はじめに
海洋科学技術センターが推進しています大型プロジェクト「深海地球ドリリング計画」は、地球深部を掘削し、そこから直接採取される堆積物や岩石あるいは地殻内生物を分析・研究したり、掘った後の孔を使った長期観測により、地球内部構造や巨大地震を引き起こす地震発生帯の解明、温暖化等の将来の地球環境変動の予測や地殻内生物の探求等を目指すもので、これにより地球科学と生命科学が飛躍的に進展するものと大いに期待されています。このプロジェクトの中核となり、成否の鍵になるのがまさに現在建造を進めている地球深部探査船「ちきゅう」であり、大水深海域での科学掘削(初期稼動水深2,500m、将来4,000m)を可能にするため、海洋石油掘削に使われているライザー掘削システムを科学掘削用として初めて導入します。このため、海洋科学技術センターの技術開発ポテンシャルを高めるとともに、最新の海洋石油掘削技術を地球深部探査船の建造やその後の科学掘削計画に反映していくことが必要であり、海洋科学技術センターでは主要な国際会議への参加、海洋関連機関及び企業を訪問するなどして、海外の掘削技術の動向や海洋掘削関連機器等について調査・更新に努めてきました。
今回の調査では、米国を中心に世界各国の石油開発事業者、石油開発関連機器メーカーがヒューストンに集まるOTC2001(Offshore Technology Conference)に参加し、展示会やシンポジウムを通して海洋石油開発及び掘削技術の開発動向を調査しました。さらに、このOTC参加の機会を利用して、現在世界で唯一稼働している科学掘削船JOIDES Resolutionによる科学掘削を推進しているテキサスA&M大学ODP事務局において、コアリング技術の情報を収集するとともに、海洋掘削に不可欠な無人探査機の製造メーカーであるペリー社及びISE社を訪問し、最新機器について調査しました。本報告書が関係各位の業務に多少なりとも参考になれば幸いと存じます。
最後に、本調査には日本財団殿の全面的なご理解を得て実施することができましたことを心よりお礼申し上げます。
平成14年3月
海洋科学技術センター
海洋技術研究部 野口 雅史
深海地球ドリリング計画推進室 矢野 裕亮