて検討が開始されています。
国際規格ISO 16917は、現在ISO TC8/SC10の作業グループにより開発中ですが、海事データ変換の問題を扱っています。このような国際規格なしに、如何にデータに名前づけし、構築するかは、いろいろな関係第3者間の合意を得ることは極めて難しいことです。このような規格が、参加している全ての部門からの広範囲に亘る安全データ領域を含んだ辞書の作成を容易にします。
現在ある多くの産業界及び政府機関が開発したITシステムは、潜在的なテロリストの活動を確認することの支援に有効です。最新のEDIデータの集まりは、辞書作成の基本として利用可能です。上記に示されたISO規格の作成は、特別な海事/安全データ辞書に基づいた継目ないデータ変換を介して、互いにリンクし、これらシステム及び将来のシステムの基本となる構造部分を構成するものです。
・「試験」プログラム
コンテナ輸送システムは、出来るだけ少ない中断で貨物を迅速に発送元から目的地へ移動させる設計となっています。最近の出来事から、安全が侵害され易いシステムに注目すべき焦点が合わされています。新しい取組みは、コンテナの安全を商業的な流通を中断することなく強化することが要求されています。
「試験」プログラムは、貨物輸送の安全改良と生産性向上に焦点を当てた、国際的な公共/民間連合体を形成するものです。この連合体を通して作成されるプログラムは、インターモーダルな輸送産業の慣習の大部分に亘る、国際的な試験プロジェクトのシリーズを実現します。この試験プロジェクトへの参加者は、国除的な主要な産業界及び政府機関の輸送関係第3者を含みます。産業界の連合体には、二つの主要な海運会社−Maersk/Sealand及びAPLがその中心として参加しています。その試験輸送航路は、Maerskがロッテルダムからエリザベス及びパナマからヒューストン、APLがシンガポールからロサンジェルス及びシアトルです。主要な封印業者も参加を約束しています。
「試験」プログラムの目的は、運送中の中断を最小とするコンテナの状態、位置及び来歴にほぼ100%の確信を持たせることによる、貨物の安全性を強化するデータの作成、プロセス及び技術的解決です。規格は、これからの試験プログラムの助けを借りて作成されます。これらの試験プログラムは、規格の開発手順を加速すると共に、規格実行の上で、産業界/政府機関の連携作業を形成します。
各試験プログラムは、インターモーダルシステム内でのコンテナ貨物を、発送元から目的地まで移動し、それを解析します。それぞれの試験プログラム内で、最新の商慣習を定めた基本線は、船積みされるほぼ40個のコンテナから選ばれた次の組合せにより得られます。基本線は、コンテナの積付け及び封印に使用される最新の手順と技術、データ及び書類の伝送、港と国境を横断する検査と通関、並びに荷受人への最終の引渡しを文書化します。基本線の解析後、不足額が鑑定され、修正が提案され、その上で改良された手順を使用した新しい船積みが実施されます。こうしたシリーズ化された試験プログラムは、インターモーダルのそれぞれのシナリオに、独特な手順及び発行物を調査可能とするために必要です。
安全に関する発行物の大部分は、試験プロジェクトにより確認されます。商業的流通への影響を特有の表現で確認する1つのキーとなる例は、「何時検査の機会が発生し、新しいコンテナの封印とタグが如何なる助けとなり、誰がコンテナを封印し、又は荷造りしたかという情報が如何にして得られ、検証できるのか、さらに、コンテナの「管理人」としての責任は何なのか?」ということです。
貨物の管理人は、貨物を管理する間、利用可能な情報を作成する責任を有します。特定の情報(例えば、コンテナが封印された場合、誰が封印し、コンテナの中身は何であるかといった)は、会社のデータベースから引出すか、センサからリアルタイムで得るか、又は直接記入することで得られます。データは、交換可能な様式で、いろいろな資格あるユーザがリアルタイムで利用可能です。次の管理人へ届けられる前に、確認と照合の手順が行なわれます。このようなシステム内では、安全強化のための各種の操作の変更が可能です。考えられる重要な変更は、発送港からの船積み前に政府機関の代理店によるコンテナ照合を行なうことによる「国境への返却」があります。このような情報システムの利用が可能な場合、こうしたシステムは、貨物を確認するための枠組みとして提供され、複雑な貨物安全システムを含んだ統合センサ、封印及びその他の技術を支援することが可能となります。
このプログラムから得られるものは、貨物管理の保守及び譲渡、伝送すべき追加のデ−タ、データ通信用のセンサインターフェースとモード、及び必要とされたベース上でのデータへのアクセスとデータ検索方法に対する新しい手順の推奨案が含まれています。これらのプログラムは、新しいプロセス、技術及びデータの流れの受入と実行を進行するための現在ある規格及び新しく現れる規格に係わっています。
規格は、TC104、TC204、いくつかのJTC1小委員会及びいくつかのTC8小委員会からの議長に、ISO/TC8の議長が全体議長を務める国際規格グループにより開発されます。
国際海事機関(IMO)事務局は、海事安全事項の組織的、かつ一貫した確実な取組みのために再構築されています。海事安全部門(MSD)の航行部門は、航行安全及び海事安全部門として再編成されました。航行安全小委員会(NAV)及び無線通信・捜索救助小委員会(COSMAR)の作業に関係する従来からの業務に加えて、新しい部門では、船舶に対するテロリズムの活動を、防止し抑圧するための関連規定事項に対する責任を持つことになりました。この部門は、船舶への海賊と、武装した泥棒とに関する事項にも、引続き責任を負い、かつ海事安全部門(MSD)の技術協同実施及びプロジェクト管理部門との協同で、海事安全に関係する技術的な協同プロジェクトの達成に技術協同部門を支援することになりました。さらに、MSDの焦点である、海上において救助された人の取扱いの安全な方法と手順に関する決議A.920(22)を、安全の観点から、見直しを実行することでも活動します。これらの再構築は、IMOの海事安全事項の達成を継続した活動に反映されています。
●海事安全/テロリズム対策でISO/TC8議長を支援する特別相談役の任命
ISO/TC8の議長は、TC8の海事安全/テロリズム対策活動のために、ISO/TC8の議長を支援する特別相談役としてRoger Butturiniを任命しました。この立場でMr. Butturiniは、海事安全に対する世界的な要求に応えて議長を支援することになります。
Mr. Butturiniの立場は、議長に直接報告する「スタフ」であり、TC8の事務局、各SC議長、又は事務局の役割である責任/権限の「ライン」に影響してはならず、又諮問グループ(AG)の活動役割にも影響してはなりません。また、既に正式に職員の責任として割当てられている連絡事項を置換、変更したり又はこれに取って代えることはできません。むしろ、Mr. Butturiniは、IMO及びIAPHとの連携した個人的な関係、及びILO及びWCO(世界税関組織)両方との関係を増大させ、海事安全/テロリズム対策に関連したTC8規格の開発活動の情報源を調整することを意図しています。ISO/TC8の議長は、ISOに対して、個人的にこれら4つの団体組織との間の連絡調整を行なってきています(今後も継続してそうします)が、議長が、適切に、かつ迅速に、そして良好な協調体制でISOのために対応することは重要なことです。Mr. Butturiniは、海事安全/テロリズム対策に関連する業務の最適化の観点から議長を支援します。
Mr. Butturiniは、退任した沿岸警備隊士官ですが、規格開発分野に、25年間に亘る経験を有しています。彼は、数多くの産業規格の著者であり、かつ、最近ではTC8/SC3の副事務局として活動していました。彼は、IMOの設計設備小委員会のアメリカ代表であり、また、現在、規格のSNAME技術及び研究小委員会(T&R)の議長です。
Mr. ButturiniのTC8における責任について、質問又は意見がありましたら、遠慮なく直接ISO/TC8の議長に申し出下さい。
ISO/TC8は、2001年12月17−21日の間スイス、ジュネーブのISO本部にて開催された海事労働規格の第1回3分割会議に参加しました。会議は、正式な政府機関代表、船主代表及び船員代表から構成され、ISO、ICS、ISF、BIMCO及びWHOは、非政府機関の中の正式オブザーバとして参加しました。ISOにとって興味ある最も重要なILO事項は、IMOのISMコードと同等の文書の確立要求、実行規格の要求、及び現在のILO文書の保守の必要性です。ISOは、ILOの中央事務局に、彼らの作業を支援するために、ISMコードは、ISO9002の品質管理システム文書に基づいていること、及びISO 9000及びISO 14000両方のガイドのコピーを無料で提供することを助言しました。ISOは又、性能規格は、ISOの「生き方」であり、現在のISO規格の保守は、全てのISO規格を5年間の間隔で定期的に見直す絶対規定により問題ではなくなったことを助言しました。ISOは、ILOの作業を支援することを提案し、ISO規格が直接参照される場合には、経費の問題は解決されることも指摘しました。
ISO/TC8の議長は、海事安全委員会の海事安全に関する期間作業グループのためにIMOへ提出した、海事事項に対するテロリズムに関する提案のISO情報紙のコピーを、ILOに提供しました。
ヨーロッパにおける短距離海運−変換点
(プレゼンテーション抜粋)
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今回の諮問会議が開催されたのは、スペインのアンダルシア地方の名勝地であるCadiz(カディツ)近郊のSancti Petriにあるリゾートホテル‘Hotel Melia Sancti Petri’です。
当地へは、ヘルツ(Jerez)又はセビリア(Seville)空港から、タクシーで1時間以上かかります。
カディツ(写真下)は、大西洋に面して、ヨーロッパでも古代から開かれた港湾都市であり、コロンブスの第2回目の航海もここから出発しています。近くに、ジブラルタル海峡やトラファルガー(英西海戦で有名な地名)もあります。
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