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3 2001年の中国の修繕
3.1 2001年の中国の修繕(中国船舶工業行業協会)
−船舶修繕の業績は大幅に上昇−
 2001年の中国船舶修繕業をみると、1〜9月は中国経済が良好で、対外貿易額が増加し、中国の港に入る外国船も持続的に増え、延べ15万隻に達する等、中国船舶修繕業に発展のチャンスをもたらしたことがわかる。第4四半期の世界経済は、アメリカ同時テロ事件の影響を受けたが、中国の船舶修繕業の状況からみれば、大型の船舶修繕と船舶改造工事は、引き続き好調であった。
 2001年、船舶修繕市場における激烈な競争の中で、中国船舶重工集団公司(CSIC)の船舶修繕業の合計生産高は、約13.13億元(約200億円)に達した。輸出では、中国船舶集団公司(CSSC)が船舶修繕で1.19億米ドルを稼ぎ、集団公司の中で、第一位であった。
 中国は、様々な大きさ・船種の船舶を修繕するドックを有しており、価格競争力もあることから、中国経済の持続的な高成長に伴い、中国の船舶修繕業も暫く好調が続くと見られている。なお、軍用船舶の修繕、省市地方の船舶修繕、合資企業の船舶修繕、内陸河川の船舶修繕、漁船の修繕などは含まれていない。
 
1 各集団公司の概況
 不完全な統計ではあるが、中国には1万トン以上の船舶を修繕できる企業が約700社あり、全国16の集団、25の省、市、自治区に分布している。船舶修繕企業は、主に中国船舶重工集団公司、中国船舶工業集団、中遠船務行程集団公司、中海工業有限公司、長航集団工業公司、海軍系、省市の地方造船所、合資企業と漁業系などに属する。
 
1.1 中国船舶重工集団公司(CSIC)
 CSICは、2001年の船舶修繕額が、13.1億元(約200億円)に達し、集団公司中第一位。集団公司傘下4社の船舶修繕企業は、修繕額でいずれも全国ランキングで、トップテンに入っている。即ち、山海関造船所、大連新船重工有限責任公司、渤海船舶重工有限責任公司、北海船舶重工有限責任公司の2001年の船舶修繕額はそれぞれ2.93億元(約45億円)、2.75億元(約40億円)、2.65億元(約39億円)、2.26億元(約33億円)と、2億元(約30億円)を超え、全国で第5、6、8、9位。4社合計の生産額は、10.58億元(約150億円)で、CSICの船舶修繕額の80.58%を占めている。
 
1.2 中遠船務工程集団公司
 傘下の南通COSCO、大連COSCO、広州COSCOなどの2001年の船舶修繕額は、合計で11.2億元(約165億円)で、各集団公司中第2位。
 中遠南通船務工程公司(COSCO南通)の2001年の船舶修繕額は、5.39億元(約80億円)で、前年より20.1%伸びて澄西造船所と共に初めて5億元(約75億円)を突破した。うち、外国船の修繕で前年比17.9%増の5,700万米ドルを稼いだ。126隻の船舶を修繕し、売上高は前年より11.7%、利益は10%伸びた。
 2001年の大連中遠船務工程公司(COSCO大連)の船舶修繕額は、4.96億元(約75億円)と5億元近くに達し、対前年比87.2%増と史上最高の伸率となった。合計148隻の船舶を修繕し、うち、外国船が121隻、中国船が27隻。船舶修繕で3,400万米ドルを稼ぎ、澄西、南通、文沖造船所に次ぎ、第四位。
 過去、価格の安い韓国船を受注していたこともあったが、2001年はギリシア、ドイツ、ノルウェー、インドの船舶に重点におき、特にギリシア船籍の船舶が最も多かった。
 
1.3 中国船舶工業集団公司(CSSC)
 中国船舶工業集団の2001年の船舶修繕による外貨獲得額は、1.19億米ドルで、集団公司中第一位。第二位は、中遠船務工程集団公司であり、1.07億米ドル。
 傘下の企業である澄西造船所の2001年の船舶修繕額は5.64億元(約85億円)で、5億元(約75億円)を突破、中国船舶工業集団(CSSC)の中で、7年連続第1位、中国全体でも第2位。うち、ハイテク・高付加価値の特殊船と大型の改造船による改修繕額が45%を占めている。外国船の修繕額は、6,000万米ドルで、船舶の総修繕額の9割。修繕船の隻数は、合計で178隻、前年より18隻増加した。ピーク時は同時に25隻を修繕する等年間計画の135%の修繕を行い、前年より46%伸びた。
 文沖造船所有限公司の船舶修繕額は、2.67億元(約40億円)で、修繕企業中第7位。
 
1.4 中海工業有限公司
 中海工業有限公司の2001年の船舶修繕は、7.1億元(約105億円)で集団公司中第四位。当該会社は、法人代表が一人だけのため、船舶修繕企業ランキングでは第一位になっている。2001年は4の集団公司合計で42.55億元(約630億円)の船舶修繕額になっている。
 
2 中国の船舶修繕設備
 中国における修繕ドックは、大型化している。山海関造船所は、中国最大級の船舶修繕ドックを有し、30万DWT級のタンカーを修繕できる。
 10万DWT以上の修繕ドックは8基。文沖造船所に15万DWT級ドライドック1基、大連・南通中遠船務公司に浮ドック各1基、澄西造船所、北海船舶重工公司、華潤大東船務公司に10万DWT級の浮ドックが、各1基ある。上海造船所には、10万DWT級のドライドック1基がある。新東聯船務工程公司では、10万DWT級の浮ドックが間もなく完成の予定。
 パナマックス型船舶を修繕できるドックは、11基。江南造船集団に7万DWT級のドライドック2基、大連中遠船務公司と江都卑海造船所に、8万DWT級のドライドック各1基。山海関造船所に7万DWT級のドライドック1基、中遠南通船務公司、上海粤海長興船務公司と広州遠洋船舶修理有限公司に8万DWT級の浮ドック各1基がある。この他、澄西造船所に7万DWT級の浮ドック1基、中海工業公司立豊造船所に6.5万DWT級の浮ドック1基、舟山竜山造船所に6万DWT級のドライドック1基。
 
3 中国の修繕技術
 中国の鋼板取替え作業の効率は、世界のトップレベルに達している。船舶修繕における一日あたりの鋼板取替えの作業量について、業界関係者は、世界の平均は17〜22トン/日と見ている。現在、中国の山海関造船所、北海船舶重工公司、澄西造船所、文沖造船所、大連中遠船務公司、中遠南通船務公司、中海士業公司立豊造船所などの船舶修繕企業は、最高30〜40トン/日を達成できる。
 2001年は多くの船舶修繕企業が、船舶の改造工事を大量に受注した。澄西造船所は、船舶改造等による生産額が当該造船所の45%を占めている他、大連新船重工有限責任公司は、海上ボーリング用プラットフォームの修理改造を受注、大連中遠船務公司は、ドイツの船舶改造を受注した。
 
4 船舶修繕の価格
 2001年の中国大手、中堅造船所の船舶修繕鋼板取り替え価格はやや回復し、1,100〜1,200米ドル/トンとなった。大連中遠船務公司は最高で1,445米ドル/トンまで回復した。
 船舶修繕鋼板取替価格は、90年代初期は中国が1,800〜2,200米ドル/トン、シンガポールが3,900米ドル/トンであったが、1997年のアジア金融危機後、価格は時800〜1,000米ドル/トンまで急落していた。
 
5 その他
 中国船舶工業行業協会は、船舶修繕価格文書(いわゆる「グリーン・ぺ一パー」)を既に2001年8月に発行・実施している。グリーン・ペーパーは、中国国内における船舶修繕企業に共通のものであり、中国船・外国船に平等に適用され、会員企業が1,000総トン以上の船舶修繕を受注する場合、必ず守らなければならないものであるし、1,000総トン以下の船舶修繕を受注する場合も参考にされる。
 中国は2001年12月10日正式にWTOに加盟した。中国各船舶修繕企業のオファーがコストより低いことがないようグリーン・ペーパーに従いオファーしなければならない。さもなければ、ダンピングとみなされ、提訴される可能性が生じる。
・2001年中国船舶修繕の生産経営状況
 2001年中国船舶修繕業界をみると、1〜9月、中国国民経済の発展が良好で、対外貿易の輸出入高が増加し、中国港に到着する外国船が持続的に増え、延べ15万隻に達しており、中国船舶修繕業の発展にチャンスをもたらしたことがわかる。世界経済がアメリカ同時テロ事件に影響され、中国船舶修繕業もちょっと暗くなったにも関わらず、第4四半期船舶修繕の状況からみれば、大型船舶修繕と船舶改装が好調である。
 2001年、船舶修繕市場における激烈な競争に直面し、中船重工集団公司は、船舶修繕工業の合計生産高が約13.13億人民元に達し、各集団公司の船舶修繕の中に一位を誇った。大手、中堅船舶修繕企業は、外国船の修繕を強化し、外貨を稼いだ。中船集団公司は、船舶修繕で1.19億米ドルを稼ぎ、各集団公司の中で第一位である。
 中国には、各種のトン数とレベルの船舶を修繕するドックを有しており、価格も強い競争力をもっているため、中国国民経済の持続的な高成長に伴い、中国の船舶修繕業は暫く好調が続くと見られている。







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