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第108期議会におけるエネルギー政策の優先事項
 第108期議会はエネルギーに影響を与える政策に関して、第107期議会とは大きく変るであろう。新議会におけるイニシアティブはエネルギー生産を制限する環境法を修正し、第107期議会で可決に失敗した包括エネルギー法案を取り上げることに焦点が当てられるであろう。
 
<産業寄りの環境規則>
 エネルギー産業に影響を与える環境法案に対する上院のアプローチが大幅に変ることは間違いない。民主党優勢であった第107期議会では、上院環境公共事業委員会は環境保護を強く支持していた。同委員会の新委員長となるインホフェ上院議員は、環境を犠牲にしてもエネルギー開発を優先するとの定評があり、上院で共和党が過半数議席を獲得したことで、エネルギー政策の立法化の基盤が固まったといえよう。
 上院の与野党勢力が逆転したことについて、環境ロビー団体の天然資源カウンシルの代表は、「これから、過去30年間に達成したすべてを守るための大きな闘いになるだろう」と述べた。席を譲る上院環境公共事業委員会のジェームス・ジェフォーズ委員長(無所属だが民主党と同一会派)は、「今年は電力会社にすばらしいクリスマス・プレゼントが贈られた。クリーン・エア法の最大の弱体化だ」と述べた。同上院議員は、11月22日にブッシュ政権が発表した、旧式の工場、精製所、発電所の大気汚染防止規則適用を緩和する計画は、「クリーン・エア法を骨抜きにする」と付け加えた。しかし、もうひとつの環境ロビー団体である全国環境トラストの代表は、1995年に共和党が上下両院で過半数議席を獲得した後に、急激な政策転換を攻撃的に押し進めることによって有権者の反発を買うという誤りを犯したことに言及し、「共和党とホワイトハウスにとっての真の問題は、また強気に出過ぎるかどうかである」と述べた。
 
<包括的エネルギー法案>
 新議会はまず、第107期議会で廃案となった包括的エネルギー法案を再度取り上げるであろう。ホワイトハウスは、このエネルギー法案の可決が新議会で最も優先される案件のひとつだと述べている。共和党が上院で過半数議席を占める今、上下両院のあいだで妥協法案が成立する可能性は高い。また、妥協法案がANWRの探鉱・開発解禁を盛込んだものとなる公算も強い。上院エネルギー・天然資源委員会の新委員長は、ANWR探鉱を包括エネルギー法案に盛り込むことについて質問を受け、「当然、ANWRは検討に含まれる」と述べた。上級スタッフはさらに、「新エネルギー法案には必ずANWR解禁が盛込まれるだろう」と述べた。
 しかしながら、民主党はANWRにおける石油掘削計画はすべて阻止し続けると警告している。マサチューセッツ州のジョン・ケリー上院議員、コネチカット州のジョー・リーバーマン上院議員は、ANWR解禁を盛込んだ法案に対して牛歩戦術を取ると宣言している。両上院議員共に2004年の大統領選挙に立候補を考えている。上院民主党リーダーであるトム・ダッシェル議員は、「国民がANWR掘削を支持するとは思わない。国民は民主党の牛歩戦術を支持するだろう」と述べた。
 ANWRの解禁は、上院の勢力逆転により恩恵をこうむる国内エネルギー生産拡大策のひとつにすぎない。米国独立石油協会の会長は「共和党が過半数を占める上院は、国内エネルギー生産により焦点を当てるであろう。そして、これは国内石油・ガス生産者にとって朗報である」と述べている。上院エネルギー天然資源委員会の新委員長は、国有地の採鉱、掘削を止めるために環境保護団体が裁判所に訴えることを禁止したいとの意志を表明している。新委員長はまた原子力エネルギー施設に対する出費を拡大するつもりだと述べた。回復可能エネルギーや省エネ対策については、ほとんど言及はない。
 包括的エネルギー法案の必要に加え、最近エネルギー省は米国の輸入エネルギー依存度が高まることを強調した長期予測を発表している。11月末に発表されたこの予測は、石油輸入が今後23年間に大幅に拡大し、2025年には米国消費量の68%(現在は55%)に達するとしている。石油輸入に精製品が占める割合は、現在の2倍以上の34%となる。天然ガス輸入は年間3.6Tcfから7.8Tcfへと、今後23年間で倍増し、2025年の予想ガス需要の22%を占める。







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