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第5章 生活交通サービスの改善・整備の方向性の検討
1. 生活交通の検討課題(検討メニュー)
 バス交通カルテ、アンケートから、生活交通の検討課題つまり福祉バス交通を主体とした検討メニューを次のように整理した。
 
図表5−1 アンケート、カルテからの福祉バスの検討の課題(検討メニュー)
(拡大画面:62KB)
 
 生活交通、福祉交通のバスの検討メニューとして、現在の福祉バスの改善だけによるものでなく、公共との体による路線バスの改善が重要である。また、鉄道駅や公共公益施設へのバス交通アクセスの確保方策も重要である。
 
2. 生活交通バスの検討の基本的方向性
 
 図表5−2に示されるようなアンケート、カルテからの特性から生活交通(路線バスも含めた)、特に福祉バス交通の検討の基本的な方向性は、以下の通りまとめることができる。
 
図表5−2 生活交通バスの検討の基本的方向性
(拡大画面:163KB)
 
3. 生活交通バスの整備目標など
 本研究では、生活交通サービスの改善・整備の方向について明らかにしてきたが、この方向を受け、次年度以降実現化に向けて、まず平成14(2002)年度に実施された生活交通の不便地区の交通実態調査結果も反映し、より実態的な生活交通の改善・整備の計画を策定することが必要である。
 社会情勢、制度、ライフスタイル・価値観などの変化の中で、環境、エネルギー、経済、財政などさまざまな観点で、交通のあり方、利用の仕方は変化せざるを得ない社会を迎えていると踏まえることが、前提であり必要であると考えられる。
 また本市の地域特性、実態に即する筑紫野らしい生活交通バスシステムを公共、交通事業者、住民と一体となって模索し構築していくことが重要である。
 コミュニティバスなどの新しい生活交通バスシステムが運営・運行され、住民の生活交通サービスが向上されることに、本研究の成果が役立つことが期待される。
 
(1)輸送システム導入のための基本コンセプト
 事例からいえる一般的なコミュニティバスの導入目的は、概ね以下の通りである。
 
(1)廃止路線の代替
(2)公共交通の不便地区(交通空白地区)解消
(3)住民生活の利便性向上
(4)補助金負担等の制度の見直し
(5)住民ニーズヘの対応
(6)市街地活性化
(7)運行形態等の改善
(8)公共交通優先の交通政策(環境負荷の軽減)
 
 本市における、新しいベス輸送システムを検討する際の基本コンセプトは、以下のように考えられる。
 
(1)廃止路線の代替
 需給調整の撤廃などにより、平成14(2002)年4月1日で西鉄二日市〜宇美系統(太宰府市役所前〜西鉄二日市駅間)が廃止され、現時点ではさらに1路線(西鉄バス久留米〜飯塚線)の廃止が決定されている。既に廃止が決まった路線はもとより、今後廃止される可能性のある不採算路線も視野に入れた検討が望まれる。
 
(2)公共交通の不便地区解消
 自家用車の普及などで、現在はあまり公共交通を必要としていない住民が多い。しかし本市には、西が脊振山系、東が二郡山系の一部の山地と、高齢者などには負担の多い山間地域を擁する地形的特徴もある。高齢化の進展に伴い、今後は高齢者や障害者などの、いわゆる交通弱者の利便性を考慮した、公共交通の不便地域解消という需要が見込まれる可能性が高い。
 
(3)住民生活の利便性向上
 住民の日常生活における利便性向上という観点から、「買い物」や「通院」、「公共施設の利用」などを目的とする、駅前の商業地や病院、市役所、総合保健福祉センター(カミーリヤ)などの公共施設へのアクセス、また、複数の公共交通手段との結節を配慮した交通体系の整備が求められる。しかしながら、総合保健福祉センター以外の、本市の主な公共施設は鉄道沿線に比較的集中していることから、鉄道駅との結節を考えることで解決できる点も多いと思われる。
 
(4)補助金負担等の制度の見直し
 これまで路線バスは、利用密度によって国・県・市町村から補助金が出されていた。しかし平成13年6月から、国の補助金の対象になる規定が厳しくなり、赤字の多い路線については国や県の補助がなくなり、市町村が全額負担することになる。現在部不採算路線に対して赤字補填などの補助を行っているが、今後の財政的な負担を考慮して、さらに検討を重ねる必要がある。
 
(5)住民ニーズヘの対応
 住民ヒアリングの結果からは、通学交通の安全性や利便性の確保に関する需要が目立ち、また、カミーリヤの施設アンケートからは巡回福祉バス(カミーリヤバス)の運行本数等、運用に対する要望があった。今後は地域住民の意向やニーズを踏まえ、高齢者、障害者等交通弱者に配慮したモビリティの確保、福祉等各種サービスと連携の取れた対応、併せて生活路線の確保(スクールバス等の有効活用)などが求められる。
 
(6)市街地活性化
 「筑紫野市中心市街地活性化基本計画」では、市域の北端、太宰府市との境界付近に位置する西鉄・JR両二日市駅を中心とした市街地帯を中心市街地として位置づけている。
 バス路線はJR二日市駅から杷木、甘木、浦の下方面行き、西鉄二日市駅からは西鉄下大利駅、宇美行き、西鉄・JR両二日市駅を通るものは、太宰府・むさしヶ丘・平等寺・柚須原方面行きがある。本数は多く運行されており比較的利便性が高く、バス交通においても西鉄・JR両二日市駅は、市内各所や周辺市町村へのターミナルの役割を果たしている(西鉄朝倉街道駅は10路線)。しかし、農村集落部や山間部などからの路線・本数が少ない。
 
(7)運行形態等の改善
 現在、住民などから、カミーリヤバスは十分に活用されていないのではないかという指摘がある。カミーリヤの来所者は年間およそ20万人といわれているが、カミーリヤバスの利用者は年間33,090人(平成13年度・往復)であり、およそ来所者の8%しかカミーリヤバスを利用していないことになる。
 考えられる理由として、福祉バスのため、運行形態がカミーリヤヘの送迎のみに限定されていること、現在はカミーリヤ利用者の誰でもが利用できるよう改善されたにもかかわらず、このことが十分に周知されていないため、高齢者に限定されたバスと認識している住民が多いこと、最も運行数の多いコースでも、午前2便(往路のみ)・午後2便(復路のみ)と本数が少なく、利用したい時間の便がないということ、などがヒアリングやアンケートで指摘された。
 現在の運行形態などを見直し、より有効な活用方法を検討する必要がある。
 
(8)公共交通優先の交通政策
 渋滞緩和や環境負荷の軽減が求められる現在、行政から住民に対して、積極的に公共交通の利用を喚起していく必要がある。
 バスは自家用車より環境にやさしい輸送機関であるが、地球環境保全の観点から、バス車両自体をさらに低公害化することも求められている。
 
 本市にあっての導入は、生活交通を担う路線バス、特に福祉バスに主眼を置き、交通空白地区の解消
 
交通空白地区の解消
生活交通(通勤・買い物など生活交通全般)のバス不便地区の解消、通学交通の安全性の確保、公共公益施設への利便性の確保など
交通弱者のモビリティ(福祉交通)確保
 
を目的としたい。
 
(2)導入の際の留意点
 
(1)行政
 アンケート調査などで住民ニーズを聞いた場合、さまざまな地域から路線乗り入れの要望が出ることが考えられるが、それを反映し続けた結果「巡回バス」のようにしてしまうと、地形条件などによっては、冗長でどの地区にとっても不便な路線になってしまう可能性もあるので留意したい。
 
(2)地域住民
 廃止代替バスなどの場合は、住民のバス離れが路線廃止につながった原因のひとつにもなっている。どのようなバスであれぱ皆に利用されるかなど、住民も積極的に議論に参加し、住民の自発的努力で維持される「地域密着型」の公共交通機関としていくことが肝要である。







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