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講演II 演題 乳幼児の身体発育と保育
座 長  大 林 一 彦
(大阪小児科医会副会長)
 
 講 師  加藤 則子 (国立公衆衛生院母子保健学部乳幼児保健室長)
 
 乳幼児期は、身体の発育が著しい。特に生後1年間は思春期の急進期よりも身長及び体重の伸びが著しいと言える。身体のすべての器官が身長や体重のような発育の経過をたどるわけではない。臓器別発育曲線としては、スキャモンによるリンパ型、神経型、一般型、生殖型の四型の類型がある。生殖型が思春期に入って初めて著しく成熟を示すのに対して、乳幼児期に成熟の速さが著しいのはリンパ型と神経型である。
 父母の体格と子どもの体格は似ている。これは遺伝因子のみならず食生活をはじめとした同様の生活環境を持つという後天的な環境条件も関係している。乳幼児の発育と栄養状態の関連は明瞭であり、最近の食生活環境においてはむしろ栄養過剰に関連した肥満児が問題になっている。短期の急性疾患の罹患は一時的な体重減少あるいは体重増加不良を起こす。慢性的な低栄養状態にともなう反復的な疾病罹患は継続的な発育不良をもたらす。社会経済的に恵まれた環境において概して発育が良好であるが、わが国においてはこれに関する較差はあまりない。たとえ食事の量が充分であっても、養育環境にストレスが大きいと発育不足を起こし得ることがわかっている。愛情剥脱等の精神的因子は内分泌機能に影響をあたえる。虐待やネグレクトにも発育不良が伴う。
 身体発育の評価は、経験に基づいて、視診・触診等によりある程度可能であるが、その正確な把握のためには客観的な情報が必要である。現在乳幼児の発育基準としては一般的に平成2年厚生省乳幼児身体発育値が用いられることが多い。(平成13年秋には新しい値に更新)。正常域については、3パーセンタイル値未満および97パーセンタイル値を越えるものを「発育の偏り」として問題とする場合が多いが安易に発育異常と考えてはならない。
 個々の例が実際にパーセンタイル曲線にのって発育してゆくわけではない。比較的大きくあるいは小さく生まれたものも発育は中央に寄っていく傾向がある。生まれつき小柄な体格で発育していくタイプの子どもが存在する。これは順調な発育パターンの一つであるということを理解する必要がある。低身長については、幼児期に身長が10パーセンタイル未満の場合は、曲線から離れて小さくなっていかないか経過を確認する。
 最近の保育所入所児においては、肥満の場合3歳頃から始まることが多く、また夏に体重増加が多いことや、身長の伸びにおいては、春夏に多いほか、8月や1月など、休みの多い時に前後の月より身長の伸びがわずかに多いこと等が分かっている。








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