(3)ディマンドバスのシステム
通常の路線バスやコミュニティバスが定期運行・固定順路で走るのに対し、中村市のディマンドバスは、ディマンドがある場合のみバスが走る。また、その順路もディマンドによって運行効率のよい順路を選択し、ショートカット運行がされる。そのため、ディマンドがない時は、バスは運行されない。(ただし、利用予約をしている人がバス停で待っている時は、予約をしていない人も一緒にバスに乗ることはできる。その場合、降車バス停を運転手に伝える必要がある。)
利用したい人は、バスセンターに電話(FAX)・情報端末機(※)で乗車希望時間、乗車バス停、降車バス停を伝えると、バスセンターの端末が乗車可能時間を割り出し、それが本人に伝えられる。了解すれば予約が成立する。伝えられた乗車時間の前後10分ぐらいの間にバス停で待っていれば、バスが到着する。
※情報端末機は、平成15年度以降廃止予定
(4)ディマンドバスの経費
(1)初期導入経費
ハードウエア、ソフトウエア、センター機器は、国の産業・社会情報基盤整備事業から補助され、掛かった費用は約2億円であった。中村市は、通常バスを運行するのに掛かる経常費用から経常収益を差し引いた欠損分を負担し、約3ヶ月の実験運行でかかった費用は約70万円であった。
(2)ランニングコスト
現在まで、機器保守点検は行っていない。また、バスとバスセンターを結ぶ通信システムは高知県の通信回線を利用しており、回線費用は市で負担していない。ただし、平成14(2002)年度で高知県の実験が終了になることから、平成15(2003)年度に新たな通信システムの構築費用が見込まれている。ディマンドバスの予算は、平成14(2002)年度、約650万円を計上している。
また、実験開始からこれまでに、利便性の向上や運行経費の効率化を図るために、運行時間の変更を行っている。運行経費(概算)や利用者数の変遷について次頁のとおりである。
図表3−4 営業時間変更に伴う利用者及び経費(概算)の変化
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実験前(第3種生活路線) |
実験後 |
第1期 |
第2期 |
第3期 |
運行期間 |
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H12.4.10〜H12.6.30 |
H12.7.1〜H13.9.30 |
H13.10.1〜 |
乗務員数 |
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2名(実質1名) |
複数名の交代制(約2時間半で交代) |
1日1名体制 |
営業時間 |
1日7便を運行 |
午前8時〜午後6時(実質8時聞20分)休憩時間(10:30〜10:50)、14:30〜14:50、16:30〜16:50)とこの時間の前後10分程度は予約ができない |
午前7時30分〜午後7時(11時間30分)休憩時間無し(交代制のため) |
午前8時30分〜午後6時(実質7時間)休憩時間(11:00〜12:00、14:30〜16:00)は予約ができない |
1日平均利用者数(1日最大利用者数) |
平均約7名が利用 |
平均29.1人/1日 (最大58人) |
平均50.1人/日 (最大102.8人) |
平均28.2人/日 (最大57.5人) |
1日平均走行距雌(1人あたりの平均走行距離) |
87.5km (12.5km/人/日) |
88.33km (3.03km/人/日) |
125.39km (2.50km/人/日) |
73.23km (2.59km/人/日) |
運行経費 |
約760万円 |
約1,000万円 |
約1,700万円 |
約780万円 |
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図表3−5 1日あたりの平均利用者数及び平均走行距難
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平成12年度 |
平13年度 |
平14年度 |
平均利用者 (人/日) |
平均走行距離 (km/日) |
平均利用者 (人/日) |
平均走行距離 (km/日) |
平均利用者 (人/日) |
平均走行距離 (km/日) |
4月 |
21.9 |
87.28 |
49.7 |
125.74 |
27.2 |
70.9 |
5月 |
32.0 |
86.50 |
52.9 |
132.01 |
26.1 |
69.5 |
6月 |
33.5 |
90.96 |
61.0 |
145.74 |
25.2 |
70.9 |
7月 |
43.1 |
110.10 |
57.7 |
147.86 |
23.9 |
62.7 |
8月 |
51.0 |
118.70 |
60.6 |
144.31 |
27.2 |
67.6 |
9月 |
40.8 |
113.86 |
57.5 |
140.51 |
20.6 |
58.8 |
10月 |
44.7 |
114.73 |
33.1 |
82.92 |
22.9 |
57.6 |
11月 |
43.7 |
116.70 |
32.0 |
74.77 |
20.1 |
59.9 |
12月 |
44.7 |
113.98 |
26.0 |
67.94 |
|
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1月 |
49.6 |
119.42 |
27.3 |
55.20 |
|
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2月 |
48.1 |
118.93 |
23.1 |
65.81 |
|
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3月 |
47.1 |
118.30 |
27.6 |
73.98 |
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※ |
第1期(平成12年4〜6月)、第2期(平成12年7月〜平成13年9月〉、第3期(平成13年10月〜)で、運行時間・体制が異なっている。 |
(5)ディマンドバスの効果
ディマンドバスの効果としては、以下の3点が指摘された。
(1)利用者の増加
利用者は、実験前と比べて4〜5倍に増加した。利用者は、高齢者と子どもが主となっている。平日は、高齢者が病院や介護施設への通院等に利用し、休日は、子どもや家族連れで市街地のショッピングセンター等に行く際に利用している。
図表3−6 バス利用者数の変化
(拡大画面:20KB) |
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(2)利用者の評価が高い
利用者アンケートを実施したところ、約95%が「便利になった」と回答。主な理由としては「利用者本人の希望時間に利用出来るようになった」、「待ち時間が少なくなった」、「バス停までの距離が短くなった」などがあげられた
(3)利用者の掘り起し
同様のアンケートで、ディマンドバス運行以前は自転車、徒歩、自家用車を交通手段としていた人が26%あり、利用者の掘り起こしにつながった
(6)ディマンドバスの間題点と課題
ディマンドバスの問題点と課題については、以下の3点が指摘された。
(1)1ディマンド(1人の利用要望)のみに対する運行
1ディマンドに対しバスを運行することが多い。より効率的な運行を図るためにもバス営業所を発して戻ってくるまでの、一往復で複数名が乗車するシステムが必要とされている。
(2)新しい需要の拡大
利用者が固定化しており、利用者拡大のため引き続き市民への周知徹底を図ることや、市外からの入込み客にも利用してもらえるような効果的なPRをすることが必要とされている。
(3)付帯費用の増大
ディマンドバスの運行開始から約3年の間に、市街地には新たなショッピングセンターや病院ができているので、市民からは運行拡大の要望が出ている。しかし、バス停の増設には、路線変更やバス停の位置変更等によるシステムのプログラム変更、データの変更等が必要となり、多大なコストが掛かると見込まれている。また、現システムを維持するにも保守・修繕費や通信費用等のコストが新たに必要となってくると見込まれている。
(7)今後の取組予定
平成15(2003)年度に新たな通信システムの構築をするのにあわせて、現在ほとんど利用されていない情報端末を撤去するなどして、さらなる効率化を図ろうとしている。また、国、バス事業者等の関係団体との連携によりディマンドバス活性化のためのプロジェクトチームを編成し、定期的にその浮揚策について協議していく予定となっている。
《参考資料》
・中村市提供資料
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