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4. 360°旋回式固定ピッチプロペラ装置
 360°旋回式固定ピッチプロペラ装置は、主に引船の推進装置として使用される。3・48図に示すように360°旋回式固定ピッチプロペラ装置は、主機関には一定の同方向回転機関が用いられ、弾性継手を介して、中間軸へ伝達される。中間軸に伝えられた動力は、クラッチを介して360°旋回式推進装置に入力し、推進器内部の上方に位置する水平な入力軸端において、1組の傘歯車によって減速されると共に、下方に向う垂直軸を駆動し、その下端においてもう1組の傘歯車によって再び減速され、水平なプロペラ軸を駆動する。その形態がアルファベットのZの字を連想させることからZドライブプロペラと呼ばれる。360°旋回式固定ピッチプロペラ装置は垂直軸を格納している旋回筒と筒の下端に結合されている下部ギヤケースおよびプロペラ軸とを、船体に対し、360°自由に旋回させることが可能である。コルトノズルは旋回筒に固定されており、プロペラ軸と共に360°旋回する。従って、舵や舵取機構は全く不要となり、プロペラの推力方向を自由に変えることによって操船が行われる。360°旋回式固定ピッチプロペラ装置の特長として、船の急停止、急旋回、一点その場旋回などの船体運動性能が良く、コルトノズルとの組合せにより大きな推力が得られる。また推進および操縦に必要なすべての装置が一つのユニットにまとめられているので、船体への取り付けが容易であるとともに、船を上架することなく、浮船のまま推進装置を船体から取り外し、取り付けすることができるので保守点検が容易である。
 なお、360°旋回式推進装置には可変ピッチプロペラ装置のものもあるが、その動力伝達機構は、固定ピッチプロペラ装置と基本的には同じであり、また、プロペラピッチの可変機構も通常型可変ピッチプロペラ装置と同じである。
 
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3・48図 360°旋回式固定ピッチプロペラ装置の一例
 
 
5. ウォータジェット推進装置
 ウォータジェット推進装置とは船外から低速で水を取り入れ、水ポンプでエネルギを与えて高速で後方へ噴出させ、そのとき働く推力によって船を推進させる装置である。水ポンプには斜流ポンプ、軸流ポンプ、渦巻ポンプなどが採用される。
 ウォータジェット推進装置は主機関からの動力を羽根車に伝達する主軸(インペラ駆動軸)、インペラ、案内羽根、ノズル、デフレクタ、リバーサなどから構成される。
 船底の吸入口から取り入れた水は吸入管路部を通って、インペラで旋回流のエネルギが与えられ、そしてその旋回流は案内羽根によって軸方向に整流される。インペラからの整流された水はノズルによって、後方へ噴出され、その反力は船体にて受け、船舶の推進力となる。ノズルから噴射された水流は、舵の働きをするデフレクタと言う装置によって左右に転向させ、またリバーサ(バケット)によって水流の方向を前進と反対方向に転向させて、船を後進させたり、リバーサを中立位置にすれば、主機関回転時でも、船体を停止状態にすることができる。ウォータジェット推進装置の特長として、張出軸受、舵などの船体付加物がないため、高速時の船体抵抗で、最も大きい割合を占める付加物抵抗が少く、浮流物などによる損傷の程度がプロペラに比較して軽減される。また、プロペラ船に比較して低騒音、低振動で浅瀬航行が可能で、高速艇に適している。
 
3・49図 ウォータジェット推進装置の一例
 
3・50図 前進、中立、後進、リバーサ作動図
 
6. アウトドライブ装置
 アウトドライブ装置とは船外機から上部のエンジン部分を取り除いたような形状をしており、機能的には新らしい推進装置である。なお、装置自体が舵の役目もするので、舵は不要である。
 アウトドライブ装置の駆動方式としては3・51図に示すように、
1. 船内機とアウトドライブ(クラッチ内蔵)を直結したもの
2. 船内機とアウトドライブを中間軸を介して連結し、クラッチをアウトドライブに内蔵したもの
3. 上記と同じく中間軸を介して連結しクラッチ(油圧等)をエンジン側に内蔵したものとがある。
 
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3・51図 アウトドライブの駆動方式
 
 アウトドライブは、エンジンからの動力を伝える入力軸と、ドライブをチルトアップまたはダウンさせる時、軸の曲がりに対応するためのユニバーサルジョイントとで構成する入力部分と、前進歯車、後進歯車と前後進切換えクラッチが組み込まれた上部ギヤケース部分、プロペラ軸に組み付けられた歯車と、これと噛み合い動力を伝える歯車が組み込まれた下部ギヤケース部分、上部ギヤケースから、下部ギヤケースに動力を伝えるドライブシャフト、とで構成されている。
 アウトドライブに使用されているクラッチには、コーン式のものと、ドグ(爪)式のものとがあり嵌脱回数の多い用途には、コーン式が多く使用されている。
 又、入力軸とユニバーサルジョイントの間にドグクラッチを入れ、エンジンのみ長時間使用する場合は、ドライブを駆動しないようにしたものもある。減速比の変更は下部ギヤケース内の歯車を交換する事により可能である。
 又、船の深さに応じてドライブの長さ(深さ)が変えられるよう上部ギヤケースと、下部ギヤケースとの間に入れる間座とドライブシャフトが、準備されている。
 
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3・52図 クラッチ内蔵形アウトドライブの断面図
 
 
7. フォイトシュナイダプロペラ
 フォイトシュナイダプロペラは3・53図に示すように船底部に垂直軸のまわりに回転する円盤をはめこみ、この円盤の周縁に口の先端のような形をした4枚ないし6枚の翼を垂直に取付けたもので、この円盤を回転させることによって、船の推進力を得ようとするものである。
 
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3・53図 フォイトシュナイダプロペラ







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