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マンガ・アニメの歴史と現状
森川友義(早稲田大学国際部助教授)
早稲田大学政治経済学部卒。オレゴン大学で政治学博士号を取得後、国連専門機関(UNDP、UNRFNRE、IFAD)、アイダホ州立ルイス・クラーク大学助教授、オレゴン大学客員准教授を経て、現職。
 
 森川―今日の講義は『マンガとアニメの歴史と現状』と題してお話しします。三部構成で進めていきます。(1)マンガ、(2)テレビアニメ、そして(3)劇場アニメです。
 
■マンガ
 まず、マンガです。日本におけるマンガビジネスの全般的状況についてお話しします。皆さんは、日本に留学してから既に一度くらいは書店に行ったことがあると思います。書店の入口には多くの雑誌が並んでいるのを見たでしょう。そこで質問しますが、日本では何種類の週刊誌・月刊誌などの雑誌が発行されているか知っていますか? 週刊、月刊、マンガ以外もすべて含めた数です。
 
 学生―1,500。
 
 森川―それは少し多すぎますね。
 
 学生―200。
 
 森川―正解は428です。昨年日本で発行された週刊誌と月刊誌の総数です。
 その内訳を言いますと、「アンアン」や「ノンノ」といった一般誌は158種類あります。専門雑誌となると、ビジネスや金融関連が16、スポーツ雑誌が22、芸術や科学関連が6などとなっていて、合計216誌あります。
 マンガ誌は54あります。ティーンエイジャー向けのマンガ誌は、少年向けが8誌、少女向けが13誌、男女を特に限定しないものが15誌あります。大人向けのマンガ誌は14誌、女性専用誌が4誌あります。合計で54です。
 それでは2つ目の質問です。それら428の雑誌のうちで、どの雑誌が一番発行部数が多いでしょう?トップ5はどれでしょうか?
 答えはすべてマンガ誌なのです。第5位は「リボン」です。ティーンエイジャーの少女向けで、発行部数は毎週135万部です。月刊と週刊がありますが、週刊バージョンの「リボン」です。
 第4位は「ヤングジャンプ」です。ヤングアダルト向けです。昨年の発行部数は145万部でした。
 トップ3に入る前に参考までにその他の人気雑誌を言うと「月刊少年マガジン」という雑誌が110万部、「月刊コロコロコミック」は毎月120万部発行されています。「ヤングマガジン」という雑誌は129万部です。唯一マンガでないのが、「週刊テレビガイド」で130万部です。第6位が「ビッグコミックオリジナル」です。これはヤングアダルト向けで133万部、そしてさきほどの「リボン」が第5位で135万部です。第4位が「ヤングジャンプ」で145万部です。
 さて、ここからトップ3ですが、どれか分かりますか?第3位は「少年サンデー」で発行部数は153万部です。第2位は「少年ジャンプ」です。発行部数は350万部に跳ね上がります。『ワンピース』などのマンガが載っています。
 日本で発行部数第1位の雑誌は「少年マガジン」で364万部です。月刊ではなくて1週間当たりの数字がこれです。驚きではありませんか?この3誌は発行部数がもっとも多く、長い間トップ3を維持しています。「マガジン」、「ジャンプ」、「サンデー」というトップ3を合わせますと、毎週867万部を売っています。年間の数字にしますと、52週ありますので、1年当たり4億5千万部になります。すべて一冊220円で、約2ドルです。安いので小さな子供でもお小遣いで買えるわけです。これがマンガの実態です。
 販売部数が多いわけですから、人気漫画家になると、たくさんもうけます。今、一番稼いでいる漫画家は誰だか知っていますか?『犬夜叉』の作者の高橋留美子という漫画家です。これは昨年の収入ですが、日本人1億2600万人の中で、彼女は300番目にお金持ちです。推定で6億円の収入がありました。ですから、皆さんもお金持ちになりたければ、漫画家になってください(笑)。
 日本で2番目にお金持ちの漫画家は、『名探偵コナン』の作者、青山剛昌です。『名探偵コナン』のプロデューサーは私の友人ですが、彼の話では、作者は毎日とても忙しく、約20時間働いているそうです。青山さんは30代半ばですが、余りに多忙なため、独身です。それで推定年収4億円という大変なお金持ちです。
 皆さんも勉強をしてマンガを描いてください。そうすれば、お金持ちになれます。漫画家になるには、次のようにすればいいのです。新作マンガに与えられる賞があります。自分のマンガを送って応募します。受賞すればあなたの作品がマンガ誌に掲載されます。人気が出れば連載になり、(『名探偵コナン』のコミック版を見せながら)このようなコミック本が出版されます。その頃には大金持ちになっているでしょう。
 このマンガ・アニメ講座では期末試験としてマンガを書くプロジェクトを課していますが、是非頑張って素晴らしい作品を描いてください。有名漫画家への登竜門のつもりで。
 ここまでが日本におけるマンガの全般的な状況です。詳しいことはゲストを迎えて講演していただくことになっていますので、彼らに具体的な質問をしてください。
 
■テレビアニメ
 それでは、テレビアニメに話を移したいと思います。講義資料集の中の「週刊テレビアニメ番組表」を見てください。2ぺージあります。「週刊テレビアニメ番組表」、これが現在日本で放送中のテレビアニメ番組です。例えば、日曜日には10本くらいあります。午後6時〜8時がゴールデンアワーです。ご覧のように『ちびまる子ちゃん』から始まって『サザエさん』、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、『ワンピース』と続きます。日曜日の朝も子供にとってのゴールデンアワーです。『デジモン』などもあります。ですから、日曜日は朝から夜まで子供にとってとても楽しみな日になっています。
 月曜日の重要な番組は、日本テレビの『犬夜叉』と『名探偵コナン』、テレビ東京の『ベイブレード』と『ロックマンエグゼ』です。
 火曜日は、『ポケモン』のアンコール、つまり再放送があります。また、『遊戯王デュエルモンスターズ』もとても人気があります。
 水曜日には『ヒカルの碁』がありますが、これは少年棋士の話です。
 木曜日は『ポケモン』があります。人気が高い番組です。
 金曜日は『ドラえもん』、『ハム太郎』がとても人気があります。
 土曜日は朝に『星のカービィ』があり、夜には『クレヨンしんちゃん』もあります。
 皆さんは、どれが好きですか。手を挙げてください。好きなテレビアニメをひとつ選んでください。『デジモン』が1人、『ちびまる子ちゃん』1人、『サザエさん』1人、『こち亀』1人、『ワンピース』1人、『セーラームーン』1人。『クラッシュギア』・・・『おジャ魔女』・・・だれもいませんね。『犬夜叉』4人、『名探偵コナン』5人、『ベイブレード』2人。
 『ロックマンエグゼ』なし、『ヒカルの碁』4人、『ポケモン』1人、『アンパンマン』1人、『ドラえもん』4人、『ハム太郎』1人、『星のカービィ』なし、『クレヨンしんちゃん』5人。そうですか。他にありますか?
 
 学生―『.hack』
 
 森川―夜の番組ですね。
 
 学生―『NARUTO』
 
 森川―『NARUTO』ですか?何曜日ですか?
 
 学生―今週始まった番組です。木曜日です。
 
 森川―新番組ですね。すみません。この番組表は少し古いものです。毎年、春と秋に人気のない番組が新番組と替わりますので、この教材を作った時は9月ですので古い番組表になっています。
 さて挙手をしてもらった結果、このクラスでは『名探偵コナン』と『クレヨンしんちゃん』が一番人気ということになります。5票集めました。『名探偵コナン』のプロデューサーは私の友人ですので、興味があれば、いつかスタジオ訪問をやりましょう。
 ところで、テレビ番組の中には、長年続いている長寿番組もあります。どれだか分かりますか? 第10位から5位までは次の通りです。第10位は『こち亀』で、皆さんのお気に入りです。1996年6月16日が放送開始で、現在まで6年間続いています。
 皆さんの好きな『名探偵コナン』は、1996年1月8日に放送が始まり、これも現在まで6年間続いています。
 『一休さん』・・・あのお寺の小僧さんを知っていますか? 1975年10月に始まり1982年6月まで放送されました。この番組も6年間続きました。
 『キテレツ大百科』は1988年に始まり1996年まで8年間続きました。
 『しましまとらのしまじろう』は1993年の開始以来、現在まで続いています。
 以上が第10位から6位までです。第5位はどの番組でしょうか?
 
 学生―『ドラゴンボール』ですか。
 
 森川―『ドラゴンボール』は約5年半放送されました。正解は『クレヨンしんちゃん』です。1992年の放送開始以来、現在まで10年間続いています。
 それでは、第4位はどうでしょうか?
 
 学生―『キャプテン翼』。
 
 森川―正解は『ちびまる子ちゃん』です。放送開始は1990年1月で、現在まで続いています。そして第3位は『アンパンマン』です。放送開始は1988年でした。それでは第2位と第1位はどの番組でしょうか?
 
 学生―『ドラえもん』。
 
 森川―正解です。『ドラえもん』が第2位です。1979年4月2日に始まり現在まで23年以上続いています。それでは第1位は?
 
 学生―『サザエさん』。
 
 森川―そうです。第1位は『サザエさん』です。1969年10月5日の放送開始以来、現在まで続いています。33年間も続いているという超長寿番組です。『サザエさん』のようにこれだけ長いと、声優の交代があって大論争になったりします。
 それから皆さんは「サザエさん症候群」というのを知っていますか?『サザエさん』は日曜の午後6時半の放送ですが、その頃には空が暗くなってきて、月曜が間近に迫っていると感じます。月曜日の朝はいつもブルーですね。そのブルーな気分は『サザエさん』の主題歌から始まるのです(笑)。これを「サザエさん症候群」と言います。皆さんはサラリーマンではないし、大学での勉強が大好きですので、「サザエさん症候群」にかからなくてもすみますね。私も大学が大好きですので、「サザエさん症候群」にかかりません(笑)。
 長寿番組なら必ず視聴率が高いというわけではありませんが、ある程度はそう言うこともできます。現在、視聴率で一番の人気テレビ番組はどれでしょうか? トップ10は『テニスの王子様』が9.1%、『おジャ魔女』9.3%、『ドラえもん』10.6%。10%を超えればまあまあと言えます。そして『ちびまる子ちゃん』が11.9%、『こち亀』が12.3%。
 ベスト5はどれでしょうか? 視聴率は接戦になっています。第5位が『ワンピース』で12.6%、第4位が金曜放送の『あたしンち』で12.7%です。第3位は『犬夜叉』で視聴率13.8%。第2位は『名探偵コナン』17.3%、そして視聴率第1位は18%で、また『サザエさん』です。
 
 学生―その数字は何を意味しているのですか?
 
 森川―日本に住む2,000世帯を調べた数字です。18%の世帯が見ているという意味です。
 
 学生―テレビのアニメ番組中第1位ということですか?それともテレビの全番組中第1位ということですか?
 
 森川―現在放送中のアニメ番組だけです。通常、上位を占めるのは、野球中継や、2時間のサスペンスドラマです。そういった番組が日本では高視聴率を獲得しているようです。もうすぐ野球の日本シリーズが始まりますので、その中継は高視聴率になるはずです。そして、もちろんサッカーです。ワールドカップが日本で開催されましたので、最近視聴率が高くなっています。
 1977年以来のアニメ番組の高視聴率記録はどうでしょうか? 視聴率の歴代最高記録です。高視聴率第10位は『ゲゲゲの鬼太郎』です。1986年3月22日に、視聴率29.6%を記録しています。次が『ドラえもん』で1983年の31.2%、その次が『明日のジョー』です・・・皆さんは『明日のジョー』を読んだことがありますか?・・・31.6%です。その次が、野球アニメ『タッチ』の最終回です。そして、『ルパン三世』の最終回で32.5%です。『まんが日本昔ばなし』・・・皆さん聞いたことがありますか?・・・視聴率は33.6%。第4位は『ど根性ガエル』です(34.5%)。『ど根性ガエル』の声優野沢雅子さんにも来ていただく予定です。番組について話をしていただけるはずです。そして第3位は、1981年の『Dr.SLUMP』で、視聴率は36.9%でした。第2位は、同じ番組が1979年9月16日に記録した39.4%です。高視聴率記録第1位は1990年10月28日の『ちびまる子ちゃん』です。実に39.9%でした。
 これもアニメ番組だけを対象にした数字です。ちなみに1950年代や60年代の前半ではテレビの最高視聴率は80〜90%くらいもありました。当時もっとも視聴率が高かったのはプロレス、相撲そして野球です。







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