1991年2月号 『正論』
北朝鮮はなぜ核査察を拒むのか
佐藤勝巳
筆者は、原子炉や核問題については、まったくの素人であるが、比較的早い時期から北朝鮮の核問題に関心をもちつづけてきた。関心を寄せた最大唯一の理由は金日成政権が核兵器をもったら、朝鮮半島はじめわが国の安全保障が重大な脅威にさらされるだけではなく、アジア太平洋の平和と安定が基本的に崩壊しかねない、とみているからである。
すでに他誌に書いたことであるが、中国が核兵器を開発した。中国と対立していたインドが核兵器開発に着手、更にインドと対立していたパキスタンが同じく核開発をはじめた。このように核兵器は、対立国間に連鎖反応を起こして行くものだ。
北朝鮮と対立しているのは、いうまでもなく韓国である。咋今の諸状況からみて、駐韓米軍が韓国に駐留しつづけるかどうか、不透明さをましてきている。そうであればあるほど金日成政権の核開発が動かし難いものとなれば、当然韓国内から「わが国も核開発を」との声が起こらない筈がなかろう。真剣に自国の安全を考える人間であれば、当然な声といわなければならない。しかし、結果としてそれは、韓国だけにとどまらず、アジア太平洋地域全体に拡大しないというより、拡大する可能性の方がはるかに高いとみなければならない。その意味で北朝鮮の核開発は、日朝交渉をどうするか、という二国間問題であると同時に、アジア太平洋全体の安全保障に直結している、より大きな国際問題なのである。
そんなとき、十一月十六日に時事通信社は、日本のマスコミ各社に北朝鮮の核兵器生産について、米政府が、日本政府に詳細な説明を行ったと、概ね次のようなニュースを流した。
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