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マリンエンジンと環境問題
 
 船外機の燃料として使われている石油などの化石燃料は、その燃焼によって炭化水素や窒素酸化物などの有害物質を発生させるとともに、二酸化炭素による地球温暖化等の環境問題を引き起こしています。
 日本では環境を守る立場から、世界的な排ガス規制の流れを受けて、マリンエンジン(船外機・水上オートバイ・ジェットボート)の排出ガスの中に含まれる炭化水素と窒素酸化物を2000年モデルの商品から段階的に削減する自主規制を実施しています。
 
 
船外機による排ガス
 
 船外機における、排気ガスの最も大きな問題は、2サイクル機関特有の掃気行程にあります。
 2サイクル機関の掃気行程は、クランク室で圧縮された混合ガスを勢いよくシリンダー内部に噴出する事によって、燃焼済みの排気ガスを追い出すとともに、内部を新しい混合ガスで満たすわけですが、ちょっとしたポート開閉タイミングや噴出する勢いの違いによって、完全に排気ガスを追い出せなかったり、逆に新しい混合ガスの一部が排気ポートから燃焼した排気ガスと一緒に漏れてしまったりということが起きます。
 これが、2サイクル機関における排気ガス中の炭化水素濃度を上げる大きな原因となっています。
 
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環境に優しい船外機
 
 日本の船外機メーカー各社は、マリンエンジン排出ガス自主規制により排出ガス量の少ない新型エンジンの開発を進めていますが、その中心となるエンジンはクリーンな燃焼と騒音の少ない4サイクル船外機と、従来の2サイクルを改良した直接燃料噴射方式の新世代2サイクル船外機が有力視されています。
 4サイクル船外機の利点は、独立した吸排気バルブを持つことにより、炭化水素の排出を抑える効果があります。一方、2サイクル船外機はピストンが吸排気バルブを兼ねる構造上、従来のタイプでは排出ガスの排出量を抑えることができませんが、シリンダー内に空気だけを吸気させ、圧縮したところで燃料を噴射する直接燃料噴射方式が、クリーンな排気を実現し、無駄な燃料消費を抑えながら、2サイクル本来のパワー感やレスポンスのよさを失わないと言う点から今後の2サイクルエンジンの主流になりつつあります。
 
2サイクル直接燃料噴射方式
 
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(1)クランクケース側の吸気、シリンダー側の圧縮とも、空気のみを対象とします。この時点では、エンジン内部には一切ガソリンが存在しません。
 
(2)シリンダー側で空気を圧縮しきったところへ、ごく細かい粒子のガソリンを噴射します。ほとんど同時に点火プラグで着火し、そのまま膨張行程に入ります。
 
(3)排気行程は、従来の2サイクルエンジンと同じです。ただし、同時にクランクケース側で圧縮されるのは、ただの空気です。
 
(4)ピストンが下がり、掃気ポートが開いたところでシリンダー内の掃気が行われますが、このときは空気しか入ってこないため、排出されるガスの中に混合ガスが漏れることはありません。
 
展示状況I
 
会場右手より
 
トーハツOB船外機と昭和30年代に製造されたランナバウト艇
 
展示状況II
 
船外機の展示状況
 
体験学習用船外機艇を使っての解説風景
*会場内で実際にエンジンを始動させ、船外機の特徴や構造を小さな子供たちにも分かり易く解説しました。
 
参考資料
 
「船外機の行方」 著者:運輸省船舶局
「航跡 日本舟艇工業会20年史」 編集・発行:社団法人 日本舟艇工業会
「舟艇工業の現状」−平成13年− 編集・発行:社団法人 日本舟艇工業会
「天城船外機の調査研究報告書」 編集・発行:社団法人 日本舟艇工業会、財団法人 日本モーターボート協会
「30年のあゆみ」 編集・発行:財団法人 マリンスポーツ財団
新改訂版「内燃機関の歴史」 富塚清著・発行:三栄書房
「The Pictorial History of Outboard Motors」 W.J.Webb with RobertW.Carrick
日本舶用機関学会誌 第22巻 第12号「日本の船外機」 池田孝道著
舟艇技報 1997年12月号「船舶と舟艇」 戸田孝昭著
「トーハツ船外機の回顧」 池田孝道著
「ボート倶楽部」1999年6月号 編集・発行: 株式会社 舵社
「ボート倶楽部」2001年7月号 編集・発行: 株式会社 舵社
「舵」1932年8月号 発行:日本機動艇協会  
「舵」1932年9月号 発行:日本機動艇協会  
「舵」1932年10月号 発行:日本機動艇協会  
「舵」1932年12月号 発行:日本機動艇協会  
「舵」1943年11月号 発行:日本機動艇協会  
「舵」1943年12月号 発行:日本機動艇協会  
「舵」1949年5月号 発行:財団法人 日本舟艇協会
「舵」1950年6月号 発行:財団法人 日本舟艇協会
「舵」1952年4月号 発行:財団法人 日本舟艇協会
「舵」1953年5月号 発行:財団法人 日本舟艇協会







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