5.アンケート結果からの考察
総括
木造船漁船の全国的な調査としては、明治28年(1895年)に農商務省が行った「日本漁船調査」以来となる。アンケートからは予想以上の現存する木造船と船大工のデータが得られたが、船大工の高齢化は顕著で、今後木造船が必要な磯漁などもFRP船に替わっていかざるを得ない状況が来ていることを示している。
昭和40年ごろからの急激なFRP船の台頭には、背景に産業構造、生活様式の変化があり、その背後で全国津々浦々で木造漁船が使われなくなり、伝統漁法も消えていったと思われる。
和船文化・技術研究会で議論を重ねた結果、今が木造船の技術、文化とそれに伴う漁労習俗などを記録、保存する最後のチャンスではないかという結論に達し、アンケート調査等をもとに木造船技術の記録、保存等についてのあり方を下記にとりまとめた。
5-1.木造船について
木造船はグラフを見るとわかるように、北と南に多く残存していて、関東、中部などは少ないという傾向が見える。意外なほど木造漁船がまだ残っていたが、小型のものが多く、確実に数は減って来ている。個々のデータを検証していくと二つの傾向が見えてくる。
左 函館 平石造船:ムダマハギ型漁船ダイオロシ(進水式)
右 ムダマハギ型漁船:津軽海峡沿岸地域で磯漁に使用されている。
一つは、決して絶対数は多くはないが、現在使用している木造船の比率が圧倒的に高いのは、川、湖の内水面漁協である。それに対して非常に多数である海の漁協の木造船の比率は低い。
二つ目に、海の漁協において集中して多数ある大部分の木造船は磯船であって、地先の磯でアワビ、サザエ、ウニを捕るなど近距離での船が多い。特に北海道、東北地方に集中して見られる。これらの状況を鑑み今後精査して、対応を考えていくべきである。