3. シリア
3−1 概要
3−1−1 一般事情
(1)面積:18.5万km2
(2)人口:1,746万人(99年推定)
(3)首都:ダマスカス
(4)言語:アラビア語
(5)宗教:イスラム教85%、キリスト教13%
3−1−2 政治体制
(1)政体:共和制
(2)元首:バッシャール・アル・アサド大統領
(3)議会:一院制(250議席)
(4)政府:ムハンマド・ムスタファ・ミロ首相
(5)内政:
・70年以来政権にあったハーフェズ・アサド大統領が2000年6月に死去し、大統領の次男に政権が委譲された。
・共和制とはいうものの、実質はバース党(アラブ社会主義復興党)による一党支配であり、98年の人民議会選挙でも、同党を中心とした国民進歩戦線(PNF)が250議席中167議席を占めた。
・新政権の課題は、中東和平及び経済面を中心とした改革の推進。
(6)外交政策:
・中東和平問題など中東情勢の鍵を握る重要な立場にある。
・以前はソ連と緊密な軍事関係にあったが、湾岸戦争の際、多国籍軍に参加して以来、西側よりの姿勢を強めている。
・中東和平については「平和と領土の交換」原則に基づいた包括的和平の達成が必要との基本的立場を堅持。
・シリアはイラクの大量破壊兵器廃棄と国連査察団の活動再開に係わる11月8日の国連決議1441号に賛成したが、これはイラク問題での孤立化を回避するためにとった決定と見られる。シリアにとって現在は米国との関係がイラクとのそれより重要となったためであるが、同国は米国主導のイラク政権転覆めための戦争には引き続き強く反対する模様である。
3−1−3 経済
主要経済指標(E.I.U.2002年見通し)
(1)GDP:203億米ドル(農業:30%、商業:19%1)
(2)実質GDP成長率:1.8%
(3)国民一人当たりGDP:1,154米ドル
(4)物価上昇率:0.9%
(5)失業率:9%(97年IMF推定)
(6)国際収支:
・輸出総額(商品):57億9,100万米ドル
・輸入総額(商品):45億400万米ドル
・経常収支:5,670万米ドル
(7)主要貿易品目(E.I.U、2000年)
・輸出:原油(62%)、果物・野菜、繊維、綿花
・輸入:機械類(23%)、金属・金属製品、食料品、化学製品
(8)主要貿易相手国(E.I.U、2001年)
・輸出:独(25.7%)、伊(22.2%)、トルコ(12.0%)、仏(11.8%)
・輸入:伊(11.5%)、独(9.5%)、仏(8.3%)韓国(7.7%)
(9)外貨準備高:32億7,000万米ドル(金を除く)
(10)対外債務:219億米ドル
(11)債務返済比率:4.8%
(12)通貨:シリア・ポンド(S£)、1米ドル=46.3S£
社会主義の遺産で同国の大部分の産業は国営2であり、効率が低い。91年には、民間活力の導入、外資の誘致・促進を目的とした新投資法が公布され、徐々に経済の自由化を進め、2000年にはその効果が表われ始めた。ただし、GDPで3割近くを占める農業生産の不安定性、金融・為替制度の未整備、財政支出に占める高い軍事費の問題等もあり、今後も産業の民営化を積極的に推進しない限り産業の発展は遅々としたものとなろう。
民営化のほか、失業対策も大きな課題の1つである。非公式の数字では失業率は20%前後といわれており、2002年に失業対策委員会3が設置され、向こう5年で数十万口の雇用の創設を目指している。
日本との経済関係
シリアにとって日本は重要な輸入相手国であるが、日本への輸出は少額であり、貿易収支は大幅な輸入超過となっている。
(1)対日貿易(2000年)
対日輸出:1,710万米ドル
対日輸入:1億1,830万米ドル
(2)主要品目
対日輸出:綿花、せっけん
対日輸入:自動車、一般機械
(3)日本からの直接投資
シリアに進出する日本企業は商社を中心としており、これまでのところ直接投資の実績はない。
3−2 海事事情
シリアの主要港はTartous、Latakia、Baniasの3港である。このうちTartousは同国最大の港で1999年の時点で、輸入総量の50%以上を同港が占めている。一方、Banias港は、石油貿易専門の港であり、2000年の取引量は取扱総量の57%にあたる1,686万5,000トンであった。2000年の同国における海上貨物取扱は以下の通りである。
・取扱量:2,966万4,000トン(年平均3.04%)1998−2000年の推移(6.17%)
−陸揚げ:895万9,000トン
−積載:2,070万5,000トン
ただし、港は国営であり、資金不足の問題を抱え採算牲も低い。さらに陸揚げは時間を要し、税関手続は複雑で汚職が横行している。
3−3 日本政府によるODA実績(2000年度末まで)
(1)日本のODA実績
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贈与 |
政府貸付 |
|
無償資金協力 |
技術協力 |
計 |
支出総額 |
支出純額 |
合計 |
1996年 |
12.64 |
19.38 |
32.03 |
24.30 |
2.84 |
34.87 |
1997年 |
26.57 |
17.12 |
43.70 |
41.46 |
22.63 |
66.33 |
1998年 |
15.84 |
16.20 |
32.04 |
41.33 |
17.98 |
50.02 |
1999年 |
18.54 |
12.87 |
31.41 |
161.93 |
104.76 |
136.17 |
2000年 |
17.79 |
12.88 |
30.67 |
82.77 |
33.69 |
64.36 |
累計 |
130.97 |
144.49 |
275.47 |
1228.09 |
964.88 |
1240.37 |
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(2)2000年度までの累計
・有償資金協力:1,563億500万円(交換公文ベース)
・無償資金協力:190億600万円(交換公文ベース)
・技術協力:168億1,400万円(JICA実績ベース)
−研修員受け入れ:763人
−専門家派遣:229人
−調査団派遣:998人
−協力隊派遣:341人
−機材供与:28億1,553万円
−開発調査:21件
電力分野を中心に有償協力を実施。91年には総額648億6,800万円の有償協力が供与された(ジャンダール発電所)。直近のものとしては1995年11月に供与したアルザラ火力発電所案件(約460億円)があげられる。シリアは円借款に強い関心を示していたが、90年代後半に延滞債務問題が生じたことから、新規円借款の供与が難しくなっていた。その後2000年に政権が交替し、ミロ首相、バシャール・アサド大統領が就任後は延滞債務を解消し、期日通りの返済を行うようになった。新大統領はシリア経済の建て直しを急務とし、新規円借款の供与を強く希望しており、現在、港湾リハビリ案件(ラタキア港、タルトゥース港)を検討中である。
92年度より無償資金協力も開始され、99年度にはダマスカス市内排水管改修、バニアス火力発電所改修等につき供与を実施した。毎年20億円前後の無償資金協力を行っている。
2 |
原油、セメント、発電は完全に国営、綿花、穀物の取引にも政府が大きく介入している |
3 |
シリア政府、EIB、独、クウェート基金(KFAED)が出資あるいは出資予定 |
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