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読売新聞朝刊 2003年5月1日
社説 南北閣僚会談 「核」には効かぬ宥和政策の限界
 
 韓国が押し切られただけの結果に終わった。
 平壌で開かれた南北閣僚級会談は、難航の末、焦点の北朝鮮の核開発問題については、対話を通じ平和的な解決に協力していくことで決着した。従来の合意文の表現とほぼ同じで、進展はなかった。
 北朝鮮が米中朝協議で行った核保有発言が、難航した理由である。
 韓国は、発言が事実なら、朝鮮半島非核化共同宣言への違反だとして、核の放棄を北朝鮮に求めた。だが、合意文に反映させたいとした非核化共同宣言の順守すら、うたうことはできなかった。
 北朝鮮は、核問題の交渉相手は米国であって韓国ではない、という姿勢を変えようとしなかった。韓国とは、コメや肥料などの支援継続や経済協力などを話し合うだけ、との構えを崩さなかった。
 韓国は体よくあしらわれた形だ。核放棄を求めても、宥和(ゆうわ)政策だけでは通用しないことが改めて明らかになった。
 北朝鮮はこれまで「核兵器を持つ意図はない」と繰り返し主張してきた。核拡散防止条約(NPT)脱退を宣言し、原子炉を再稼働した時も、米国が重油供給を停止したため、やむを得ず、電力を生産する平和利用だ、と強弁した。
 そうした北朝鮮の説明を厳しく問いたださないまま、経済支援を続けた金大中前政権の太陽政策と、それを受け継いだ盧武鉉政権の政策は、限界を露呈したと言うべきだろう。
 北朝鮮は、非核化共同宣言や米朝枠組み合意などに違反して、濃縮ウランを利用した核開発をひそかに進め、プルトニウムを得るための使用済み核燃料の再処理も公言した。断念どころか、核武装計画の推進そのものではないか。
 米中朝協議で、北朝鮮が示したという「新しい寛大な解決策」は、米国が敵視政策を放棄して、国交正常化に踏み切れば、北朝鮮は核の放棄やミサイル輸出の停止などに応じる内容だという。
 提案の詳細は明らかではなく、十分な吟味が必要である。しかし、一方的に危機的状況を作り出し、それを取り下げる代わりに見返りを求めるやり方は、北朝鮮のいつもの手法だ。その手はもう通じないことを認識すべきだ。北朝鮮が核を放棄することが先決である。
 盧武鉉政権は、北朝鮮の核武装を容認せず、非核化を経済支援の前提とする、との基本原則に、しっかり軸足を置くべきだ。米国や日本と緊密に連携して、北朝鮮に核断念を迫る以外に道はない。
 今月の日米韓三か国協議と米韓首脳会談では、北朝鮮の核問題解決へかける盧政権の覚悟のほどが問われる。
 
 
 
 
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