本日、ここに第三十一回東京都少年剣道錬成大会が、かくも盛大に開催されますことは誠に感激に堪えません。

剣道は我が国古来の伝統的文化遺産であります。難しいことを言うようですが、現在の剣道の基礎は徳川家康の施政方針である武道教育に端を発し、その理念が確立し、戦後の一時期の廃止令を除いては現在まで数多くの剣豪によって継承されてまいりました。礼節を尊び、肝要なる忍耐を養い、身体を鍛えることにその本分があります。　

　現在の日本は世界において経済大国として発展を遂げてまいりましたが、これは日本人のたゆまざる勤勉と努力によって築き上げたものであります。しかしながら経済も停滞の傾向にあり、将来を考えるとき決して安泰とは言えない昨今において、二十一世紀を担う少年諸君に期待するところが大であります。

　本日この大会に参加される選手諸君は、日頃の厳しい錬成の成果を存分に発揮され、勝って驕されることなく、又敗けて臆することなく剣道の真髄を極め、本大会を通じて多くの教訓を学び、同士の輪を広げてください。そして立派に成長され、祖国の為、世界の為に貢献できる人間になることを願って止みません。

　終りにあたり、ご来賓の皆様、又ご父兄の皆様、この少年達のすばらしい活躍に賛美を贈ると共に、少年達の成長を優しく見守ってやって下さい。又、本大会開催に当たり御尽力を戴いた関係者の皆様に衷心より謹んで御礼申し上げ、私の挨拶と致します。