(4)特定非営利法人にっち倶楽部(兵庫県芦屋市)
■法人の概要
代表者 |
久野幸子さん |
所在地 |
兵庫県芦屋市 |
設 立 |
平成11年3月(特定非営利法人化は平成14年4月1日) |
活動方針 |
親の世代、高齢者の人たちに元気になって欲しい、そのためには社会との接点をくってあげること |
事業内容 |
心豊かに・参加する中高年の情報誌「にっち倶楽部」を隔月刊として発行する他、高齢者の方に絡んだイベントの企画・実施などであるが、傾聴ボランティアづくりのための「高齢者や家族などの心のケア勉強会」や、高齢者の出かける場づくりなどにも注力している。なお「にっち」には「じぶんにふさわしい場所」という意味がある。 |
スタッフ |
15〜6名(有償ボランティア1名を除き、全員無償) |
「にっち倶楽部」21号・22号
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(1)設立の経緯
ア 背景
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芦屋市は、1995年1月17日の阪神淡路大震災の中心地だった。 |
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親の世代は、多くの友人や家屋をなくしてしまった人が多い。彼らは震災直後こそ元気だったものの少しずつ元気がなくなっていった。 |
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だから、親の世代、高齢者の人たちに元気になって欲しい、そのためには社会との接点をつくってあげるのが良いのではないかと考えた。また、そこに(将来高齢者となる)私たちにも学ぶべきところがあるはずとも思った。 |
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震災後たくさんのフリーペーパーが出てきたが、どれも字が小さくて高齢者には読めなかったこと、1990年代後半に高齢者向けの雑誌の発刊が相次いだこともあって、高齢者にいま必要なのは情報ではないかと考えるようになった。しかも、全国向けの情報ではなく、高齢者の行動範囲、半径20〜30kmの地域に根ざした情報が求められているのではないかと考えた。 |
イ 設立
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1999年3月、6人の女性でにっち倶楽部を立ち上げた。当初の運転資金は、ひとり10万円を集めて合計60万円だった。 |
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50歳代が中心で、職業構成は、グラフィックデザイナーが1人(編集長)、英語塾勤務が2人、旅行代理店勤務が1人、その他OLが1人、主婦1人であった。 |
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事務所は編集長のデザイン事務所においた。 |
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編集方針として、高齢者に読みやすく、元気の出る情報を載せること、夢のもてるもの、しかし手にとってもらえるもの、といったようなものだった。 |
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こうした編集方針からすると、へんな(安っぽい)紙だと見ない、重たいと持てない、色鮮やかでないと手にとってもらえない。だから良い紙を使って、カラー印刷が多い。 |
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1号に、印刷費の他、取材費など入れると、人件費を除いてもおよそ100万円はかかる。 |
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知り合いの印刷会社に安く受けてもらう努力や、知人の協力で広告を入れてもらう努力をした。 |
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「2、3号出して、支持が得られたら、その先はまた考えよう」ぐらいの気持ちではじめた。 |
(2)事業の概要
ア 生活情報誌『にっち倶楽部」創刊
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1999年7月に、創刊号を出した。部数は1,500部から2,000部の間だったが正確には覚えていない。全部で表紙を含めて24ページのもので、200円だった。 |
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創刊号は、まず手配りし、さらに同窓会名簿を使った「親御さんに」と送るなどして、半分以上無料で配った。 |
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特にプレスリリースなどはしなかったが、大手マスコミには創刊号を送った。朝日新聞に取り上げられて、「ほしい」「こういう雑誌を待っていた」という手紙が来た。 |
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第2号からは、読者への送付や、各種サークルを通じての販売の他、ジュンク堂書店においてもらえるようになった。 |
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なお、元気にしておられる高齢者を紹介する「百歳の肖像」は、創刊号からの人気コーナーである。 |
イ 現在の生活情報誌「にっち倶楽部」
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「にっち倶楽部」は、発刊1周年を迎えた第7号から300円になった。 |
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現在、表紙を含んで48ページと創刊号の倍となり、発刊部数は公称5,000部。定期購読者が1,500部で、全体の2/3が実際に捌けている。 |
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書店には6掛けでおいている(4割が書店のマージン)。 |
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定期購読者にも届けられるところにはスタッフが届けて、郵送費を浮かせている。 |
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こうした努力をして、現在収支はとんとんである。 |
ウ その他の事業
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にっち遠足などのイベントを実施する。 |
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2002年10月には、これまでの編集長のデザイン事務所から、ほど近いマンションの一室に活動拠点を移した。少し広くなったので、出かける場づくりとしてミニサロンを始めた。 |
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傾聴ボランティアづくり(高齢者や家族などの心のケア勉強会)の事務局をつとめる。 |
エ 現在の体制
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スタッフは現在15〜6人。OAに強い1人だけが有償ボランティアで、あとは無償である(取材費は出る)。 |
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有償ボランティアの人は、週に4日来ていて、PageMakerの活用や経理事務を行っている。 |
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無償ボランティアの人も、編集室を留守にすることがないようにするため、当番制で必ず編集室に来る日がある。 |
(3)効果・今後の展開
・当面の3年のうちの目標は、
(1)スタッフを全員有償ボランティアにすること
(2)「にっち倶楽部」の内容を深めること
(3)にっち倶楽部の活動を広げること
(4)次世代を育てること
である。
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年齢バリアフリーの“ふさわしい場所”としての「サロンづくり」をしていきたい。 |
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自分たちが電リク世代と言うこともあって、高齢者を対象にした地域FM局もやってみたいと思うことがある。 |
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課題は、資金のことと、ボランティアでは限界があること。特に後者については「にっち倶楽部」は、“好きなときボランティア”ではできないし、継続的に情熱が必要である。 |
(5)特定非営利法人神戸ルネッサンス倶楽部
■法人の概要
代表者 |
山本郁夫(音楽家・指揮者) |
所在地 |
兵庫県神戸市灘区 |
設 立 |
平成14年12月2日(特定非営利法人承認) |
経営方針 |
市民が手を取り合って「からだと心の復興」を取り戻すために、地域および市民活動をサポートすることを目的としている。 |
事業内容 |
市民ネットワーク推進事業、音楽による「まちづくり」プラン作成、音楽家および音楽教育者の支援と育成、アマデウス合唱団・児童合奏団の運営、CD制作・楽譜等の出版制作など |
(1)設立の経緯
ア 取り組みのきっかけ
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1998年に始まった「阪神淡路大震災被害者支援コンサート」における実行委員会が神戸ルネサンスの原型となっている。 |
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コンサートは1998年から毎年行われており、2001年には「神戸21世紀復興記念コンサート」と改名し現在に至っている。 |
イ 目的
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市民が手を取り合って「からだと心の復興」を取り戻すために、地域および市民活動をサポートすること。 |
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神戸ルネッサンス倶楽部にとって「コミュニティ」とは、コンサートなどの拠点となる各地域であり、そこで生まれる人と人とのつながりを大切にしている。また、学校と地域の結びつきを丁寧に作っていくことにより、世代を超えての交流を深め・子供から高齢者まで幅広い人間関係を築くためのアイデアを提供し、参加型の活動機会を作っている。 |
(2)各事業の概要
ア 音楽による「まちづくり」プラン作成
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音楽会、講演会などの企画提供、演奏家および音楽教育者を派遣し、文化に触れながら「まちづくり」により心の豊かさを追求している。 |
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参加型音楽会「灘の楽芸会」として、アマチュアからプロまで自由参加で個人演奏のコンサートを実施している。 |
イ 市民ネットワーク推進事業
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市民の手による「神戸ルネサンス倶楽部」への企画運営を促しながら、他の市民活動団体や学校教育現場とのネットワーク構築を推進している。 |
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会員を募集し、年間を通じて企画講演などへの参加を促している。 |
ウ 音楽家および音楽教育者の支援と育成
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音楽家の資質に合わせたコンサート内容のコーディネイト、チラシやパンフレットの制作、コンサート運営のためのマネジメント業務の遂行、音楽教育者への教育プランの提供などを行っている。とりわけ学校教育の新しい方向性を担う先生方へのアプローチを積極的に進めている。 |
エ アマデウス(市民)合唱団、児童合唱団の運営
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お母さんと子供のためのコンサート、市民音楽祭などの演奏および企画運営の中核となる市民合唱団の育成を行っている。 |
i)神戸アマデウス合唱団
2001年4月に開催された「神戸21世紀復興コンサート2001」に参加したメンバーによって再結成され、現在80名規模で構成され、市民音楽祭の中核として、また「お母さんと子供にやさしいコンサート」の企画運営を行っている。
ii)東京アマデウス合唱団
2002年3月に「三宅島アカコッコ合唱団」を設立したことをきっかけに品川区・大田区・港区を中心に、市民合唱団を組織し、神戸と首都圏を結んでの市民交流を図っている。
オ 音楽CD制作・楽譜などの出版制作
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音楽会のライブCDを参加者などに販売している。また、独自の音楽教材の作成にも取り組んでいる。 |
(3)効果・今後の展開
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「コミュニティ」と「ビジネス」の優先順位として、「コミュニティ」の部分では成功しつつあるが、「ビジネス」については、音楽という形のない素材を使っての必要性においての社会的認知の低さが、経営的に課題として残されている。「コミュニティビジネス」については、「こうあるべきだ」という基準がないので、常にパイオニア精神を持って、「コミュニティビジネス」のあり方を探っている状況である。 |
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これまでの活動を通して作り上げた実績を土台に、地域ぐるみで教育の大切さを再認識することにも取り組んでいく。 |
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