日本財団 図書館


2)減速機
(1)減速機を装備する目的
 機関の高出力化は回転数を上げることと、正味平均有効圧力を上げる2つの方法で計画実施されてきた。機関の回転数を上げる方法では、船舶機関のクランク軸とプロペラ軸が直結されている限り、機関の回転数が上昇するにつれてプロペラ効率が悪くなり、上げ得る回転数には限度がある。しかし回転数を上げなければ高出力化は望めない。この問題を解決するためには、機関の回転数は上げたままとし、プロペラ軸の回転数のみ低くする必要がある。この手段として舶用機関に減速機を装備しプロペラを効率の良い回転数で廻すようにしている。
(2)減速機の種類と構造
 減速機には、いろいろの種類のものがあるが、通常使用されているのは、前項でも記したような大小の歯車を組合わせ、その歯数比により回転数を変える歯車式1段減速機である。
 平歯車、ハスバ歯車、傘歯車、等の歯車が使用されるが、その並べ方により次のような種類がある。なお、最近の減速機には、強度面、低騒音化の面より殆ど、ハスバ歯車が使用されているが、ハスバ歯車は機構上軸方向に推力が発生するので、整備時には軸受けやスキマの取り方に、細心の注意が必要である。
 
(拡大画面:27KB)
 
(3)クラッチの使用上の注意事項
 クラッチで問題となるのは、スリップと焼き付きである。正常な運転状態ではスリップの心配はないが油圧低下のまま連続使用した場合や過負荷状態で使用すると先ずスリップが発生し、これに気付かず運転を続けると、摩擦板やスチールプレートに焼き付きが発生し、嵌脱が不良となりスリップするほか連れ廻りの原因となる。なお、焼き付きが発生する前には油温が異常に高くなるので油温に注意することが必要である。
 クラッチが何らかの原因でスリップしたり、或いは作動しないときには、前進用のクラッチには緊急ボルトが装備されているので、このボルトを締め付けることにより、応急的にクラッチを結合することが出来る。
 不具合が発生したときには、機関を停止し、2・213図に示すような付属されている工具でクランク軸をターニングしながら緊急ボルトを均等に締め付けてクラッチを結合する。緊急ボルトは港まで自力で帰るための応急処置である。緊急ボルト使用時は、クラッチは前進側と直結となっており、中立、後進の操作は出来ないので、機関始動時及び着岸時には特に注意が必要である。なお、運転は決められた回転数以下で行なうこと。
 
(拡大画面:20KB)
2・213図 緊急ボルトの締付図







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION