第2部 欧州・韓国造船摩擦における対応
欧州と韓国を巡る造船摩擦をめぐる対応について、概要を整理した。また各項目の関係資料を付録1〜18として添付した。
本レポートは1999年10月の第1次報告書、2000年5月の第2次報告書、同年12月の第3次報告書、2001年5月の第4次報告書に続くもので、序説、世界の造船市場の分析、韓国の船価分析、及び結論の4部構成で、韓国の不公正慣行を指摘する内容となっている。
序説
本報告書は以前の4つの報告書の内容を最新化したものである。造船は、その特性上不公正慣行が立証しにくく通常の通商措置が適用できない。ECは造船助成の削減に取り組んできたが韓国の設備拡張で深刻な経営問題が生じたが、低船価受注を続け、市場への悪影響が生じた。過去のレポートに基づいて韓国へ市場安定化を求めてきたが事態の改善がみられない。貿易障害規則(TBR)に基づく調査ではWTO補助金協定に反する補助金が供与され、相殺対象となるとの結論を得ているため、ECはWTO提訴と暫定造船助成措置の2つの方針を決定した。
世界の造船市場の分析
2000年は低船価に触発され29百万CGTを超える記録的な受注量だが、2001年は低船価にもかかわらず21%減少した。手持ち工事量が低下する2003年以降に不安が残る。1997年98年のアジア経済危機後に船価回復の努力がなされ、2000年末まで船価は回復傾向を示したが2001年に入り減少した。2002年も船価回復難しく中国についても注視していく。
韓国の船価評価
コストモデルをアップデートしたがこれまでに分析した韓国の32件は全て正常価格を下回る。新たに6件の新規受注を分析したがLNGが2隻正常価格を上回ったのみで残は下回った。三湖は徐々に建造コストをカバーするようになってきたようであるが未だに負債金利や元本の返済はなされていない。大宇は2000年に新会社として生まれ変わり初期投資なしで経営が可能となっている。三星はなお200%を超える債務を抱えている。現代は不効率資本の廃棄で黒字に向かっている。
結論
需給不均衡で世界の造船業は引き続き厳しいが、韓国だけでなく中国でも設備拡張が進み船価の低下を招いている。いくつかの韓国造船所はコスト割れしている。何度もの協議を韓国と行ったが解決できなかった。
暫定防御メカニズム規則の概要は以下のとおり
第1条(定義)
EC規則1540/98第1条の定義によるほか次の事項について定義。
(a)コンテナ船
(b)ケミカルタンカー
(c)プロダクトタンカー
(d)LNG船
第2条(助成)
1 |
コンテナ船、ケミカルタンカー、プロダクトタンカー、LNG船が助成対象。 |
2 |
LNG船に対する助成は、2002年の調査結果により共同体域内の造船業者が甚大な被害等を被っている旨EU官報に掲載されたときに認められる。 |
3 |
助成率は最大6%。 |
4 |
最終契約締結から3年以上たって納入する船舶に適用してはならない(例外規定あり)。 |
5 |
欧州委員会はパラグラフ1の市場動向について見直しを続けていく。 |
6 |
EC規則1540/98の規定を準用。 |
第3条
第2条で認められている助成は、EC設立条約88条の規定に従わなければならない。
第4条(規則対象の契約)
規則発効から失効までの間に締結された最終契約に適用。ただし、WTOの紛争解決に係る規則及び手続に関する了解に基づき紛争解決手続きを開始した旨がEU官報に掲載される前に締結された最終契約及びEU官報に紛争解決手続きが解決した旨等の掲載がなされた1ヶ月以上後に締結された最終契約には適用しない。
第5条(施行期日)
EU官報掲載の日から2004年3月31日まで。
EU、韓国の不公正造船慣行への対抗戦略を合意
本日、閣僚理事会は、欧州委員会が提案した造船分野における韓国の不公正な慣行に対抗する対韓の戦略を承認した。EUは、平和的に紛争を解決する期限を9月末に設定した。失敗した場合には、直ちにWTOにおける韓国に対するパネル協議手続を開始し、欧州の造船業者に対し暫定防御メカニズム規則を作動させる。欧州委員会は、造船分野における通常の貿易慣行を復活させるため、韓国当局との更なる交渉を行う予定である。
欧州委員会は、遅くとも9月30日までに韓国との交渉結果を閣僚理事会に報告し、この段階で交渉が成功していないと判明した場合には、欧州委員会は次の対の戦略を開始する。
(1) |
造船分野における韓国に対するWTOパネル協議の開始 |
(2) |
暫定的かつ制限的な助成措置、いわゆる暫定防御メカニズムの開始 |
暫定防御メカニズムの主な規定は次のとおり。 |
・ |
最大助成率は契約額の6%。 |
・ |
適用範囲は、コンテナ船、プロダクト・ケミカルタンカー及びLNG船。 |
・ |
コンテナ船、プロダクト・ケミカルタンカーに係る助成は、欧州委員会が韓国に対するWTO手続を開始した(韓国との2国間交渉がの結果が不成功に終わったとの欧州委員会の判断による。)旨の通知がEU官報に掲載された後に認められる。 |
・ |
LNG船に対する助成は、2002年をフルにカバーした欧州委員会のTBR調査に基づき、共同体域内のLNG船を製造している造船業者が韓国の不公正な慣行により直接的に甚大な損害及び深刻な被害を被ったということが確認されたときに認められる。 |
・ |
規則の失効時期は2004年3月31日。(WTOパネル協議において結論が得られるまでの必要な時間、つまり9月から18ヶ月間を考慮したもの。) |
閣僚理事会へのステートメントにおいて、欧州委員会は次回の産業相理事会において交渉の最新状況及び世界の造船状況を報告する旨約束した。
2002年をカバーする更なる調査に関し、欧州委員会は2002年12月初に業界に対するTBR質問表を開始することを明らかにした。業界からの回答に基づき、欧州委員会は更なる調査の結果が2003年早期、遅くとも2003年3月までには示せることを期待している。
欧韓協議決裂発表
2002年8月26日と27日の両日に亘り、欧韓事務次官レベルにおける集中協議が行なわれた。
造船部門における船価下落問題に対する短期的対策に関して、船価レベルとその他合意条件に焦点を当てて討議したが、双方の立場に歩み寄りは見られず、欧州代表団は、2001年6月協議時点で提示された船価レベルより平均10%低いだけという韓国側の提案に合意できなかった。
欧州委員会では2002年9月末日までに実現可能な解決策を模索するため、最善の努力を継続する。
9月にブリュッセルで予定されている協議でも解決できない場合は、EUとしてWTO提訴に踏み切らざるを得ない。
欧州委員会(EC)プレスリリースIP/02/1343
2002年9月24日コペンハーゲンにおいて、朝鮮半島保安問題を主要課題とするEU韓国サミットが行なわれる。
EU側参加者:欧州閣僚理事会議長Rasmussenデンマーク首相(議長国デンマーク代表)、EC代表Prodi委員長、デンマークMoller外相、EC外務担当Patten委員、EC貿易担当Lamy委員
韓国側参加者:金大統領、韓国政府代表(外務大臣、貿易大臣、特別顧問、各省官僚など)
EU−韓国 外交関係は、2001年に発効した二国間貿易協力合意によって政治・経済的に良好。EUは韓国における最大の投資国であり、貿易高では3位。ただし、造船分野が早急な解決を要する二国間協議の課題である。
朝鮮半島問題 最近の日本と北朝鮮両国協議を歓迎し、EUとしては和平努力支援を継続する。
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