1 中国の漁船の現状
1.1 漁船数
2000年末現在、中国における登録された動力漁船は約50万隻、エンジン出力の合計は1,448.7万kWに達している。
この他約52万隻の非動力漁船があり、2000年末現在の中国の漁船保有数は、合計で約102万隻と世界第一位になっている。
表1: 中国の動力漁船数等
  |
総数(隻) |
トン(積載重量) |
総出力(kW) |
1997年 |
459,587 |
6,329,096 |
12,577,580 |
1998年 |
472,756 |
6,553,994 |
13,319,191 |
1999年 |
470,710 |
6,694,002 |
13,717,080 |
2000年 |
497,130 |
7,069,722 |
14,486,991 |
出所: |
「中国農業年鑑」1998〜2001 |
注: |
各年末の数字 |
表2: 中国の非動力漁船数
  |
総数(隻) |
トン(積載重量) |
1997年 |
517,485 |
791,486 |
(31,222) |
(42,199) |
1998年 |
517,796 |
914,918 |
(27,240) |
(39,372) |
1999年 |
518,881 |
799,109 |
(23,276) |
(34,192) |
2000年 |
519,748 |
826,489 |
(22,975) |
(33,313) |
出所: |
「中国農業年鑑」1998〜2001のデータによる |
注)1: |
各年末の数字 |
2: |
( )は河川用を除いた数字。 |
図1: 中国の漁船数とトン数
1.2 概況
以下は2000年の全国漁船調査にもとづくものである。
これは中華人民共和国農業部が、中国全国の(河川用を除く)漁船に対して実施した初めての網羅的調査であり、7ヶ月かけて行われた。調査は、漁船と養殖作業船に対し、通年で漁をする漁船と特定の季節のみ漁をする漁船を専業と兼業に分類したうえで、船名、船籍港、船種、作業方式、船体材料、メーカー、完成日、船価、船舶証書、船舶所有権、船舶の寸法、トン数、エンジン出力、通信・航海設備その他漁船性能と証書状況に関係する項目などについて行われた。
この調査によると河川用を除く漁船を見たとき、現在約20万隻ある動力漁船の9割は出力200馬力以下の小型漁船であり、更に5割は20馬力以下である。
材料は、多くの漁船は木製であり、鋼製や強化プラスチック製は少ない。強化プラスチック製漁船は動力漁船の2.5 5%しか占めていない。また一部の漁船の船齢は高い。このように小型・木製・高船齢の漁船が多いのは、建造資金の負担力に欠けるためである。
中国では、1985年から遠洋漁業が始まった。遠洋漁業は、主に近海に近い遠洋での漁業と大洋での漁業に分けられ、それぞれ600馬力のトロール漁船、3000トン級のトロール・加工漁船を要するが、現在、北太平洋と南太平洋で遠洋漁業に従事する漁船の殆どは輸入である。
また、これらの漁船は、船齢18年以上の中古船で、船体・設備の老朽化が深刻で、故障率も高く、修理費用が高騰している。設備のシステムは複雑で、部品と備品の確保も困難である。漁獲能力と比べ、中国の近海の漁業資源は不足しており、遠洋漁業を発展させることが当然必要であるが、現在の中国漁船の状態からみれば、遠洋漁業の要求は満たせそうもない。
マグロ、スルメイカを釣る漁船は、その殆どがトロール漁船を改造した小型船で、風が強く、波が高い大洋では作業が難しい。
中国の漁業は、トロール漁業がメインで、総生産量の85%以上を占めている。次いで巻き網が総生産量の12%、固定流し網などが3%となっている。トロール網業には、底引網と中層トロール網の二種類がある。中国では、底引網が比較的広く使われているが、網目の寸法が規則どおりでないなど、資源破壊は大きい。
1.2.1 地域別分布
中国の漁船(河川用を除く)は、主に広東、福建、山東、浙江の四省に集中している。四省の漁船の合計は、207,7 65隻、エンジン出力の総計は1,016万kWでそれぞれ全国の69.09%と74.98%を占めている。
表3: 中国漁船の地域別分布
番号 |
地域 |
数 量(隻) |
総トン(トン) |
総出力(kW) |
総資産(万元) |
1 |
広東省 |
60,336 |
872,585 |
2,445,849 |
473,106 |
2 |
福建省 |
54,558 |
651,201 |
1,850,950 |
359,854 |
3 |
山東省 |
49,948 |
785,178 |
1,864,900 |
524,257 |
4 |
浙江省 |
42,923 |
2,141,047 |
3,999,296 |
953,447 |
5 |
遼寧省 |
36,115 |
487,742 |
951,823 |
302,739 |
6 |
江蘇省 |
19,011 |
350,671 |
802,070 |
168,763 |
7 |
広西省 |
13,904 |
208,741 |
545,464 |
129,495 |
8 |
海南省 |
12,317 |
155,098 |
456,326 |
94,190 |
9 |
河北省 |
9,263 |
174,508 |
366,215 |
49,293 |
10 |
天津市 |
1,355 |
61,591 |
123,958 |
9,942 |
11 |
上海市 |
1,003 |
84,451 |
144,278 |
64,423 |
  |
合計 |
300,733 |
5,972,813 |
13,351,129 |
3,129,509 |
出所: |
2000年中国全国の漁船調査 |
注)1: |
河川用を除く |
2: |
非動力漁船を含む |
図2: 中国の漁船数の地域別分布
図3: 中国の漁船出力の地域別分布
1.2.2 用途別分類
中国の漁船のうち漁をする漁船の総数と総出力は、それぞれ全体の81.25%と91.51%を占めている。残りの18.75%と8.47%は養殖に用いられる作業船等である。
漁をする漁船の中で年間を通じて漁業に従事する漁船の総数と総出力は、それぞれ全体の92.47%と98%を占めている。残りは季節により一時的に漁業に従事する船舶であり総数と総出力は、それぞれ全体の7.55%と2%を占めている。
作業方式からみたとき、漁をする漁船の中では流刺網業をする漁船が最も多く118,422隻、110.84万総トン、291.37万kWであり、その次は、トロール漁船である。一般に流刺網業をする漁船は小型で、トン数、出力は小さいがトロール漁船は大型船が多い。
表4: 中国漁船の用途別分類
漁船用途 |
隻 数 |
トン(総トン数) |
総出力(kW) |
総資産(万元) |
漁船 |
244,336 |
5,411,042 |
12,218,205 |
2,850,621 |
養殖作業船 |
42,254 |
99,581 |
306,937 |
56,630 |
水産物輸送 |
7,579 |
268,555 |
644,461 |
117,209 |
冷凍加工船 |
57 |
31,882 |
33,926 |
16,749 |
燃料補給船 |
769 |
62,445 |
74,873 |
18,745 |
補給船 |
249 |
12,696 |
16,192 |
3,712 |
タグボート |
142 |
7,627 |
11,705 |
2,289 |
交通船 |
1,738 |
7,525 |
21,983 |
2,875 |
はしけ |
223 |
5,814 |
5,327 |
1,172 |
官公庁船(取締船を除く) |
440 |
34,712 |
140,565 |
35,652 |
漁業取締船 |
113 |
3,476 |
16,211 |
2,615 |
その他 |
2,833 |
27,453 |
58,050 |
21,235 |
合 計 |
300,733 |
5,972,813 |
13,351,129 |
3,129,509 |
出所: |
2000年中国全国漁船調査 |
注)1: |
河川用を除く |
2: |
非動力漁船を含む |
図4: 中国の漁船の用途(隻数)
図5: 中国の漁船の用途(出力)
1.2.3 船齢
大部分の中国漁船は、80年代に聯産請負責任制を実施してから各地の漁民が建造したものである。そのため大体20年ぐらいの船齢があり、30年を超えたものもある。中国では現在、一定の船齢に達した漁船の廃棄を強制化する制度を検討中であるが、その制度が実施されるまでは、これらの老朽化漁船が長く使われる見通しである。
表5: 中国の漁船の船齢
出所: |
2000年中国全国漁船(河川用を除く)調査 |
注)1: |
船齢判明分のみを集計 |
2: |
河川用を除く |
1.2.4 材料・エンジン出力
動力漁船をみたとき、材料別では木製漁船が圧倒的に多く全体の約86%を占める。エンジン出力別では20馬力未満が約51%と半数を占めている。
強化プラスチック(FRP)漁船は6,219隻、出力合計13.56万kWで、それぞれ漁船総数の2.55%、総出力の1%である。先進国では、FRP漁船が木製漁船に代わっており、例えば、日本では、漁船総数の95%以上がFRP漁船である。
中国では、FRP漁船建造のスタートが遅く、1974年天津で初のFRP漁船が完成した。1994年までに約40隻を生産したのみで1995〜2000年に中国で建造された動力FRP漁船の数は、過去20年の合計に相当する。
中国でFRP漁船の発展が制限される主な要因は、次のようなことである。
(1) 価格が木製漁船より50%以上高い。
(2) 材料が磨損に弱く漁港を持たないところでは適しない。
(3) 材料が軽すぎ、剛性が足りない。海上で作業する場合、重みがない
(4) 建造時と廃棄後に二次汚染の問題がある。
(5) ユーザが慣れておらず信用されていない。
表6: 中国漁船の材料
出所: |
2000年中国全国漁船調査 |
注)1: |
河川用を除く |
2: |
動力漁船を対象とした数字 |
表7: 中国漁船のエンジン出力
出所: |
2000年中国全国漁船調査 |
注)1: |
河川用を除く |
2: |
動力漁船を対象とした数字 |
図6: 材料別中国漁船隻数
図7: 材料別中国漁船出力
図8: 中国の漁船のエンジン出力
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