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はじめに
1 本研究の趣旨
 平成12(2000)年4月の「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(地方分権一括法)施行以来、地方分権の推進に向けた動きがより活溌になってきた。経済財政諮問会議では、国と地方の関係について、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方を三位一体で改革するべきであるとの方針を打ち出し、平成14(2002)年6月に「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」として閣議決定された。また、同時期に「事務・事業の在り方に関する中間報告」を公表した地方分権改革推進会議は、内閣総理大臣から三位一体の改革につながる国と地方の事務事業の在り方に関する原案を作成するよう指示を受け、最終報告として「事務・事業の在り方に関する意見」を同年10月とりまとめた。
 これらは、国の関与を縮小し地方の権限と責任を拡大しようとするものであり、今後、地域における行政を自主的かつ総合的に担うべき地方公共団体の役割はますます重要なものとして位置づけられていく。
 一方、我が国においては、急速な少子・高齢化の進行への対応、社会的弱者の社会参画へ向けた施策の推進、医療をとりまく状況の変化など、様々な分野で構造的な変化が進行している。こうした変化に伴い、自治体の情報化等のIT政策、高齢者医療対策、医療制度改革など、地方公共団体が対応すべき政策課題は山積し、年々複雑化しており、独自に対応することは、財政的にも、事務効率的にも、安定性を欠くものとならざるを得ない状況となっている。さらに、社会の変化に伴うこうした政策課題に対しては、十分な分析がなされているとは言い難い面もある。
 そこで、本研究は、このような社会の動きを踏まえ、構造改革に対応した地方公共団体が果たすべき役割について考察を行うものである。
 なお、本研究会では、委員長のご発案で委員の役職や肩書きに関係なく、個人的見解を基に自由闊達に議論するという運営を行っており、本報告書も委員会でのこの自由な議論の結果を出来るだけ尊重し、反映した形でまとめるよう努力している。
 
2 本報告書の構成
 本報告書では、まず、第1部において、構造改革に伴う積極的な対応が求められる行政サービスを取り上げ、分野ごとに施策の分析を行う。
 第1章では、情報弱者に対する情報バリアフリー対策として、e-democracyの現状と課題について考察し、併せて電子自治体の実績と今後の展望について分析する。
 第2章では、高齢化社会に進展に対応した医療・福祉対策の一例として、介護サービスの現状と自治体の役割について考察する。
 第3章では、医療制度改革について、現状と問題を分析し、今後の改革の方向性を探る。
 第2部においては、国と地方公共団体の在り方について取り上げる。
 第1章では、構造改革に対応した国と地方の役割分担の明確化やあるべき地方公共団体の姿について考察する。
 第2章では、地方財政の現状を探るべく、地方交付税についての論点と財政危機下における地方自治体の政策過程について分析を行う。







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