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小笠原の自然について
東洋のガラパゴス
 小笠原諸島はこれまで一度も大陸と地続きになったことのない孤島(ことう)です。このような島は広い海が障害(しょうがい)となって、生物、とくに陸上生物の行き来が限られることから、風や海流、鳥などによって、偶然(ぐうぜん)に運ばれてきた生物の一部が島の生活に適応(てきおう)しながら、数百万年たつうちにその島でしか見ることのできない種類に進化することがあります。小笠原にはそうした小笠原でしか見られない独特(どくとく)な進化をとげた動植物の多いのが特徴(とくちょう)で、ダーウィンの進化論(しんかろん)で有名なガラパゴス諸島と似ていることから、「東洋のガラパゴス」と呼ばれることもあります。
 
母島南崎
 
小笠原の森
 
小笠原の植物
 小笠原群島に自生(じせい)している植物は約300種ともいわれ、タコの足のような根を幹(みき)の途中(とちゅう)から生やしているタコノキやムニンノボタン、ムニンツバキなど、約40%が小笠原でしか見られない種類です。小笠原の林を大まかに分けると、土が浅く乾いた(かわいた)ところにはシマホルトノキやウドノキ、アカテツが多く、土が深く水分に恵まれたところではシマイスノキ、コバノアカテツ、タコノキなどが見られます。
 小笠原の自生植物は、生息(せいそく)環境の開発、人が持ち込んだ動物による食害、人が持ち込んだ植物との競合(きょうごう)や、盗掘(とうくつ)などによってその生存がおびやかされているものがいます。
 
タコノキ
 
陸の動物
 小笠原群島に住んでいる動物をみると、小笠原にもともと住んでいたのは、ほ乳類ではオガサワラオオコウモリだけ、は虫類もオガサワラトカゲだけで両生類(りょうせいるい)はいませんでした。鳥類は150種類が記録されています。陸鳥ではメジロやハシナガウグイス、オガサワラノスリ、メグロ(現在では母島列島にのみ生息)、海鳥ではクロアシアホウドリやコアホウドリ、カツオドリなどが見られます。こん虫類は800種、陸上の貝類は100種ほどが知られていて、小笠原にしか生息していないものの割合が高いのが特徴(とくちょう)です。
 
クロアシアホウドリ
 
メグロ
 
 今ではネズミや、野生化したヤギやネコ、緑色の体をしたアノールトカゲ、オオヒキガエルなどが見られますが、これは人があとから持ち込んだものです。生息環境の開発や人が持ち込んだ動物が小笠原にもともと住んでいた動植物を捕食(ほしょく)したり、その生息場所が競合(きょうごう)することで、競争力の弱い小笠原固有の動物たちのなかには絶滅(ぜつめつ)してしまったもの、絶滅の危機(きき)にひんしているものがいます。
 
オガサワラオオコウモリ
 
海の動物
 海に目をやると夏にはアオウミガメが産卵のために回遊(かいゆう)してきます。小笠原は日本国内で最大のアオウミガメの繁殖地(はんしょくち)となっています。魚類も豊富で、沿岸域(えんがんいき)だけで800種もの魚がいます。マンタ(オニイトマキエイ)やジンベイザメが見られることもあります。クジラやイルカの仲間もいます。
 
ウミガメの産卵
 
父島二見港のエダサンゴ
 
小笠原の魚やサンゴ







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