刊行によせて
当財団では、我が国の造船関係事業の振興に資するために、日本財団から競艇公益資金による助成を受けて、「造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業」を実施しております。その一環としてジェトロ船舶関係海外事務所を拠点として海外の海事関係の情報収集を実施し、収集した情報の有効活用を図るため各種調査報告書を作成しております。
本書は、(社)日本舶用工業会及び日本貿易振興会が共同で運営しているジャパン・シップ・センター舶用機械部のご協力を得て実施した「欧州における船舶からの排出ガス削減対策に関する動向調査」の調査結果をとりまとめたものです。
関係各位に有効にご活用いただければ幸いです。
2003年3月
財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団
はじめに
欧州、特に北欧は環境に関する意識が高く、環境問題では常に世界をリードしてきました。船舶からの排出ガスに係る環境問題への取組みも同様であり、国際海事機関(IMO)において採択された国際条約の発効を待たず、スウェーデンでは船舶からの排出ガスレベルを考慮した規制が導入されているほか、欧州委員会(EC)やノルウェーでは船舶からの排出ガス削減のための規制導入が検討されています。
一方、このような規制や規制検討動向並びに北海、バルト海等の環境脆弱(環境影響に敏感な)地域航行クルーズ船の船主等からのより高度な環境保全対策の要請などを背景に、欧州の舶用エンジンメーカーは、国際基準を大きく上回る排ガス削減技術の研究開発を積極的に実施しています。また、エンジンメーカー以外の舶用メーカーも高度な排ガス削減技術の研究開発を実施してきています。
2002年11月スペイン沖で発生したタンカー「プレステージ号」油濁事故でも海洋環境保護に対する国際世論が高まるなど、環境問題を取り巻く状況は益々厳しくなっていくものと想われます。今後、舶用機器メーカーが国際競争力を維持、向上させるためには、国際動向を踏まえた環境保全技術の研究開発を適切に実施していくことが重要であると考えられます。
本報告書は、以上のような状況を踏まえ、欧州における船舶からの排出ガス削減対策の動向を把握するため、排出ガス規制、排出ガス削減技術に関する研究開発、これらに係る今後の方向性等についての調査結果を取りまとめたものです。
本報告書が関係各位のご参考となれば幸いです。
Japan Ship Centre(JETRO)
((社)日本舶用工業会共同事務所)
舶用機械部ディレクター 田口昭門
リサーチャー ケビン・テスター
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