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3. 最近の船舶解撤と新造船発注
 どの時点で見ても、船型別に解撤状況と新造船発注状況を比較すれば、必ずずれが生じている。この節では、解撤処分と新規契約のパターンの間の差異を比較対照して、主要船種の各船型における船腹需給バランスの推移を確認する。本章における分析の大半は、実際の解撤ではなく解撤向けの売船に関するものであるが、それは物理的な船舶解撤のデータよりも、売船に関する情報の方が時間的遅れと修正が少ないためである。
 
3.1 最近の船型別解撤パターン
タンカー:2001年と2002年の現時点までにおいて、タンカー解撤ではVL/ULCCの比重がきわめて高い。大規模な解撤が再開されたのは2q01以降であるが、2001年末までにVL/ULCC30隻がスクラップ売船された。しかも2002年の現時点までにこの通年数値は凌駕された。2002年12月現在で、FSO1基を含む34隻が既に売船されている。この総数の中で、ULCCの比重が特に大きい。320,000dwt超のタンカーの売船隻数は2000年には4隻に過ぎなかったが、2001年には6隻に増え、2002年には現時点までで既に13隻に達している。2001年末に向けて売船された数隻が解撤ヤードに到着しているので、実際に解撤されたULCCの総量は2002年通年で7.9mdwt前後に達するものと見込まれる。38これに対してVLCCのスクラップ売船は若干減少したが(2001年の23隻から2002年の現時点までで20隻)、この減少は解撤事業者側が既にさらに大型の船を仕入れて、当面の工事量を確保したからに過ぎないと思われる。
 
 VLCCより小型のタンカーについては、2q01以降の解撤増加は大型船より緩慢で、一部の船型では2000年末以降、減少さえ示している。スエズマックスの売船は2000年、2001年とも特に落ち込みが激しかった。2002年1−11月では、この船型のスクラップ売船は、2001年の通年30隻に対して14隻にとどまっている。その一因はスエズマックスの高齢船が既に余り残っていないことにもある。一方アフラマックスは、スクラップ売船が安定的に推移し、今2002年は、2001年と同じく、18隻が既に処分されている。
 
 2002年にスエズマックスの売船が落ち込んだのは他の大半の船型と対照的で、特にハンディサイズ(27,000−37,999dwt)の売船が最も活発だった。これはタンカーの中で平均船齢が最も高い船型である。そのスクラップ売船隻数は2001年通年の24から今年の現時点までで40に跳ね上がっている。同様に2002年にはパナマックス・タンカーも、近年ではこの船型の解撤が極めて限られていたのと比べれば、集中的な処分が見られた。2001年のパナマックスのスクラップ売船がわずか3隻にとどまったのに対して、2002年になって既に13隻の売船が報告されている。ハンディマックス(38,000−49,999dwt)のスクラップ売船も増加したが、絶対数はわずかに過ぎない。この船型は新型船が多く、スクラップ売船する余地があまりないためである。39
 
バルクキャリア:2001年におけるバルクキャリア解撤の目覚ましい回復は、主としてハンディサイズ(20,000−39,999dwt)が大規模に処分されたためである。タンカーと同様、ハンディサイズは高齢船が最も集中している船型である。一部情報によると、同年のこの船型の売船隻数は110に達し、全バルクキャリア船隊の売船隻数の3分の2を占めている。2002年にはバルクキャリアのスクラップ売船は急減したが、それでも報告された売船の圧倒的多数はハンディサイズである。
 
 2001年にスクラップ売船されたその他のバルクキャリアのうち、圧倒的多数はパナマックスで、38隻が記録されている。40これに対して他の船型の解撤は極めて低調で、ハンディマックス・バルカーが9隻売船されたにとどまる。タンカーと同様、この船型では新型船の比重が圧倒的で、解撤に向ける船があまりなかったのである。これより上の船型ではケープサイズ9隻の売船が報告されているが、その大半は80,000−139,999dwtの範囲に属する。これらの船型ではいずれも2002年におけるスクラップ売船は低調で、また月が進むとともに一層停滞した。
 
コンテナ船:他の船種同様、コンテナ船部門でも解撤は2000年の低調から一気に活発化した。解撤は概ね比較的小型のコンテナ船、主として1,000TEU未満の船型に集中したが、1,000−1,999TEUでも解撤は見られた。2001年初以降、これらの船型区分では59隻が解撤された。これに対して2,000TEU超の船型は処分が進まず、合計11隻に過ぎない。
 
液化ガス船:LPG船では2002年に解撤が増加したが、その絶対数は他の船種に比べて少なく、現時点まででわずか12隻が解撤されたに過ぎない。それでもなお、この数値は1997−2001年通算の解撤隻数に等しい。今年解撤されたLPG船の大半は積載量20,000m3未満か60,000m3超である。LPG船隊の船齢構成からすれば、今後の解撤も引き続きこれら両船型に集中するものと思われる。VLGCについては、2000年代末期のピーク時から見て用船料収入が特に大きく落ち込んだことも原因になっている。2002年末に近づくと共に、平均用船料収入は0.45百万ドル/月に近づいている。2001年の水準からすれば40%超の落込みである。
 
 これに対してLNG船部門では、解撤向けの船がなく、1997年以降1隻も解撤されていない。現有船隊の中で船齢が既に20年以上の船舶が高い比率(56隻、隻数ベースで船腹供給量の40%超)を占めているにもかかわらず、こういう状況なのである。ただし、LNG船は他の大抵の商船船種に比べて営業寿命が遥かに長いということを指摘しなければならない。さらに船舶需給は逼迫していて船舶は殆ど完全雇用の状態にある。今後6年間にわたって輸送需要が急増する見通しからすれば、この状況は変りそうもない。41すなわち近年、大量の新造船発注があったにもかかわらず(後述)、特に、一部の観測筋が主張するように、LNG船の場合は寿命を40年と見ても非現実的ではないとすれば、これら旧世代のLNG船が短中期的将来において解撤される公算はきわめて低い。
 

38
この2002年の総数は2001年末のULCC船腹量の40%を超える。
39
既存のハンディマックス・タンカー船腹の66%前後(総数506隻中335隻)は船齢15年以下である。2001年には2隻がスクラップ売船されたに過ぎないが、2002年1−11月でも7隻にとどまっている。
40
パナマックスの売船量は2000年のわずか0.2mdwtから翌年には2.2mdwtに跳ね上がったが、これは「スーパー・ハンディマックス」の新造船が参入し、船齢が高く船型の小さいパナマックスが太刀打ちできなくなったためである。
41
一部情報によれば、世界のLNG生産能力は現在の245Mtから2008年末までには118Mtに増大する見込みである。







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