2 合併後まで継続して取り組むべきこと
合併後まで継続して取り組むべきことは、以下の諸事項です。
(1)中心市街地活性化事業と町の“へそづくり”の推進
中心市街地活性化計画については、本町と合併協議が進んでいる町村はいずれも未策定のままであり、本町のみが策定済みです。しかしながら、本町においては、計画の推進は、端緒が開かれただけの状態であり、事業化への具体的一歩を踏み出しているとはいいがたいままで推移しています。したがって、今後、取組の主体であるTMO(中心市街地整備推進機構)に対する町行政の支援や協力を充実し、その事業推進を期す必要があります。
その推進にあたっては、今後、次の二つのことに留意しなければなりません。一つは、町はあくまでも支援・協力の立場であり、計画の推進は、あくまでもTMO及び各商業振興会などの自主性によるという点です。すなわち、商業面での活性化は、営業意欲のある事業者が自主的に考え取り組むことが本来の筋であることをたえず念頭におくべきです。いま一つは、中心市街地はたんに商業の場にとどまらず、様々な人々の出会い・交流の場でもありますから、その整備推進に関し様々な住民の期待や要望をできるだけ的確に取り入れる工夫と努力が必要となる点です。
なお、合併後の新市の地形や交通条件などを考慮しますと、その計画の対象地区であるJR長坂駅周辺の古くからの中心市街地の活性化に向けての取組と併行し、中央自動車道長坂インターチェンジ近辺に計画的に新たな商業集積を図る検討も試みる必要があります。すなわち、単一の商業核でなく二つの核の整備に取り組むことは、買い物の町外流出への歯止めとしての効果を期待できるだけでなく、住民の利便を高め町の賑わいを取り戻すことにも寄与すると思われます。また、さらに、新市での本町域の拠点性を高めることにもつながると思われます。
(2)施設のネットワーク・有機的連携に関する検討及び具体化
本町には、保育体制・設備及びサービス面できわめてレベルが高い保育所、内外から注目を集めているオオムラサキセンター、多目的利用ができる総合スポーツ公園その他、様々な施設があります。
合併後は、広い地域の中に、生涯学習・文化系、福祉系、スポーツ・レクリエーション系その他様々な目的の類似施設が複数存在することになります。そして、これら管理運営や利用料などについては、合併までに協議がなされ決定されます。
同種の施設が複数存在する状況においては、施設間ネットワーク・連携の充実を図ることがまず大切です。すなわち、例として郷土資料館をあげますと、展示品の交流、特別展の共同企画などを行うことが望ましいと思われます。また、図書館や図書室などについては、施設ごとの蔵書の個性化、貸し出し・検索のネットワーク化、読み聞かせなどのボランティアグループの活躍機会の相互提供などの実施に向けての検討が必要と思われます。
(3)生活交通、日常の買い物などの便利さ確保に向けての検討及び基本方針の確立
本町は路線バスを町営で運行しておりますが、本編第2章でも述べましたように高齢化の進行とともに、自家用車を運転しない(できない)住民がさらに増加すると予想されます。現に本町において路線バスが運行されている集落においても、バス停までの歩行距離に苦痛をおぼえる高齢者が少なくない状況があります。また、合併予定の町村の中には民営の路線バスが運行されているところもありますが、路線廃止のおそれが少なくありません。こうした状況は、高齢者や幼い子どもを持つ母親など日中を町内で過ごすことが多い住民のみでなく、児童・生徒の通学などにも、大きな影響を与えることになります。したがって、住民の足である日常の公共交通の今後のあり方について、住民ニーズ、民間事業者の動向などの把握に努めつつ、新たな対応方針と取組メニューの具体化を図ることが求められております。
そして、同時に、そうした日常の公共交通の課題は、周辺部(郊外)に小売店が少ない現状からして、在宅の高齢者などの日頃の買い物の便利さの低下につながりかねません。このことについても、商工会、農協などとの連携・協力のもと、対応方針と取組メニューの具体化を図る必要があります。なお、他の地域では、その取組に郵便局が参加している例もあります(郵便局員が高齢者から依頼を受けて買い物をし配達するボランティア活動−鳥取県智頭町ほか)。
(4)情報化への対応促進
合併により生まれる新たな市は、面積が広大な地域となります。こうした地域状況に対応して、まとまりのある生活圏を形成していくには、日頃の行政活動において、めざましい発達を遂げつつあるIT(情報通信技術)をできるだけ活用することが望ましいと考えます。
事務の効率化は当然のこととして、先に(2)で述べた施設の管理運営や利用のネットワークの構築及び運用、住民への行政や地域の情報提供、行政に対する住民の期待やニーズの収集・反映(住民参加の拡充及び参加方策の豊富化)、地域情報の域外への発信、地域・地区情報の収集・整理その他、様々な活用可能性が考えられます。
(5)外部委託促進に向けての検討推進
本町のみでなく合併予定各町村とも、財政事情がきわめて厳しいまま推移しています。また、情報機器の保守管理・運用のみでなく、様々な施策展開において、事業実施を民間に任せたほうが好ましいと思われる事例も少なからずあることも否めません。
したがって、たんに財政面での節約や緊縮とか職員の勤務条件の向上などの狭い観点にのみとらわれることなく、サービスの質の向上の観点から外部委託のあり方や具体策について検討を進める必要があります。
(6)“協働”の拡充に向けての町職員による体験活動の豊富化
様々な地域・地区づり活動に自ら意欲的に参加している町職員は多々おりますが、このような実践活動の機会を組織的に創出していくことが今後求められます。例えば、町内外の特別養護老人ホームなどの福祉施設で当該施設の職員とともに業務に従事する、健康づくりや環境整備のボランティア活動に自らも参加する、高齢農家への援農活動に従事するなど、町職員が自ら体験する様々な機会や場を組織的に設ける必要があります。そうしたことの具体化が図られますと、行政による支援・協力や相談・指導などが今以上に的確になりうるとともに、よりいっそう住民から信頼される職員集団・役場組織となりうるものと期待できます。
|