3. 可変ピッチプロペラ
可変ピッチプロペラ装置とはプロペラピッチ角を前進から後進まで自由に変えることができる機構をもったプロペラをいう。
可変ピッチプロペラ装置の構造は大別して次の5つの部分から成っている。
(1)プロペラ軸・・・プロペラ軸、変節軸、船尾管
(2)プロペラ本体・・・羽根、ボス(ハブ)、ピストンロッド(クロスヘッド)、クランクピン
(3)変節装置・・・給油軸、給油箱、シリンダー軸、ピストン、変節油ポンプ
(4)遠隔操縦装置・・・遠隔制御装置、機側制御装置、翼角指令伝達装置
(5)非常用翼角固定装置
現在、各種の可変ピッチプロペラ装置が製作されているが、本章では主機関出力3,000PS程度の可変ピッチプロペラ装置の構造について述べる。
可変ピッチプロペラ装置の基本的な構造は特殊のものを除いては、油圧サーボ機構(サーボモータ)とプロペラボス内部の変節機構とを中空のプロペラ軸の中を通る変節軸によって連結し、変節油ポンプからの油圧を原動力としてサーボピストンにより変節軸を前後に動かし、プロペラボス内部の変節機構によってプロペラのピッチ角を変えるものである。
3.1 可変ピッチプロペラ装置の用語とその説明
1)給油軸
給油軸とはプロペラ羽根の変節を行うシリンダヘ作動油を分配給油する穴をもつ軸を言う。中間軸の一種である。
2)給油箱
給油箱とは変節油ポンプからの圧油を羽根の変節を行うシリンダヘ分配給油するための給油軸に設けられた筒状の構造物を言う。
3)シリンダ軸
シリンダ軸とはプロペラ羽根の変節用のシリンダを組み込んだ軸を言う。中間軸の一種である。
4)変節軸
変節軸とは変節用シリンダの往復運動の動きを羽根に伝え羽根の変節を行うための中空軸を貫通している軸を言う。
5)変節装置
変節装置とはプロペラ羽根の変節を行うシリンダとピストンから構成されているもので、一般にサーボモータと呼ばれるものを言う。
6)ピストンロッド(クロスヘッド)
ピストンロッドとはプロペラボス内にあって変節軸の往復運動をクランクピンリングに伝えるものを言う。
7)クランクピンリング
クランクピンリングとはピストンロッドの往復運動をクランクピンと滑り金によって羽根軸中心まわりの回転運動に変えるものを言う。
8)変節油ポンプ
変節油ポンプとは変節装置に変節油を供給するポンプを言う。
9)変節油移送ポンプ
変節油移送ポンプとは船底タンクまたは置タンクのサンプタンクの変節油を重力タンクヘ移送するためのポンプを言う。
10)非常用翼角固定装置
非常用翼角固定装置とは変節油ポンプの故障などによって可変ピッチプロペラ装置の変節ができなくなった場合に固定ピッチプロペラとして使用できるように翼角を固定する装置を言う。
11)遠隔操縦装置
遠隔操縦装置とは船橋操縦室、機関制御室、またはその他の制御室より変節の命令を出しそれを変節装置の変節制御部分に伝え翼角の変節を行う装置を言う。
3.2 ボス内部の変節機構
ボス内部の変節機構は3・42図に示すように、プロペラ本体には、それぞれ独立した羽根と、その羽根を取付けるボスと、プロペラ羽根の角度を変えるための変節機構から成っている。変節機構はサーボモータで得られたピストンの往復運動を回転運動に変換しこれをプロペラボス上に設けられた羽根に伝達する機構である。
変節機構の変節の方法には3・42図に示すピンスロット型(a)、クランクロット型(b)、クランクスロット型(c)の3種類がある。
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3・42図 ボス内部機構
3.3 変節装置
変節装置は一般にサーボモータと呼ばれるもので、シリンダとピストンから構成される。変節装置には3・43図に示すように軸系内に内蔵されたもの、減速歯車装置に組込まれたもの3・45図および3・44図(a)(b)に示すようにプロペラボス内にシリンダとピストンを内蔵されたものなどがある。これらはピストンの前後に変節油ポンプからの油圧を与え、ピストンを前後に動かすものであるが、これを制御するために制御弁が設けられる。この制御弁もサーボモータのピストン内に内蔵されたもの、軸に取り付けられた制御箱内に設けたものまたは独立した制御装置内に設けたものがある。
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3・43図 軸系内にサーボモータがあるもの
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3・44図 サーボモータをボスに内蔵するタイプ
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3・45図 減速歯車装置にサーボモータを組込んだもの
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