5 新エネルギー政策が海上輸送に与える影響
本セクションでは、新エネルギー政策が米国の外航、内航海上輸送に与える影響について論じる。まず、米国の長期的エネルギー供給のニーズを予測し、エネルギーの調達先にどのような変化があるかを説明し、新エネルギー政策が海運にどのような影響を与えるかを評価する。
5-1 米国エネルギー需給予測
米国エネルギー省は、総エネルギー需要を満たすために、米国のエネルギー生産は2020年には90,700兆BTU(約22億6,800万石油換算トン)、エネルギー輸入は44,400兆BTU(11億1,000万石油換算トン)に増加すると予測している。これは年間1.4%増となる。米国のエネルギー輸入依存度はますます高くなるであろう。エネルギーの国内生産は年間1.1%、エネルギー輸入は2.2%で成長すると見られている。輸入エネルギーは、現在エネルギー総供給量の29%を占めているが、2020年には33%に拡大するであろう。
米国エネルギー供給予測
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出典: Annual Energy Outlook 2002 |
原油需要は2020年には日量1,683万バレル(約227万石油換算トン)に増加すると見られている。今後約20年間で日量200万バレル(約27万石油換算トン)の増加となることを意味する。この時期に米国本土(アラスカを除く)の陸上生産量は、年間0.9%減少すると考えられている。メキシコ湾とアラスカの生産量は、年間0.6%の増加が予測されている。全体で国内生産量は20年間で日量20万バレル(約27,000石油換算トン)の減少が予測されている。需給の格差を埋めるために原油の輸入が増えるであろう。
米国原油生産と輸入予測
(2000-2020)
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2000 |
2005 |
2010 |
2015 |
2020 |
年間成長率(%) |
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---- 単位:日量100万ドル ---- |
本土48州陸上 |
3.25 |
2.9 |
2.64 |
2.64 |
2.7 |
-0.9 |
メキシコ湾 |
1.61 |
1.68 |
1.74 |
2.01 |
1.83 |
0.6 |
アラスカ2/ |
0.97 |
0.8 |
0.7 |
0.9 |
1.1 |
0.6 |
輸入 |
9.02 |
10.37 |
11.18 |
11.01 |
11.2 |
1.1 |
原油総量 |
14.85 |
15.75 |
16.26 |
16.56 |
16.83 |
0.6 |
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出典: EIA, Annual Energy Outlook 2002
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エネルギー供給における大きな変化のひとつとして、米国の石油需要を満たすために精製品の輸入が増加すると考えられる。これは米国の精製施設の新設が制限されていることが原因である。先に説明したように、長年精製所の新設は行われておらず、精製能力の増加はひとえに既存の精製所のボトルネックの解消によるものである。しかし、ボトルネックを解消しつづけ、既存の精製所の処理能力を拡大する方法を見い出すのはますます困難になっている。そのため、エネルギー省は石油精製品と天然ガス液の輸入は今後20年の間、年間3.8%増加すると考えている。
米国石油精製品輸入予測
(2002-2020)
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2000 |
2005 |
2010 |
2015 |
2020 |
年間増加率(%) |
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---- 日量100万バレル ---- |
石油製品 |
1.40 |
2.12 |
3.09 |
4.29 |
5.44 |
+7.0 |
天然ガス液 |
1.91 |
2.13 |
2.38 |
2.64 |
2.84 |
+2.0 |
その他 |
1.30 |
1.22 |
1.42 |
1.52 |
1.49 |
+0.7 |
合計 |
4.61 |
5.47 |
6.89 |
8.45 |
9.77 |
+3.8 |
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Source: EIA, Annual Energy Outlook 2002
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天然ガスの需要は、現在の日量22兆cf(約6,230億m3)から、60%弱増加し、2020年には35兆cf(約9,911億m3)になると予測されている。この需要を満たすために本土48州の陸上ガス田からの天然ガス生産は年間2.3%増加するであろう。メキシコ湾とアラスカのガス生産はそれぞれ1.2%、1.7%増加、カナダからのパイプライン経由の輸入は年間2.3%の割合で増加するであろう。LNG輸入は年間8.6%の割合で増加すると考えられるが、天然ガス供給量全体に占める割合は依然として少ないだろう。
天然ガス生産とガス、LNG輸入予測
(2000-2020)
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2000 |
2005 |
2010 |
2015 |
2020 |
年間成長率(%) |
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---- 単位:1兆cf/日 ---- |
本土48州 |
13.31 |
14.36 |
16.45 |
19.40 |
21.13 |
+2.3 |
オフショア |
5.34 |
5.87 |
6.50 |
6.35 |
6.75 |
+1.2 |
アラスカ |
0.43 |
0.50 |
0.53 |
0.57 |
0.60 |
+1.7 |
輸入 |
3.52 |
4.50 |
4.89 |
5.26 |
5.51 |
+2.3 |
LNG輸入 |
0.16 |
0.64 |
0.83 |
0.83 |
0.83 |
+8.6 |
合計 |
22.76 |
25.87 |
29.20 |
32.41 |
34.82 |
+2.2 |
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出典: EIA, Annual Energy Outlook 2002
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米国の石炭生産は今後20年の間に約11%成長すると考えられる。生産増はすべてミシシッピ以西でのものである。硫黄含有率の低い石炭が採掘できるのはこの地域であり、東部産石炭よりも亜硫酸ガスの発生量が85%低い。エネルギー省は、鉱業における生産性の向上により、産炭地石炭価格は2020年まで年間1.3%低下し、発電用として石炭の経済性が高まると考えている。石炭輸入の石炭供給量全体に占める割合は少ないままであろう。
米国石炭生産と輸入予測
(2000-2020)
(拡大画面:12KB) |
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2000 |
2005 |
2010 |
2015 |
2020 |
年間成長率(%) |
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---- 単位:100万米トン/年 ---- |
ミシシッピ以東 |
518 |
526 |
533 |
520 |
510 |
-0.10 |
ミシシッピ以西 |
566 |
685 |
751 |
805 |
887 |
+2.30 |
輸入 |
13 |
18 |
19 |
19 |
20 |
+2.20 |
合計 |
1097 |
1229 |
1303 |
1344 |
1417 |
+1.30 |
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出典: EIA, Annual Energy Outlook 2002 注2
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注: |
1/ |
2000年の合計には、その他の原油供給源からの日量23万バレルが含まれている。これは主に産出元不明の在庫の放出である。 |
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2/ |
アラスカの予測にはANWR解禁の可能性は盛込まれていない。2010年以降の増加は、1999年にリースされたNPRの生産開始によるものである。 |
注2: |
生産量合計は年間5300〜5800トンの石炭輸出量を含む |
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