日本財団 図書館


(4)ベトナムの港湾
【1】概要
 ベトナムの港湾システムは以下表11及び図8のごとく3つの主要港グループに分けて考えることができる。大・中規模の港湾は80ヵ所にあり、埠頭の全長は22kmに及ぶ。
 
表11 ベトナムの主要港湾グループ
グループ 対象範囲 年間貨物取扱量(計画)
北部港湾グループ クアンニンからニンビンまで24港 2003年:2,100〜2,400万トン
2010年:6,000〜7,000万トン
中部港湾グループ タンホアからビントウゥアンまで14港 2003年:1,700〜1,800万トン
2010年:3,400〜3,700万トン
南部港湾グループ 44港 2003年:2,600〜3,000万トン
2010年:8,500万トン
 
図8 ベトナムの主要港湾グループ
(拡大画面:246KB)
 
【2】主要港の状況
(1)南部港湾グループ
(1)サイゴン港
 ベトナム最大の都市であるホーチミン市に位置するサイゴン港は、1863年に開港された国際貿易港で、貨物取扱量は同国全体の50%強を占める。人口約600万人を有する同市は同国最大の消費地でもあり、近年のドイモイ政策の影響で輸入貨物の増加も著しく、サイゴン港が占める同国経済への役割は益々大きくなっている。
 サイゴン港域はサイゴン川右岸沿いの河川港で、ブンタオ沖ロンタオ(Longtao)川河口から85km上流に位置している。港域付近の川幅は300〜500mで、水深は11mまで浚渫されている。外国船籍の船舶は河口のブンタオ沖から強制水先となっており、航行時間に制限がある。入港可能な最大船舶は30,000DWT、全長230mである。
 1998年に同港では同年における貨物取扱量全体の14%に相当する770万トンの貨物を取り扱い、そのうち85%は輸出入貨物であった。
 サイゴン港域はサイゴン港区、ベンゲ(Ben Nghe)港区、ニューポート港区の3つの港区に分類される。サイゴン港区はホーチミン市の中心街に隣接したサイゴン川右岸に位置し、ニャロン(Nha Rong)、カンホイ(Khanh Hoi)及びタンチュアン(Tan Thuan)の3つのターミナルからなり、管理運営はサイゴン港湾局が行っている。次いで、ベンゲ(Ben Nghe)港区はタンチュアン・ターミナルの約300m下流に位置し、ホーチミン市運輸局により管理運営されている。さらに、ニューポート港区は1993年に設立されたサイゴン・ニューポート・カンパニーにより運営され、海軍基地に併設されている。ニューポート港区の取扱貨物の大部分がコンテナ貨物であり、コンテナ取扱量はサイゴン港域で最大である。入港船は12,000DWT以下に制限されている。
 
(2)北部港湾グループ
(1)ハイフォン港
 ハイフォン港はベトナム北部最大の国際貿易港であり、商業港として100年以上の歴史がある。同港の貿易取扱量はサイゴン港に次ぎ第2位であり、輸入貨物の消費地は首都ハノイ及びベトナム北部一帯である。
 ハイフォン市を流れるカム(CAM)川右岸沿いの河川港である同港は、カム川と運河で結ばれているバックダン(Bach Dang)川河口から約20km上流に位置している。ハイフォン及びハノイは紅河(Song Hong)のデルタ地帯にあり、カム川は紅河水系の一部をなしており、同港は紅河デルタの水系を利用した水運の中心地でもある。船舶の入港は強制水先であるが、航行時間の制限はなく、夜間入港が可能である。入港が可能な最大船舶は、6,000DWTである。
 1998年に同港では同年における貨物取扱量全体の10%に相当する550万トンの貨物を取り扱い、そのうち65%は輸出入貨物であった。
 ハイフォン港は政府直轄で、運営管理はハイフォン港湾局が行っており、ホンゲ・ディユ(Hoang Dieu)港、コンテナ(Container)港、チュアベ(Chua Ve)港、ドアンサ(Doan Xa)港、バカチ(Vat Cach)港の5港区からなる。このうち、バカチ(Vat Cach)港は内航専用バースである。
 
(2)ブンアン(Vung Ang)港
 ベトナム初の深海港として2001年2月に開港し、年間46万トンの貨物取り扱いが可能で入港が可能な最大船舶は15,000DWTである。
 
(3)中部港湾グループ
(1)ダナン港
 ダナン(Danang)港は、19世紀末から20世紀初頭にかけて商業港としての基礎が築かれたベトナム中部最大の国際貿易港であり、貨物取扱量は、サイゴン港、ハイフォン港に次ぎ国内第3位である。
 同港は政府直轄港で、運営管理はダナン港湾局が行っており、ダナン湾に面したティエンサ(Tien Sa)港区とハン川河口左岸のソンハン(Song Han)港区からなる。
 人口約60万人のダナン市は、クワンナムダナン省の省都で、ベトナム戦争当時、米軍最大の基地が置かれていた。同市及びその周辺地域には、輸出加工区を含む工業団地が数ヶ所建設されており、外資系企業が進出している。
 1998年に同港では112万トンの貨物を取り扱い、そのうち84%は輸出入貨物であった。
 
(2)バニョイ(Ba Ngoi)港
 中部カンホア(Khanh Hoa)省に所在するバニョイ港は2001年に205隻の貨物船を受け入れ、50万トンの貨物を取り扱っている。1995年から2000年まで5年間で270万USドルが投じられ、港湾の改修作業が行われたが、今後さらに170万USドルが投じられ、30,000DWTの船舶が接岸出来るよう拡張される予定である。
 
(3)デュンクアット(Dung Quat)港
 中部クアンニャイ(Quang Ngai)省に所在するデュンクアット港はベトナム初の石油化学専用港として200,000DWTのケミカルタンカーが接岸できるよう開発中である。
 
【3】貨物取扱量
 2001年度(1月から12月)の実績では全貨物輸送量の約5分の1に相当する1,350万トンの貨物が海上で輸送されており、2000年対比3%増であった。2002年度の計画では2001年度対比海上貨物取扱量を8%増加することとなっている。
 
【4】港湾開発計画
 ベトナム港湾協会(Vietnam Port Association:VPA)が策定した2010年までの10ヵ年計画では国内の港湾を114ヶ所まで増やすことが計画されている。計画の中で特に焦点があてられているプロジェクトを以下表12に示す。
 
表12 ベトナムの港湾拡張プロジェクト
グループ 港湾拡張プロジェクト
北部港湾グループ ハイフォン港の入港可能船舶を10,000DWTまで拡張。カイラン(Cai Lan)港の入港可能船舶を50,000DWTまで拡張。
中部港湾グループ ダナン港の入港可能船舶を50,000DWTまで拡張。デュンクアット(Dung Quat)港の入港可能船舶を200,000DWTまで拡張。
南部港湾グループ サイゴン港の入港可能船舶を30,000DWTまで拡張。チバイ(Thi Vai)港の入港可能船舶を30,000DWTまで拡張。メコンデルタに位置するカントー(Can Tho)港の入港可能船舶を10,000DWTまで拡張。
 
 ベトナム港湾協会(Vietnam Port Asscciation:VPA)は現在33ヶ所の港湾の管理運営を行っており、同協会の年間貨物取扱量は180万TEUのコンテナを含み、6,000万トンに達する。他の港湾は地方政府、国営企業などにより管理運営されている。
 一方、2002年度に港湾インフラ開発のために承認された予算では、8つの港湾のアップグレードに3,400万USドルが投じられる。承認されたプロジェクトには、Cua Lo港で10,000DWTの造船能力を持つドックの建設、Quy Nhon港で30,000DWT船舶が接岸できる桟橋建設、Thanh Hoa、Ca Mau、Phu My、Nha Trang各港での港湾管理施設の建設、Nghi Son、Chan May、Sa Ky各港での新航路のための標識設置などが含まれるほか、現在建設中であるクアンニ省カイライ(Cai Lai)新港の完成を早めることが計画に盛り込まれている。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION