日本財団 図書館


シンポジウム
子育て相談における保育者の役割
司会者  高野  陽(東洋英和女学院大学教授)
シンポジスト  西村 重稀(元厚生省保育指導専門官)
   山田 和子(東大阪市・マーヤ保育園長)
   小野寺芳子(吹田市立藤白台保育園看護婦)
提案要旨
子育て相談における保育者の役割
西村 重稀(元厚生省保育指導専門官・現福井県福祉環境部児童家庭課長)
 
 我が国は都市化、核家族化が進行しており、家庭や地域住民の相互の扶助機能や世代間の育児伝承機能が低下してきている。このため、近隣から孤立し、子育てに不安を持つ親が多くなり、虐待児童の要因の一つであると言われている。
 保育所は地域の中でも最も身近な児童福祉施設であり、乳幼児の保育を通じて家庭養育を支援するノウハウを蓄積しているところから、地域の子育て家庭からの相談に積極的に応えていく必要がでてきた。そして、保育所の有する専門的機能を地域の住民に活用して通所している児童はもとより、地域の子育て家庭に対する育児不安などについての相談指導、子育てサークル育成等への支援の役割を保育所が担うことになり、平成5年度からは地域子育てモデル事業が開始され、平成7年度から地域子育て支援センター事業として一般化された。この地域子育て支援センターでは、地域の子育て家庭から子育てに関する相談を受け、助言を行うことや子育て中の親のサークルの育成や支援等を実施している。
 その後、平成9年には児童福祉法の改正がなされ、法の第48条の2に「保育に支障がない限り、地域の子育て家庭から保育について相談を受け、助言に努めなければならない。」と規定され、保育所は地域の子育て家庭に対して保育に関する相談助言を行うことが法律上明確に規定された。
 この法律の規定によって、平成12年4月に改訂された新しい保育所保育指針では子どもの保育と併せて、保護者に対して積極的に相談に応じ、助言を行うこと等の保育所における子育て支援が記述された。
 そのため、乳幼児の保育を行ってきた保育士にとって、保護者等からの相談を受け、助言するという役割が課せられたため、研修や自己学習が必要でないかと考えられる。
 保育所が保育に関する相談を受ける場合には、
(1)保育所では、主に誰が相談を受けているのか。
(2)相談方法
(3)どんな相談内容が多いのか。
(4)相談する子どもの年齢
(5)相談の記録を取っているのか。
(6)相談を受けるためにはどんな研修や勉強をする必要があるのか。
(7)他の関係機関との連携はどうしているのか。
(8)地域住民への周知方法
 等、保育所における子育て相談に関する調査研究などを参考にして、子育て相談における保育者の役割について考えたい。
提案要旨
子育て相談における保育者の役割
山田 和子(東大阪市・マーヤ保育園長)
 
 私の保育園は、お釈迦様の母、マーヤ夫人の“海よりも深く、山よりも高い”母の慈愛精神をモットーに、昭和46年1月1日に開設しました。産休明けの乳児(当時は43日目からの乳児)から就学前児までの一貫した保育で、心身共に健康な子・仲間意識豊かで円満な性格の子・感性豊かで活発に自己の表現のできる子に育つよう保育に専念して参りました。
 当時、日本保育協会においでになった“川合月海先生”から、「最近、子育てに自信のない親が多くなってきているから「電話相談・ママさん110番」をやってみたら」とのご指導で開設したところ、毎日、電話が鳴りっぱなしで、対応者は昼食もとれない状態でした。
 
・ミルクを飲まない
・離乳食はどのようにしたら良いか
・食事を食べない
・3歳になるがオムツがとれない
・言葉がおそい
・湿疹がひどい
・予防接種はどうしたら良いか
・おばあちゃんが甘くて私の言うことを聞かない
・私にかくれて、下の方にいじわるをする。
 
色々な相談がありました
 昔ですと、若い母親は、おじいちゃん・おばあちゃん・近所の方々………とまわりの皆さんに、色々教えて頂けたのが、現在では核家族で、近所づきあいも少ないため、相談したり教えてもらうことができない状況だと思います。特に、最近は“子育て”と“仕事”との両立に悩んでいるお母さん方がふえた様に感じます。“仕事”と“家庭”と“子育て”に行き詰まり不安が一杯の様です。
 そこで、私たち保育園は、親が園に相談しやすい環境を整えるとともに親の教育もしていかなければならないと思います。私の園では「相談室」を設け、保護者の相談を受けたり、色々な話を聞いてあげたり、時には、注意したりしています。また、「一時保育」もしていますので、お母さん方のリフレッシュを図るため、あるいは、急な用事をされるために、看護等のために、乳幼児を保育園でお預かりしています。
提案要旨
子育て相談における保育者の役割
小野寺芳子(吹田市立藤白台保育園看護婦)
はじめに
 
 吹田市の公立保育園では、昭和50年頃から「地域の保育センターを目指す運動」として、各園が自主的に保育園の行事に地域の乳幼児を招待するなど、保育園の文化や環境を地域の子供達に提供する活動に積極的に取り組んできた。昭和57年には活動費が予算化され、吹田市の「保育センター事業」として益々幅広い活動へと発展してきた。また、保健所が実施している育児相談の中で、育児のまずさが気になる母親や育児不安を持つ親子への対応として、昭和60年よりニーズの高かった地域より、保育園での育児教室が実施されだした。昭和62年には1歳6ヶ月健診が実施され、そこでフォローを必要とする乳幼児も受け入れられ、保健所・保育センター・保育園の三者が協力し、地域の子育て支援活動として、公立保育園18園で育児教室が実施されている。
 平成元年、吹田市育児教室運営協議会(保健センター・保育課・保育園・子育て支援課・わかたけ園・杉の子学園・府吹田保健所・府吹田子ども家庭センター)が発足され、育児教室の成果や問題点を検討しながら進めている。その中でもう少し早い時期からの対応が必要と思われるケースや保健婦の要望もあり、乳児期後半〜1歳過ぎの親子を対象とした0歳児育児教室が始まる。平成13年度より事業化され、公立全園での取り組みとなる。また、赤ちゃんを抱いたり、あやしたりしたことのない人、初めての出産を控えている妊婦を対象に妊婦教室の実施。父親の育児参加を呼びかけるため、土曜日に、行事を実施したり、各園で必要に応じて創意工夫した取り組みを行っている。
平成13年前期育児教室実施状況
 
参加組数
[1]1.6歳教室
 実施組数938組 平成12年前期(846組)比110.9%
 ※ 2回目参加138組 参加者の14.7%
[2]0歳教室
 実施組数351組 平成12年前期(299組)比118.7%
※児童館・センターの3歳児対象の参加者(743組)のうち、アンケート回収414名中、201名(44.0%)が保育園育児教室経験者








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION