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2.10 減速逆転装置
 舶用減速逆転機とは、主機関の回転速度を減速してプロペラ軸に伝えたり切ったりすると共に、プロペラ軸を任意の方向(右または左)に回転させる装置で、通常船舶の推進装置として用いられるものである。この装置の主要部分は主として、クラッチ部(摩擦により機関の出力をプロペラ軸に伝えたり切ったりする部分)と歯車部(機関の回転を減速ならびに逆転させる歯車装置)で構成されている。
 
1)機械式減速逆転機の構造と作動
(1)ユニオン式逆転機(傘歯車)
 この種の逆転機は昭和30年代迄の小形エンジンに多く使用された。
(イ)構造
 2・156図(a)のように逆転機ハウジング、親歯車(2枚)、子歯車(2〜4枚)、拡張環、制動帯、摺動筒、推進軸を組合せたものである。
 ハウジングは、クランク軸にも推力軸にも固定されていない。
 エンジン側の親歯車は、クランク軸の先端に、また推力軸側の親歯車は、推力軸に固定されている。
 拡張環は推力軸に固定され、摺動筒を介して拡張レバーによって拡張され、ハウジングに密着する。擢動筒をもどせば拡張環はバネによってもとに戻る。
 
2・156図 ユニオン式逆転機
(拡大画面:47KB)
 
 子歯車はハウジングに固定された軸にはめ込まれ親歯車とかみ合って回転する。
 伝達トルクが大きくなると拡張環式ではスリップ等の問題が出てくるのでこれを解決するため2・156図(b)に示す多板式の摩擦板が拡張環の代りに用いられている。クラッチドラムの内側と、クラッチ受板の摩擦板はめ込み部にはスプライン状の溝が切ってあり、摩擦板は回転方向には動かないが軸方向には動くようになっている。締付金具はテコ式になっていて摺動筒によってその一端を外周方向に移動させると、その他端が摩擦板を軸方向に押える構造であるため摩擦板(外)と摩擦板(内)とが両面で接触し、その摩擦力によってクラッチドラムの回転力を推力軸に伝達することができる。
(ロ)クラッチの作動
 ユニオン式逆転機の作用図を2・157図および2・158図に示す。
 
2・157図 ユニオン式逆転機の作用図
(拡大画面:44KB)
 
 
2・158図 ユニオン式逆転機の作用図
 
(2)ディスク式減速逆転機
(イ)構造
 この減速逆転機は2・159図に示すようにエンジンのクランクの軸端に直結されたハウジングとその内部で遊離している前後進摩擦板、摩擦板を介して動力を伝達する前後進軸、その伝達機構としての各歯車、また摩擦板を動かしハウジングに圧着させるフローティングプレート(中間板とも云う)等から構成されている。
 
2・159図 摩擦板式逆転減速機
(拡大画面:25KB)
 
 機構的には後進軸は中空軸になっていてその中を前進軸が貫通し、前進摩擦板と結合している。前進軸と後進軸はお互に干渉しないようベアリングで支えられている。動力は、ハウジングの内側の溝にフローティングプレートの外周が嵌まり込むようになっていてフローティングプレートを前または後に動かすことによりそれぞれの摩擦板をハウジングに圧着し、ハウジング→摩擦板→前進軸又は後進軸→推力軸へと伝達されるようになっている。推力軸の回転数は、クランク軸の回転数より減速されておりその度合は歯車の歯数の組合せで変わるようになっている。
(ロ)作動
 ディスク式減速逆転機の作動を2・160図および2・161図に示す。
 
2・160図 前進位置
 
 
2・161図 後進位置







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