2.3 プロペラの取付け
1)プロペラの取付け法
プロペラ取付けの簡単な方法としては、プロペラ軸のスリーブ外周にケガキ線を入れて押し込む方法、プロペラナットの締付角度や締付トルク(実際はハンマの手応え)で締付の良否の判断をする方法が広く取られていたが最近は油圧ジャッキとダイヤルゲージを使用した押込方法が普及してきた。この方法はプロペラ軸損傷例のうちでも特に起りがちなプロペラ取付テーパ部のフレッティングコロージョン(微動腐蝕)やキーミゾの亀裂の危険を解消するため、所定の計算式によって押込量を計算し、工事に当っては押込過程における押込量と荷重の関係を確認しつつ行い、テーパ部の肌付きの状態(押込量0)を材料力学的な見地から決定するとともに押込途中の異常をこれによって判断する。油圧ジャッキ取付けの一例を3・48図に示す。
押込量の計算式は船舶機関規則や日本海事協会鋼船規則で規定されており、これには押込量の上限および下限と参考のため予想押込荷重が示されている。上限はプロペラ内面で材料が降伏したり、プロペラ翼根元に危険な応力が生じない安全な値の限界であり、下限はプロペラのトルクおよび推力に対して満足な値である。また予想押込荷重は油圧ジャッキや圧力計の計画に役立つ。即ち、油圧ジャッキや圧力計などは予想荷重に対し余裕をとる必要はあるが、計測誤差を考慮して適切なものでなければならない。
なお、プロペラ押込み計算書の一例を3・49図に示す。
3・48図 油圧ジャッキ取付け例
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3・49図 プロペラ押込み計算書の一例
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2)プロペラ押込みの手順
(1)プロペラおよびプロペラ軸のテーパ部温度を測る。できればそれぞれ数ケ所測り平均する。
(2)押込計算書グラフより下限値および上限値を求める。
(3)最初にいくらかの荷重(押込目標値で予想している荷重の1/10程度)をかけて静止させダイヤルゲージを0にセットする。
(4)その後、荷重を順次増しては静止させダイヤルゲージの読みと荷重との関係をグラフ用紙に記入していく(3・50図参照)。
(5)(3)(4)項で記入した点に最も近い直線を引く。
(6)この直線を延長して、荷重0としたときの仮想肌付き点を推定して実際の押込量を求める(3・51図参照)。
(7)この実際の押込量が押込計算書で求めた上限と下限の間にあればよい。このため押込工事中にグラフ用紙に記入していき、即座に結論を出す必要がある。
3・50図 押込み量
3・51図 真の押込み量
なお、グラフ用紙に記入した点が直線で結べない場合には3・52図に示すように処理する。
3)検査の適用
キーレスプロペラの押込み検査はプロペラ軸精密探傷検査とともに検査機関の立合を必要とする。従って、プロペラ押込計算書と押込記録を所定の用紙に記録して保存する必要がある。またキー付プロペラであっても(NK船では検査要領がある)、この趣旨に沿って押込みを行うことはプロペラ軸の安全確保につながることは云うまでもない。
4)プロペラ取外し法
プロペラの取外しは、従来ハンマで叩く方法、油圧ジャッキで引抜く方法や蒸気で加熱する方法で行われたが、最近軸径が300mm程度以上のものについては、テーパ部に油圧を導き、分解する方法が普及してきた。即ち、3・53図のようにボス外周より内面に通じる油穴を設け高圧ポンプ(手動又は電動)とフレキシブルホースを使用して、油圧をボス内面に導く。
テーパ部には、油圧の分布を一様に広げるため油溝がありテーパ面に浸透させながらテーパ部の接触を断つものである。この場合急激な飛出しを防止するためナットをプロペラボス船尾側端面より約10mm程度間隔を開けて取付けておくとよい。なおボス部をバーナの火炎で直接加熱する方法は避けること。
3・52図 直線で結べない場合の対応例
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3・53図 高圧ポンプ・フレキシブルホースを利用した例
5)プロペラ取付け後
プロペラの取付けが完了した後プロペラナットを締付けて廻り止めを行う。その後、ボンネット(冠)とプロペラパッキン、パッキン押えを取付けグリース充填穴が2ケあるものは一方よりグリースガンで充填し、他方の穴より流れ出るまで十分に行う。
なおプロペラパッキン押えはプロペラ軸大端部を海水より保護する重要な個所であるから入念に取付けを行い、ゴムパッキン寸法もメーカの指示通りのものを取付け、押え代も適当なものであること。
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