提言6 海洋に関する青少年教育および学際的教育・研究の充実
国民の海に対する知識や理解の向上を図り、海との共生についてその積極的関心を喚起するため、海洋に関する教育・啓発、特に青少年に対する海洋教育の拡充を図るべきである。
また、海洋問題に総合的視点で取り組むため、自然科学系と社会科学、人文科学系の相互間を含む各分野の学際的研究と交流を促進するとともに、大学院レベルでの海洋管理に関する総合的な教育・研究システムを整備すべきである。
6-1. 初等・中等教育において、私たちの生存基盤である海に関する教育の充実を図るべきである。
わが国は海に囲まれ、海から様々な恩恵を受けているが、残念ながら青少年に対して海に関する教育をあまり行っていない。小、中、高等学校の教育カリキュラムに海に関する事項を取り入れるとともに、教材の充実、教員の海に関する知識、理解の向上を図るべきである。
また、高等学校の「理科」で海洋科学の主要分野の基礎的事項を、「社会」で海洋利用の現状と問題点および持続可能な開発、利用について、学習できるようにすべきである。
6-2. 学校教育および社会教育において、積極的に海について知識、理解の向上を図る機会を増加すべきである。
海は、大きな自然であり、実際に触れて初めて理解できることも多い。学校内の教育だけで海に対する関心を高め、知識や理解の向上を図るには限界がある。このため、学校教育においては、総合的学習の時間などを活用し、また、地域社会や家庭においても「海の日」や夏休みなどの機会を活用して、フィールド学習の機会を強化するとともに、近郊の港、博物館、海洋研究機関あるいは海洋体験施設などへの見学、体験の機会を増加させるべきである。
6-3. 大学・大学院の海洋に関する教育・研究を学際的、社会的、国際的に開かれたものにすべきである。
海洋の諸問題は、相互に密接な関連を有し、全体として検討される必要があることを認識して、環境、生態系その他の総合的、学際的アプローチを必要とする問題への対応能力を培うため、自然科学部門内の各分野間はもちろんのこと、社会科学、人文科学との部門間を含む学際的教育・研究の充実を図るべきである。
また、海洋に関する教育・研究に、広く社会に出て行うインターンシップ制度を導入するとともに、産業界、行政、試験研究機関などに働きながら、海洋に関して講義を受け、研究することができるプログラムを整備すべきである。
さらに、海洋の国際的性格に鑑み、教授、学生の交流、単位の相互承認など内外の大学間の交流を促進し、国際的に開かれた海洋教育の実現を図るべきである。
6-4. 海洋政策、海洋・沿岸域の総合管理などに関する高度な教育・研究の充実を図るべきである。
20世紀末に発効した国連海洋法条約の各国による実施が今世紀の大きな課題であることに鑑み、海洋法、海洋環境、資源管理、沿岸域総合管理など海洋の総合的管理に関する研究のための修士課程以上のコースを設置するとともに、日本および世界各国の海洋政策、海洋法制等を研究するプログラムを編成すべきである。
また、海洋政策についてアカデミックな立場から総合的に分析、評価し、提言する海洋政策研究センターを設立すべきである。
2001年度海洋管理研究会
委員長 |
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栗林 忠男 |
慶應義塾大学 法学部 教授・前法学部長 |
石 弘之 |
東京大学大学院 新領域創成科学研究科(国際環境科学)教授 |
宇多 高明 |
国土交通省 国土技術政策総合研究所 研究総務官 |
来生 新 |
横浜国立大学 国際社会科学研究科 教授 |
白石 隆 |
京都大学 東南アジア研究センター 教授 |
清野 聡子 |
東京大学大学院 総合文化研究科 広域システム科学科 助手 |
多屋 勝雄 |
東京水産大学 資源管理学科 教授 |
中原 裕幸 |
(社)海洋産業研究会 常務理事 |
林 司宣 |
早稲田大学 法学部 教授 |
村上 暦造 |
海上保安大学校 海上警察学講座 教授 |
秋山 昌廣 |
(財)シップ・アンド・オーシャン財団 会長 |
寺島 紘士 |
日本財団 常務理事 |