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3)動物プランクトン
 表II.3.3-5及び図II.3.3-5には、小型装置の動物プランクトン主要分類群と全体に対する基本損傷効果を示した。
 なお、第1回実験において実際に2pass処理を行った結果、1pass処理単独での損傷率と同じ損傷率が2pass時にも得られた。したがって、複数回の処理で得られる処理効果は1pass処理単独で得られる効果の反復法で近似できると考えてよい。したがって、第2回〜第5回実験においては、1pass損傷率の反復法の近似値を2pass損傷率として表示した。
 以下には、各分類群及び全動物プランクトンに対する損傷効果について述べる。なお、分類群の中には、各実験回での出現個体数及び損傷率に大きな変動が認められ、自然海域における分布量の変動の大きさと、種類による損傷のし易さが異なることを表している。
 動物プランクトンの中では小型で、20μm未満の種類が多い多膜類繊毛虫類は、5回の実験の平均損傷率では大きいサイズほど高く、50μm以上では1passで100%に達し、20μmm以上や全サイズの合計では2passで90%前後である。
 輪虫類についても大きいサイズほど損傷率が高く、2pass損傷率は50μm以上で約90%、20μm以上(20μm未満は出現せず。)で67.5%である。
 多毛類(ゴカイの仲間の浮遊幼生)は、すべてのサイズ(20μm未満は出現せず。)において1passで95%前後、2passで約99%と高い損傷率を記録した。
 二枚貝(浮遊幼生)は、全般的に損傷率が低く、全サイズ(20μm未満は出現せず。)の合計の2passで70%、50μm以上では30%にとどまっている。このように低い損傷率を記録したのは、二枚貝が二枚の石灰質の殻を持ち、外的刺激を受けると殻を閉じて肉質部を保護するためと考えられる。
 最も主要な分類群で出現数の変動も比較的少ないカイアシ類の損傷率は、他の生物群よりも高レベルで安定している。5回の平均では、すべてのサイズの1passで80%以上を記録し、2passでは95%以上となっている。
 蔓脚類(フジツボの仲間の浮遊幼生)は、100μm以上の大型個体の損傷率が低く、100μm未満50μm以上の個体は比較的高い値となっている。5回の平均では、100μm以上が2Passで70%弱、100μm未満50μm以上で90%となっている。
 これら分類群を総合した全動物プランクトンの損傷率は、2passですべてのサイズが90%を超え、全体では約99%と高い値となった。各分類群でばらつきが認められた中で、このような高い損傷率が得られたのは、すべての海域において常時出現数が多い多膜類繊毛虫やカイアシ類の終生プランクトン生活者に対する損傷率が高いためである。一方で、二枚貝類をはじめ本来(成体が)底生・付着性の生物の浮遊期幼生に対しては効果が低い傾向が認められた。これら分類群は、卵や幼生など一生のうちの一時期をプランクトン(浮遊生物)として生活するものであり、常時分布するわけではない。出現数もカイアシ類等の終生プランクトンに比べて少ない。したがって、これら分類群に対する損傷効果が低いことは大きな問題とはならないと考えられる。しかし、今後のより一層の効果を得る必要がある場合には、これら一時的に出現し、かつ損傷効果が低い生物に対しても安定的に高い効果が得られるように改良する必要がある。
 
表II.3.10-5 小型装置の動物プランクトンに対する基本損傷効果(1)多膜類繊毛虫類
スリット部流速:29.98〜30.48m/s 圧損:446.3〜448.5kPa
単位:inds/L
    パイプ処理前 1pass処理直後 2pass処理直後 1pass損傷率(%) 2pass損傷率(%)
第1回実験 ≧100μm <0.1 <0.1 <0.1    
≧50μm 2.41 <0.1 <0.1 <0.1 100.00
≧20μm 8.92 2.00 <0.1 77.59 100.00
total 1086.92 2.00 <0.1 99.82 100.00
第2回実験 ≧100μm <0.1 <0.1      
≧50μm <0.1 <0.1      
≧20μm 221.54 4.00   98.19 99.97
total 6689.54 4.00   99.94 100.00
第3回実験 ≧100μm <0.1 <0.1      
≧50μm <0.1 <0.1      
≧20μm 6.52 4.00   38.61 62.32
total 6.52 4.00   38.61 62.32
第4回実験 ≧100μm <0.1 <0.1      
≧50μm <0.1 <0.1      
≧20μm 104.26 <0.1   100.00 100.00
total 104.26 <0.1   100.00 100.00
第5回実験 ≧100μm <0.1 <0.1      
≧50μm <0.1 <0.1      
≧20μm 81.45 35.00   57.03 81.53
total 1159.45 35.00   96.98 99.91
平均 ≧100μm    
≧50μm 100.00 100.00
≧20μm 74.28 88.76
total 87.07 92.44
注)空白: 分析せずあるいは算出対象外、第2〜5回の2pass損傷率(イタリック、下線表示)は1pass損傷率×2回の推算値
<0.1:検出限界以下、損傷率算出時は0として計算
 
表II.3.10-5 小型装置の動物プランクトンに対する基本損傷効果(2)輪虫類
スリット部流速:29.98〜30.48m/s 圧損:446.3〜448.5kPa
単位:inds/L
    パイプ処理前 1pass処理直後 2pass処理直後 1pass損傷率(%) 2pass損傷率(%)
第1回実験 ≧100μm <0.1 <0.1 <0.1    
≧50μm 4.00 1.00 0.50 75.00 87.50
≧20μm 8.00 2.00 1.00 75.00 87.50
total 8.00 2.00 1.00 75.00 87.50
第2回実験 ≧100μm <0.1 <0.1      
≧50μm 0.50 0.25   50.00 75.00
≧20μm 2.50 2.25   10.00 19.00
total 2.50 2.25   10.00 19.00
第3回実験 ≧100μm <0.1 <0.1      
≧50μm 1.00 0.25   75.00 93.75
≧20μm 1.00 0.25   75.00 93.75
total 1.00 0.25   75.00 93.75
第4回実験 ≧100μm <0.1 <0.1      
≧50μm <0.1 <0.1      
≧20μm 6.00 <0.1   100.00 100.00
total 6.00 <0.1   100.00 100.00
第5回実験 ≧100μm <0.1 <0.1      
≧50μm <0.1 <0.1   100.00 100.00
≧20μm 10.1 8.00   20.79 37.26
total 10.1 8.00   20.79 37.26
平均 ≧100μm    
≧50μm 75.00 89.06
≧20μm 56.16 67.50
total 56.16 67.50
注)空白: 分析せずあるいは算出対象外、第2〜5回の2pass損傷率(イタリック、下線表示)は1pass損傷率×2回の推算値
<0.1:検出限界以下、損傷率算出時は0として計算
 
表II.3.10-5 小型装置の動物プランクトンに対する基本損傷効果(3)多毛類
スリット部流速:29.98〜30.48m/s 圧損:446.3〜448.5kPa
単位:inds/L
    パイプ処理前 1pass処理直後 2pass処理直後 1pass損傷率(%) 2pass損傷率(%)
第1回実験 ≧100μm <0.1 <0.1 <0.1    
≧50μm 1.46 <0.1 <0.1 100.00 100.00
≧20μm 1.46 <0.1 <0.1 100.00 100.00
total 1.46 <0.1 <0.1 100.00 100.00
第2回実験 ≧100μm 0.48 <0.1   100.00 100.00
≧50μm 0.48 <0.1   100.00 100.00
≧20μm 24.06 2.00   91.69 99.31
total 24.06 2.00   91.69 99.31
第3回実験 ≧100μm 0.48 <0.1   100.00 100.00
≧50μm 0.84 <0.1   100.00 100.00
≧20μm 0.84 <0.1   100.00 100.00
total 0.84 <0.1   100.00 100.00
第4回実験 ≧100μm 0.38 0.1   73.75 93.11
≧50μm 0.96 0.1   89.63 98.92
≧20μm 0.96 0.1   89.63 98.92
total 0.96 0.1   89.63 98.92
第5回実験 ≧100μm 0.38 <0.1   100.00 100.00
≧50μm 1.69 0.2   88.19 98.60
≧20μm 16.43 2.2   86.61 98.21
total 16.43 2.2   86.61 98.21
平均 ≧100μm 93.44 98.28
≧50μm 95.56 99.51
≧20μm 93.59 99.29
total 93.59 99.29
注)空白: 分析せずあるいは算出対象外、第2〜5回の2pass損傷率(イタリック、下線表示)は1pass損傷率×2回の推算値
<0.1:検出限界以下、損傷率算出時は0として計算
 
表II.3.10-5 小型装置の動物プランクトンに対する基本損傷効果(4)二枚貝類
スリット部流速:29.98〜30.48m/s 圧損:446.3〜448.5kPa
単位:inds/L
    パイプ処理前 1pass処理直後 2pass処理直後 1pass損傷率(%) 2pass損傷率(%)
第1回実験 ≧100μm 2.24 <0.1 <0.1 100.00 100.00
≧50μm 5.24 3.00 2.5 42.76 52.30
≧20μm 8.49 3.00 2.5 64.68 70.56
total 8.49 3.00 2.5 64.68 70.56
第2回実験 ≧100μm 0.75 0.50   33.07 55.20
≧50μm 2.50 2.25   9.89 18.81
≧20μm 2.50 2.25   9.89 18.81
total 2.50 2.25   9.89 18.81
第3回実験 ≧100μm <0.1 <0.1      
≧50μm 0.75 0.75   0.00 0.00
≧20μm 65.79 0.75   98.86 99.99
total 65.79 0.75   98.86 99.99
第4回実験 ≧100μm 0.30 0.10   66.53 88.80
≧50μm 3.30 2.90   12.09 22.72
≧20μm 9.80 2.90   70.42 91.25
total 9.80 2.90   70.42 91.25
第5回実験 ≧100μm 0.75 0.60   19.68 35.48
≧50μm 5.05 3.40   32.63 54.62
≧20μm 24.56 13.40   45.44 70.23
total 24.56 13.40   45.44 70.23
平均 ≧100μm 54.82 69.87
≧50μm 19.47 29.69
≧20μm 57.86 70.17
total 57.86 70.17
注)空白: 分析せずあるいは算出対象外、第2〜5回の2pass損傷率(イタリック、下線表示)は1pass損傷率×2回の推算値
<0.1:検出限界以下、損傷率算出時は0として計算
 
表II.3.10-5 小型装置の動物プランクトンに対する基本損傷効果(5)カイアシ類
スリット部流速:29.98〜30.48m/s 圧損:446.3〜448.5kPa
単位:inds/L
    パイプ処理前 1pass処理直後 2pass処理直後 1pass損傷率(%) 2pass損傷率(%)
第1回実験 ≧100μm 11.87 0.50 0.50 95.79 95.79
≧50μm 28.37 2.00 1.50 92.95 94.71
≧20μm 86.72 2.00 1.50 97.69 98.27
total 86.72 2.00 1.50 97.69 98.27
第2回実験 ≧100μm 10.12 <0.1   100.00 100.00
≧50μm 55.87 7.25   87.02 98.32
≧20μm 63.65 14.25   77.61 94.99
total 63.65 14.25   77.61 94.99
第3回実験 ≧100μm 3.49 1.25   64.18 87.17
≧50μm 46.24 11.65   74.81 93.65
≧20μm 139.6 25.65   81.63 96.62
total 139.6 25.65   81.63 96.62
第4回実験 ≧100μm 9.21 0.70   92.40 99.42
≧50μm 36.61 6.30   82.79 97.04
≧20μm 129.97 6.30   95.15 99.77
total 129.97 6.30   95.15 99.77
第5回実験 ≧100μm 8.79 0.80   90.90 99.17
≧50μm 49.19 14.20   71.14 91.67
≧20μm 259.25 36.20   86.04 98.05
total 259.25 36.20   86.04 98.05
平均 ≧100μm 88.66 96.31
≧50μm 81.74 95.08
≧20μm 87.62 97.54
total 87.62 97.54
注)空白: 分析せずあるいは算出対象外、第2〜5回の2pass損傷率(イタリック、下線表示)は1pass損傷率×2回の推算値
<0.1:検出限界以下、損傷率算出時は0として計算
 
表II.3.10-5 小型装置の動物プランクトンに対する基本損傷効果(6)曼脚類(フジツボ)
スリット部流速:29.98〜30.48m/s 圧損:446.3〜448.5kPa
単位:inds/L
    パイプ処理前 1pass処理直後 2pass処理直後 1pass損傷率(%) 2pass損傷率(%)
第1回実験 ≧100μm 3.50 2.50 2.00 28.57 42.86
≧50μm 12.63 2.50 2.00 80.20 84.16
≧20μm 12.63 2.50 2.00 80.20 84.16
total 12.63 2.50 2.00 80.20 84.16
第2回実験 ≧100μm 53.85 2.00   96.29 99.86
≧50μm 58.42 2.00   96.58 99.88
≧20μm 58.42 2.00   96.58 99.88
total 58.42 2.00   96.58 99.88
第3回実験 ≧100μm 3.50 1.75   50.00 75.00
≧50μm 8.06 1.75   78.30 95.29
≧20μm 8.06 1.75   78.30 95.29
total 8.06 1.75   78.30 95.29
第4回実験 ≧100μm 5.30 4.10   22.64 40.16
≧50μm 8.95 4.50   49.73 74.73
≧20μm 8.95 4.50   49.73 74.73
total 8.95 4.50   49.73 74.73
第5回実験 ≧100μm 5.30 2.00   62.26 85.76
≧50μm 12.60 2.00   84.13 97.48
≧20μm 12.60 2.00   84.13 97.48
total 12.60 2.00   84.13 97.48
平均 ≧100μm 51.95 68.73
≧50μm 77.79 90.31
≧20μm 77.79 90.31
total 77.79 90.31
注)空白: 分析せずあるいは算出対象外、第2〜5回の2pass損傷率(イタリック、下線表示)は1pass損傷率×2回の推算値
<0.1:検出限界以下、損傷率算出時は0として計算
 
表II.3.10-5 小型装置の動物プランクトンに対する基本損傷効果(7)全動物プランクトン
スリット部流速:29.98〜30.48m/s 圧損:446.3〜448.5kPa
単位:inds/L
    パイプ処理前 1pass処理直後 2pass処理直後 1pass損傷率(%) 2pass損傷率(%)
第1回実験 ≧100μm 17.61 3.00 2.50 82.96 85.80
≧50μm 56.10 8.50 6.50 84.85 88.41
≧20μm 128.22 11.50 7.00 91.03 94.54
total 1206.22 11.50 7.00 99.05 99.42
第2回実験 ≧100μm 65.45 2.50   96.18 99.85
≧50μm 118.01 11.75   90.04 99.01
≧20μm 380.92 28.75   92.45 99.43
total 6848.92 28.75   99.58 100.00
第3回実験 ≧100μm 7.47 3.00   59.82 83.86
≧50μm 56.90 14.40   74.69 93.59
≧20μm 223.81 32.40   85.52 97.90
total 223.81 32.40   85.52 97.90
第4回実験 ≧100μm 15.19 5.00   67.09 89.17
≧50μm 49.83 13.80   72.30 92.33
≧20μm 261.95 15.80   93.97 99.64
total 261.95 15.80   93.97 99.64
第5回実験 ≧100μm 15.22 3.40   77.67 95.01
≧50μm 68.64 19.80   71.15 91.68
≧20μm 404.40 96.80   76.06 94.27
total 1482.40 96.80   93.47 99.57
平均 ≧100μm 76.74 90.74
≧50μm 78.61 93.00
≧20μm 87.81 97.16
total 94.32 99.31
注)空白: 分析せずあるいは算出対象外、第2〜5回の2pass損傷率(イタリック、下線表示)は1pass損傷率×2回の推算値
<0.1:検出限界以下、損傷率算出時は0として計算







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