【2】造船所の動き
(1)センブコープ・マリーン(SembCorp Marine)*)
センブコープ・マリーンの2000年の総売上げは、99年に対して17.2%減の7億6,300万Sドルとなった。2000年の税引き前利益は史上最高益となった99年の1億1,110万Sドルから13.2%減の9,646万Sドルとなった。
競争激化による船舶修理事業の苦戦や子会社ジュロン・テクノロジーズ・インダストリアル・コープ(JTIC)の売却が響いた。
2000年の売上げ構成は、船舶修繕が50%(99年;47%)、改造・オフショア関連が32%(99年;35%)から、新造船が11%(99年;2%)、その他7%(99年;16%)であった。
2000年のグループ全体の修繕および改造船舶数は、380隻(99年;364隻)、1,623万総トン(99年;1,609万総トン)であった。このうち、373隻(99年;358隻)が修繕、残りの7隻(99年;6隻)が改造およびオフショア関連であった。船種別に見ると、タンカーが50%(99年;51%)、旅客船が5%(99年;15%)、バルクキャリアが10%(99年;9%)、コンテナ船が8%(99年;7%)、LNG/LPG船が10%(99年;4%)、一般貨物船、浚渫船等その他が17%(99年;14%)であった。
2000年の新造船竣工及び売却隻数は0隻であったが、1,078TEU積のコンテナ船6隻を建造している。このうち2隻は2001年上半期に、残り4隻を2002年第1四半期に引き渡す予定である。
総株主数3,400の97.65%に当たる3,320、総株式1,396,588,230の95.46%に当たる1,333,165,230をシンガポールの企業等が保有している。
*: |
2000年1月にセンブコープ・マリーン・リミテッドに名称変更 |
表3 センプコープ・マリーンの売上等の推移
(単位:100万Sドル)
|
91年 |
92年 |
93年 |
94年 |
95年 |
96年 |
97年 |
98年 |
99年 |
00年 |
売上げ |
443 |
380 |
334 |
334 |
325 |
371 |
662 |
934 |
921 |
763 |
税引き前利益 |
91 |
94 |
88 |
72 |
52 |
47 |
68 |
102 |
111 |
96 |
|
注) |
97年以前の数字はジュロン造船所のもの。99年の数字から、合併に伴う1997年8月以降のセンバワン造船所等の業績が含まれている。 |
表4 センブコープ・マリーンの分野別売上構成
(単位:1,000Sドル)
分野 |
センブコープ・マリーン |
2000年 |
1999年 |
船舶修繕、改造、建造 |
704,737 |
785,159 |
船舶貸し渡し |
1,529 |
12,760 |
電気工事、設備貸し出し等 |
32,833 |
108,267 |
販売 |
23,909 |
14,850 |
合計 |
763,008 |
921,036 |
|
注) |
97年以前の数字はジュロン造船所のもの。99年の数字から、合併に伴う1997年8月以降のセンバワン造船所等の業績が含まれている。 |
表5 センブコープ・マリーンの主要株主(第5位まで)* |
株主の名称 |
保有株数 |
シェア(%) |
Sembawang Corporation Ltd |
888,803,206 |
63.64 |
DBS Nominees Pte Ltd |
147,057,063 |
10.53 |
Raffles Nominees Pte Ltd |
72,354,604 |
5.18 |
Ishikawajima-Harima Heavy Industries Co. Ltd |
60,000,000 |
4.30 |
HSBC(Singapore) Nominees Pte Ltd |
46,484,000 |
3.33 |
全体 |
1,396,588,230 |
100.00 |
|
(2)ケッペル・グループ
ケッペル・グループは、シンガポールに本拠を置き、世界22カ国に事業を展開している。総従業員数は、約16,400人で、主な事業は造船・オフショア関連、エネルギー・インフラ関連、不動産、銀行・金融、運輸・通信など。
2000年のグループ全体の総売上げは、前年比55%増の63億Sドルで、営業損益は前年比19%増の7億1,600万Sドルの黒字であった。税引き前利益は前年比17%増の7億6,700万Sドルの黒字であった。
ケッペルグループ内の主な造船所としては、シンガポール国内にHitachi Zosen Singapore(修繕・改造・新造)*)、Kepple Shipyard(Keppel Hitachi Zosenの100%子会社)(修繕・改造)、Keppel Singmarine Dockyard(修繕・新造)及びKepple FELS Energy & Infrastructure(オフショア・リグ)、フィリピンにKeppel Philippines Marine、Subic Shipyard Engeneering、アラブ首長国連邦にArab Heavy Industries, Ajaman、Arab Eagle Marine、アゼルバイジャンにCaspian Shipyard(オフショア・リグ建造)、ブルガリアにKeppel FELS Baltechh Ltd.(オフショア・リグ建造)、米国にAMFELS Inc, Texas、ブラジルにFELS Setal(オフショア・リグ建造)がある。
*) |
Keppel Hitachi Zosenは、99年1月2日に日立造船シンガポールとKeppel Shipyardと合併したもの。 |
表6 ケッペル・グループの売上高・税引き前利益の推移
年 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
売上高 |
2,886 |
3,448 |
3,528 |
4,093 |
6,326 |
税引き前利益 |
506 |
414 |
-199 |
658 |
767 |
|
図4 ケッペル・グループの分野別売上げシェア
1)シンガポール国内の主な造船所の実績
(1)ケッペル日立造船(船舶修繕・改造および船舶製造)
2000年のケッペル日立造船の売上高は、修船事業の市況低迷や新規の船舶建造・改造が減ったことが主因で、対前年21.5%減の4億2,920万Sドル、税引き後利益は対前年51%減の1,540万Sドルであった。ただ、基幹の造船事業の売上高が同25%減となる一方、船舶のえい航事業の売上げは同85%増加した。
昨年はまた、ケッペル・マリン・インダストリーズの修造船事業買収に伴い借入金が増加したことで、利子支出が550万Sドルと、99年の30万Sドルから大幅に増加した。
Hitachi Zosen Singaporeでの修繕船隻数は、99年の117隻から2000年は135隻に増加、Kepple Shipyardでの修繕隻数は、99年の166隻から2000年は158隻に減少、Keppel Singmarine Dockyardでの修繕隻数は、99年の167隻から2000年は221隻に増加した。
新造船の分野では、Hitachi Zosen Singaporeでは4隻のケーブル敷設船の追加契約を締結し、Kepple Shipyardではセミサブリグの建造を開始した。
このような中で、Hitachi Zosen Singaporeでは日系船主のLNG船の修繕を実施するなど、修繕対象船舶が高付加価値船へ移行しつつあるように見える。また、同社は、今後の見通しとして修船市場の回復が予想されるものの、激しい市場競争が続くとしている。また、えい航事業は引き続き好調との予想の下、同事業の拡大を考えている。
同社は現在約6億1,400万Sドルの受注を確保しており、2001年内に3億Sドル分が完成する見込み。
(2)ケッペルFELS(ケッペル・グループのオフショア構造物の専業メーカー)
大手コングロマリット、ケッペル・コープの海底油田採掘装置(リグ)建造部門、ケッペル・フェルズ・エナジー&インフラストラクチャー(ケップフェルズ)の2000年の売上げは、98年の8億4,085万Sドルから大幅に増加し、34億1,468万Sドルとなった。税引き前利益は、前年の7,003万Sドルから8,998万Sドルに増加した。
オフショア部門の好調が増益につながった。2000年2月に買収した石油会社シンガポール・ペトロリアム・カンパニー(SPC)の寄与により、売上高は同306%増の34億Sドルを記録した。
SPCの売上げは石油価格の値上がりから同47.5%増の29億Sドルを達成し、売上高全体の80%を占めた。
SPCを除いた同期の売上高は、オフショアおよびエンジニアリング部門の不調から前期比19.7%減の6億7,530Sドルに落ち込んだ。ただ、オフショア部門では、売上高が同19.0%減の4億4,300万Sドルに落ち込む一方、高マージンのリグ2機が完工したことなどから、税引き前利益が1億Sドル近くに上った。また、オフショア部門がこのほど新たにリグ建造と船舶改造の2つの契約を獲得した。
リグ建造事業はマースク・コントラクターズからの受注。契約額は1億6,700万USドル(2億9,000万Sドル)で、2003年第3四半期の完成を予定している。
同社はまた、関連会社が保有する船舶の評価減から、740万Sドルの特別損失を計上した。
2001年の業績見通しについて同社は、年内にはオフショア・プロジェクトの完工予定がないことから、利益は2000年を下回るとしている。また、2000年12月の石油価格の急反落によりSPCは980万Sドルの損失を計上したが、今年は経営の見直しにより、黒字転換を目指している。
|