岡山県賀陽町 ―「ロマン高原かよう」地域づくり実践事業―
賀陽町は岡山県のほぼ中央部に位置し、豊かな自然に恵まれつつ、道路交通網の整備により、近隣都市へのアクセスにも優れた町です。町では、「人が輝き、地域が際立つロマン高原かようの創造」を基本理念として、町の豊かな自然をはじめとする特性を生かしながら、住民一人一人の個性を尊重し、全ての住民が生きがいを持って暮らせるまちづくりを目指してきました。
住民の中から、自分たちの手で地域の活性化と魅力あるまちづくりを進めようとする機運が高まり、住民が自ら考え、行動する様々な活動が展開されるようになりました。活発になった住民活動を受け、町では「”ロマン高原かよう”地域づくり実践事業」として、住民主体の様々な地域づくりの活動に対して財政支援を行い、住民の自主性を尊重しながら、活動の高まりを促進することとしました。
各事業の計画立案、準備及び実施は全て各々の住民団体が行い、町は財政支援として、事業の必要経費の2分の1以内、1事業につき25万円を限度として助成することとしました。
支援事業の内容は多彩な住民活動の広がりを反映したものとなっています。各種イベントが開催され、ユニークなコンクールも生まれました。町の自然と景観を守り、生活環境を整備する活動も活発に行われました。町内外への情報発信として、地元の材料を使用した、特産品が開発され、地域情報誌が発行されました。
他には伝統文化の継承及び文化・芸能活動、小学生への体験学習、集落史の編纂及び史跡の看板の設置など、町の魅力を見直し、次世代を育成する諸活動が活発に行われました。
住民の中で、自分たちの手で町を活性化させようとする意識が根付いており、地域づくり団体の承認申請も年々増加傾向にあります。それぞれの団体が町内だけでなく、町外にも広く目を向け意欲的に活動し、賀陽町のパワーを発信しています。
また、地域単位あるいは任意の団体が地域づくりの活動をそれぞれの発想で行う中で、地域や年齢を越えた住民同士の交流が図られています。次世代のまちづくりを担う小学生・中学生を対象とした諸事業を通して、都会では体験できない賀陽町の豊かな自然と、祖先が伝え残した伝統の素晴らしさを子供たちに伝えることに成功しています。
また、各団体の様々な個性が表れた各種のイベントには町内外を問わず多数の参加者が集まり、地域の活性化と町のPRに大きく貢献しています。
今後、さらに住民主体の活動が活発になることが期待されます。その中で各地域づくり団体が、積極的に情報交換などによる交流を図り、共同での取り組みを通して、住民全体を巻き込んだ活動を展開していくことが必要です。
これからのテーマとしては以下のものがあげられます。
(1). 賀陽町の伝統を学び、ふるさとのよさを見つめ直すために、町の歴史、文化、環境などの勉強会を開催する
(2). 自分のふるさとが好きな子供たちを育てるため、「ふるさと教育」の推進を図る
(3). 「まちづくりは、人づくり」ととらえ、人材の育成、特に地域づくりのリーダーを育成する
これらのテーマについて、住民と行政がお互い協力しながら具体的な目標を見つけ、よりよい町づくりに向かって努力しています。
愛媛県内子町 ―内子町地域づくり事業―
(1) 支援開始のきっかけ
内子町においては、平成元年度に、地域づくりの拠点となる「公民館支館・分館」が全ての地域に設置され、18の支館・分館体制が整いました。町では平成2年度を地域づくり元年として、各支館・分館に担当職員を任命、住民と行政が協働して21世紀を迎えるための地域ビジョンである「地域づくり計画書」を策定しました。
平成3年度からは、この計画書に基づき、地域住民の活動が始まりましたが、町ではその活動を側面から支えるため、「地域づくり事業推進要綱」を制定し、推進のための体制づくりを進めました。また、活動の気運を高め、運動の定着を図るために「内子町地域づくり事業費補助金交付要綱」を制定し、財政的な支援ができる体制を整えました。
(2) 支援内容
補助金交付の対象となる事業は、大きく分けると次の5つに大別されます。
1. 産業振興に関するもの
・生産者と消費者を農産物で結ぶ交流事業
・地域特産品の創出事業
2. 地域環境の整備に関するもの
・地域の誇りや自慢の創出事業
・地域の環境美化創造事業
・緑化推進事業
・名水、名木、天然記念物の保護育成事業
3. 文化活動の推進に関するもの
・信仰、宗教を伴わない伝統行事の保護育成
・地域おこしのためのイベント等
・「村の暮らし」「村の歴史」編纂事業
4. 健康、福祉の推進に関するもの
5. その他、町長が地域づくりに関し特に必要と認めるもの
地域づくり事業審査会の審査を経て、1事業につき最高30万円までの助成が行われます。平成3年度からの10年間に、計175の事業が行われました。その内容は、地域の清掃活動や花いっぱい運動、沿道の植栽活動や特産品開発、学習会の開催や先進地視察など多岐にわたります。この事業を積極的に活用した地域の中には、全国的にも注目されるような活動を実践するところもでてきました。
平成2年度に制定された「地域づくり計画書」に基づいて事業が行われてきました。平成12年度に、より住民主体で地域づくりができる体制を整えるため、3つの公民館を自治センターとして整備し、公民館支館・分館を自治会に発展させるとともに、行政区の役割を大幅に軽減し、地域自治の方向性を一層強化します。町では担当職員を各自治会に再び配置し、平成13年度に新しい「地域づくり計画書」を策定します。平成14年度からは、新たな地域づくり事業が始まる予定です。
佐賀県七山村 ―七山村活力あるむらづくり事業―
七山村では、過疎化が進んでいるうえ、コミュニティを支えてきた農林業の世帯数が全世帯の半数を割り、サラリーマン世帯が増加しています。近隣との交流が減少し、農山村の特色である地域の連帯感、共同意識が薄れ、地域の共同作業や祭りの実施に支障が生じてきています。
そこで村では、ますます高齢化の進む中でのコミュニティの復活、復権のためには、そこに住む人々が主役となり、自らの手による村づくりが不可欠だと考え、21世紀へ向けたコミュニティ活動支援事業として、平成10年度から「活力あるむらづくり事業」をスタートさせました。この事業では、住民自らが住みたくなる地域集落とはどうあるべきかを考えた上で取り組んでもらうため、各集落が独自に特色ある地域の目標づくりから事業の実践までを行い、それに対して村は、アドバイザーなどの人的支援と資料提供、調査、研修、話し合いの費用等の側面的な財政支援を行い、住民と村とが一体となった「夢のある村づくり」を目指しています。
事業は、一集落3カ年を限度とし、初年度にアンケート調査、地域の点検等地域の実態把握、問題点、課題の整理を行い、地域の目標づくりである地域推進計画を作成します。2〜3年度は、地域推進計画に基づく事業を実施する内容で、特段のメニューは設けず、地域で考えたことをそのまま具体的に実施できるようにし、地域の自主性にまかせることとしています。平成10年度から12年度までに全集落(14集落)を指定し、村をあげて取り組んでいます。具体的な事業活動は、地域毎に地域独自の話し合いの場を設けて、アンケート調査等地域の実態把握から計画策定までを行い、それに基づく活動として、ふれあい交流会の開催、ゴミ収集所・公民館の整備、街路灯の設置、公園整備など地域の身近なことから実施されています。
なお、村の支援内容は、財政面においては、一集落当たり初年度計画策定費300千円、2〜3年度事業実施費1,000千円の合計1,300千円です。また、担当職員をはじめ集落担当課職員を集落の推進計画づくりの会合に参加させ、意見交換や情報の提供等を行っています。
活力あるむらづくり事業は、初年度に必ずアンケート調査や地域の点検等地域の実態把握、問題点、課題の整理を行い、地域の目標づくりである地域推進計画の作成を義務づけています。そして、地域毎に独自の話し合いの場が設定され、推進会、代表者会、全体会を開催し、住民の総意による推進計画づくりを進めます。アンケート調査の原案づくりから集計取りまとめまで地域の手づくりで行われることから、地域の身近な問題が再認識され、事業実施についても、スムーズに行われます。さらに、目に見える形で計画が実現することで、地域づくりに対する活発な意見が聞かれ、地域の意識の改革がみられ、自分たちで何とかやらなければという意識が芽生えはじめています。
平成12年度で全集落の推進計画が策定されたので、事業内容を検討し、各集落ごとの特色ある村づくりの実現に向けて、1. 産業おこし/2. 集落の伝統行事の存続/3. 集落の担い手対策/4. 地域間交流活動/5. 地域資源の見直し、維持・管理や活用 を念頭において、行政と各集落の協力体制づくりを図り、集落における活性化への取り組みを村全体に波及させていき、都市との交流、特産品の開発など村の賑わいづくりの中心となる事業展開を推進しています。
熊本県合志町 ―合志町地区魅力化事業―
「地区魅力化事業」は、そこに住む人達が毎日生活する地区を今一度総合的に見直し、将来、より魅力的で住みよい町とするための計画を策定し、その計画に基づき、まちづくりをすすめていこうという事業です。この事業では、地域の将来計画を住民自ら策定していく「地区魅力化計画策定事業」に50万円、その計画に沿って事業を実施していく「地区魅力化実施事業」に100万円の補助を行っています。この事業は、地域からの自主的な申し入れに対し、町が指定し事業を進めて行くという2ケ年間の補助事業であり、平成3年度から平成12年度まで5つの地区(約2,800世帯、9,400人)が取り組みを行っています。
平成8〜9年度に取り組みを行ったすずかけ台団地は、現在739世帯、人口2,195人の一戸建住宅中心の大型団地です。熊本市のベッドタウンとしてサラリーマン世帯が多く、熊本市を中心に生活圏としています。しかし、宅地開発から20数年を経て、自分達の故郷として地域を考えていこうという気運が高まりつつありました。
平成8年度の地区魅力化計画策定事業では、ワークショップ(4回)の手法を用い、地域の将来計画を策定しました。平成9年度は、地区魅力化実施事業で街灯等の環境整備を行うと共に「みんなでつくる公園整備事業」を行っています。
また平成10年度には、地区魅力化計画に基づく高齢者対策「お年寄りが自立できるまちづくり」に取り組みました。
この事業での行政の役割は、補助金交付申請と実績報告書作成程度で、事業の企画、運営などは、全て住民が独自にワークショップ等の手法を使って取り組み、「健康セミナー」や、「世代間交流事業」が行われ、延べ約700名を超す住民の参加を得ています。自分たちに何が必要で、何をなすべきか、できることは何なのかを地域住民自ら判断し、自然に行動できるような地域「自律神経を持つまち」が、地域の目標になっています。
ワークショップの手法を使った住民参加の取り組みは、マスコミで取り上げられると共に、各種の表彰を受け「住民参加のまちづくり」として高い評価を受けました。地域の将来計画策定から、事業の実施まで携わってきた人達は、これらの評価を自分のものとして受け止めることができました。それは、自分たちがやってきたことに対する自信となり、地域の誇りとなっています。
最初は、住民参加やワークショップの手法に馴染むことができなかった人たちも、回を重ねる毎に、また外からの評価が見えてくる毎に、その輪の中に入ってくれました。今回のすずかけ台での取り組みは、色々な条件がうまく整ってできた部分もありますが、本当に自分たちの住む町を良くしていこうと考える人たちが、真剣に議論を交わしながら、行動に移すことができた成果であると考えています。現在同地区では、「自律神経を持つまちづくり」をめざして、高齢者福祉、公園の維持管理、トイレの清掃、夜間の防犯パトロールなどボランティア活動も積極的に行われ、自分達の住む地域を、自分達の手で良くしていこうという活動が進められています。
平成11年度に「住民参加のまちづくり」部門で自治大臣表彰という高い評価を頂きましたが、この取り組みを広げ、維持させることへの町の責任が明確になったともいえます。
鹿児島県国分市 ―地域まちづくり支援事業―
国分市では、地域住民が主体となって、地域の特色を生かし、独自の「テーマ」や「目標」を設定し、その実現に向けて、住民がお互いに知恵を出し合い、活力ある個性豊かな地域づくりを進める地区を支援するため、平成9年度から「地域まちづくり支援事業」を実施しています。
この事業は、地区公民館(自治会組織)が主体となり、自分達が住む地域を10年後にどんな地域にしたいのかを地域の皆さんで考えていただき、2年間で「まちづくり計画書(地区ビジョン)」を作成する事業です。
これまでに市内25地区公民館のうち、既に18の地区公民館で計画書の作成が終わり、現在6地区が計画書づくりに取り組んでいます。
この事業を進めるにあたっては、まず地区公民館組織の中に、15人〜25人程度の「まちづくり研究会」(名称は自由)を組織し、研究会をまとめる「まちづくりリーダー」を選出してもらい、このリーダーを中心に「まちづくり計画書」づくりに取り組んでもらっています。
まず、1年目は「地域の現状分析に関する事業」です。これは、地区内の生活環境面から教育文化、土地利用、健康福祉、資源の活用など幅広い観点から、現状を徹底的に調査し、分析する事業です。実際に地図やカメラを持って地区内を調査してもらっています。
2年目は「まちづくり計画書作成に関する事業」となりますが、これは、1年目の現状分析を踏まえ、住民アンケートの結果も盛り込み、将来の夢も描きながら、10年後を目標とした「まちづくり計画書」を作成してもらう事業です。
この事業に対する行政の支援として、1年度1地区10万円の助成、資料や情報の提供などを行うとともに、同じ年度に事業に取り組んでいるリーダーと地区公民館長による「まちづくりリーダー定例会」の開催による情報交換の場を提供しています。
また、計画書作成後の3年目以降は、「まちづくり計画書」の実施段階となりますが、「まちづくり目標」の実現に向けて、住民自らが考え行う、地域の特性を生かした独自のユニークな事業(「住民が行うまちづくり事業」)に対する助成も行っています。この事業は、例えぱ、新たなイベントの創作、伝統行事の復活など、今後その地域の特徴となりえるソフト事業に対しても支援しています。
計画書の中には様々な分野の課題が出てきますが、その解決策については、地域が行うもの、地域と行政が協力して行うもの、行政が行うものに分け、役割分担を明確にしています。また、その解決策は、緊急性のあるものや長期的計画が必要なものなどを考慮して、緊急性のランク付けも盛り込まれています。そうすることにより、行政側でもハード面の整備を計画的にすることができ、住民側では「できることは自分達で・・・」という意識を持つことができます。
地域の皆さんが研究会の中で地域のことを真剣に語り合うことにより、地域の連帯感や愛着が生まれ、研究会以外の人達にも“まちづくり”に対する意識が醸成されつつあり、まさに大きな成果が実を結び始めているのではないかと感じています。
今後は、計画書作成後から5年目での見直し、10年後の第2次まちづくり計画書作成へとつないで、活力ある個性豊かな地域づくりを推し進めています。
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