
第1章 バングラデシュの概況
1-1 基礎データ
国土面積 |
: |
14万3,998km2 |
人口 |
: |
1億2,695万人(1999年央推定)
首都と主要都市の人口(センサス)
ダッカ首都圏 616万3,045人
チッタゴン 574万3,969人
クルナ 213万373人
ラジャヒ 198万8,061人
(出所) Bangladesh Bureau of Statistics及びIFS/IMF |
主要言語 |
: |
ベンガル語、英語 |
宗教 |
: |
イスラム教 86.6%、ヒンズー教 12.1%、仏教 0.6%、キリスト教 0.3%、その他 0.3% |
首都 |
: |
ダッカ(人口577万人) |
通貨 |
: |
タカ
対米ドル市場平均レート 1ドル=51.00タカ(2000年3月末時点) |
1-2 政治
96年6月、憲法が定める選挙管理内閣下で総選挙が行われ、アワミ連盟が過半数を確保、国民党の支持も受け、アワミ連立政権が成立した。アワミ連立政権首相シャイク・ハシナの就任から既に4年を経過しているが、これまでのところ同政権は国民の信任を得ているようだ。同政権の主な業績を挙げれば、第1がインドとの間でガンジス川水分配協定を締結したこと、第2が過去20年間紛争の続いたチッタゴン丘陵地域の少数部族と協定を調印したこと、第3がジャムナ川多目的橋を完成したこと、第4が98年のサイクロンによる洪水で大きなダメージを受けた経済の修復に成功したことである。
だが、2000年を通じて電力不足問題及び法・社会秩序の混乱は未解決のままである。与党アワミ連盟と最大野党民族主義党との対立・確執も一層激しさを増している。それは政治的意見の対立というより政権党によって独占されている「政治的利権」の争奪を巡る争いである。アワミ連立政権の任期(5年)は2001年6月までだが、その前に国会解散、総選挙がなければ、与野党対立による政治不安定は任期の終わりまで続くと思われる。
政体 |
: |
立憲共和制の人民共和国 |
元首 |
: |
シャハブッデイン・アーメド大統領 |
国会 |
: |
1院制議会:議員定数 330人(うち婦人議席30人)、任期5年 |
主要政党 |
: |
国会の政党別確定議員数328議席の内訳(99年現在)
与党:計194
アワミ連盟 178 (一般151+女性21)
国民党(MM派) 15 (一般14+女性1)
諸派 1
野党:計134
民族主義者党(BNP) 110
国民党(E派) 18 (一般16+女性2)
イスラム協会 3
諸派 1
無所属 2 |
内閣 |
: |
アワミ連盟シェイク・ハシナ首相(96年6月発足) |
1-3 経済
バングラデシュは国土の大半がガンジス、プラマプトラ、メグナの3大河川が形成したデルタ上に広がっており、国土の80%が沖積平野である。経済の基盤は米作を中心とする農業である。96/97年度の農業生産はGDP全体の32%、95/96年度の農業就業人口は就業人口全体の63.2%を占めている。経済全体に占めるシェアを高めている工業も原材料の多くを農業に依存している。最大の農業生産物は米であるが、生産は天候に左右され、加えて灌漑施設の不備、肥料の不足等があり、生産量は1億2千万強の人口を養うには十分とは言えない。そのため、食料を輸入せざるを得ず、これが国際収支の悪化要因の一つになっている。
バングラデシュ統計局によると、表4-1のごとく、98/99年度の実質GDP成長率は5.2%であった。この数字は90年代に達成された平均成長率4〜5%よりも高い値を記録した。同国がこのような比較的安定した成長率を達成できた要因としては、インフレ率を低く抑えることに成功した経済運営とガス田開発に代表される外国投資の増加があげられる。
表4-1 バングラデシュの国内総生産
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93/94年度 |
94/95年度 |
95/96年度 |
96/97年度 |
97/98年度 |
98/99年度 |
名目GDP(10億タカ) |
1,342 |
1,512 |
1,648 |
1,765 |
1,938 |
2,081 |
実質GDP伸び率(%) |
4.2 |
4.4 |
5.4 |
5.9 |
5.7 |
5.2 |
1人当名目GDP(タカ) |
8,754 |
9,760 |
10,660 |
11,284 |
- |
- |
出所:バングラデシュ統計局
表4-2のとおり、GDPに占める工業の比率は70年以来、10%程度で推移している。因みに98/99年度のGDP比は11.2%になっている。工業の就業人口比率は7.5%(95/96年度)と農業人口に比べると非常に小さい。業種は従来ジュート製品、綿繊維品、食料品等の農産品加工業の割合が大きかったが、近年縫製品の比重が大きくなっている。
表4-2 バングラデシュの国内総生産産業別構成(84/85年度価格) (単位:1,000万タカ)
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93/94年度 |
94/95年度 |
95/96年度 |
96/97年度 |
97/98年度 |
98/99年度 |
農業 |
20,192 |
19,982 |
20,713 |
22,046 |
22,696 |
23,836 |
鉱業 |
12 |
14 |
17 |
22 |
29 |
36 |
工業 |
6,367 |
6,916 |
7,282 |
7,540 |
8,260 |
8,464 |
建設業 |
3,607 |
3,859 |
4,015 |
4,210 |
4,505 |
4,797 |
電気・ガス・上下水道 |
1,018 |
1,134 |
1,246 |
1,267 |
1,305 |
1,336 |
交通・運輸・通信 |
7,009 |
7,420 |
7,789 |
8,295 |
8,859 |
9,391 |
商業・サービス |
5,328 |
5,867 |
6,455 |
6,880 |
7,341 |
7,759 |
住宅開発 |
4,379 |
4,546 |
4,720 |
4,904 |
5,097 |
5,275 |
行政サービス・国防 |
2,849 |
3,096 |
3,353 |
3,634 |
3,947 |
4,263 |
金融・保険 |
1,066 |
1,109 |
1,148 |
1,191 |
1,236 |
1,281 |
その他 |
6,557 |
7,036 |
7,506 |
8,032 |
8,594 |
9,135 |
GDP合計 |
58,384 |
60,979 |
64,244 |
68,021 |
71,869 |
75,573 |
GDP成長率(%) |
4.2 |
4.4 |
5.4 |
5.9 |
5.7 |
5.2 |
出所:アジア動向年報
バングラデシュ経済はここ数年比較的高い成長率を達成したが、それを取り巻く経済環境は未だに多くの問題を抱えている。世銀によれば、貸出総額に対する不良債権が43%を占めている金融部門は相変わらず脆弱なままであり、多くの負債を抱えている国営企業は政府の大きな財政負担となっている。エネルギー部門を筆頭とするインフラの未整備が工業部門の発展の足枷となっている。その他にも、ゼネストの頻発等の内政不安定、熟練労働者の不足、行政の許認可事務の不効率性など多くの課題が山積されている。
バングラデシュが今後も持続的な経済発展を達成するためには、政府は各分野において根本的な構造改革に取り組む必要がある。具体的には、第1にエネルギー、道路、港湾、通信などのインフラ政策を強化すること、第2にバングラデシュ中央銀行の管理機能を高めるとともに国営商業銀行の民営化を図ること、第3に多くの負債を抱えている国営企業の再編政策を迅速に進めること、第4に財政収支の赤字を解消するため、税体系の見直し、行政処理の効率化、アジア開発銀行のプロジェクトや補助金など予算配分先の見直しを行うことなどがバングラデシュの今後の経済発展の鍵を握っていると考えられる。
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