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審査所感  
手代木真風(てしろぎしんぷう)
 
 自然の輪がめぐり新たなる年が訪れる。太陽は、暖かな恵みを地上にもたらす。暗いトンネルの中にいる人間界にも月日は巡り、日々新たなるものである。今年は「午」駿馬の如くさっそうと駆けて行きましょう。
 日本剣道少年団研修会(体験・実践発表会)書道展も二十四回となり益々隆盛を誇りたる事、審査員の一人として大変うれしく思っている。また質の向上も顕著であり、日本各地の三九一道場より出品点数も三五四一点と前回より一〇〇点増加となり、少年少女の意気込みを感じた。
 特に優秀作品が多数出品された茨城、近畿、九州は懐抱豊かで柔軟な運筆、生き生きとして迫力もあり一点一画しっかりとした作品である。学年も上級生になると、やはりしっかりした作品が目立ち、五・六年生の書は基本をきちんとマスターしたもので見ごたえのある力作が並んでいる。
 物事すべて基礎が大切である。建築物しかり、日常生活にしても、世の中にある生活のルールがきちんと守れなくては、我々は生活できないであろう。その上で自由に己を表現する事こそ大切な事だと思っている。二十一世紀を生きて行く少年少女たちには、バラ色の楽しい生活であってほしいと願っている。だが、バラ色にするには努力が必要。上手に字を書きたいと思ったら、基本からいきなり上手になる訳ではない。花にたとえるなら、芽が出て葉、そして花になり、実になる。芽からすぐに花は咲きはしない。
 剣道にしてもすり足に始まり、素振りと稽古を重ねて強くなっていく。すべからく自分自身の努力の成果です。何事に依らず道を行くのは「私」であって私だけの道である。冬枯れの道でも、いつか春が来、夏は来るそのための勉強であり、練習である。階段を一つ一つ上がる頂点のない階段だが、自分の足で一段また一段と上がっていくのが人生。お互い助け合い励まし合いながら歩く事。人間は一人では生きられないが一人ひとりの生きる道は決して同じにはならないと思う。
 「恵愛為心」(けいあい心となす)人へのいたわりといつくしむ心を常に持つ事こそが世界の平和につながるものであろう。たとえ小さな火であっても一つが十に百にとなれば明るい未来は開けると思う。
 
※特選の作品及び金賞、銀賞、銅賞の氏名は次号で掲載します。
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剣道時代賞の入賞者








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