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5-4.技術の継承・保存・記録について
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船大工道具と建造工程の展示:みちのく北方漁船博物館
 木を使っての技術と文化というのは人類が生きてきた過程で基本的なものであり、そういったことからも木造船の技術は将来にむけて何らかの形で保存し、活用できる状態にしておかなければならないであろうと考えられる。まず何を最優先課題にするのか考えた場合、何よりも造り手がいなくなってしまうという問題への緊急な対応であろう。調査で時間を取られている間に復元の着手が遅れ、船大工の方が亡くなってしまうという事態が一番怖い。技術者がいなくなるという側面に照らして、優先箇所をリストアップし、実際に船を作ってもらうという事が急務であろう。もはや技術継承といっても続いて造られる見通しまで立てられる段階ではすでになくなってきている。船大工の継承が出来ないまでも建造と収集、記録保存する最後のチャンスである。
 また、一般的ではないが競争用また神事用として木造船を使っていけば、船が残せて技術の伝承が可能になってくる。数箇所ではあるが、ペーロン船など競争用の船を造っている長崎や北海道の船大工は、存続していく可能性がある。
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長崎県壱岐郡郷ノ浦町 木造船2隻による競漕 櫓4丁
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三重県鳥羽 海の博物館 櫓(ろ)漕ぎ体験
 櫓こぎ体験教室などで、子どもたちを集めて船の使い方を体験してもらい、そのための船を定期的に造っていくことで技術伝承に繋げていく。展示するだけではなく、建造の過程、使っている状態の船を見せることは意義あることである。こういつたことは活動が継続されていけば、使われている船の維持管理が必要となり、それをうまく利用すると修理する、造り代える、ということで技術伝承に繋がる。実際に使われている船大工技術と単なる記録との間には大きな違いがあるので、復元するにしても単に形だけ復元すればよいというものではなく、使われ方まで含めた木造船の記録が必要である。
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三重県鳥羽 海の博物館 櫓(ろ)漕ぎ体験








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