参考資料
参考資料−1 主なSCRシステム搭載船の事例
これまでに知られている主なSCRシステムを搭載した船舶の事例を表‐1に示す。これらはいずれも触媒による浄化システムである。これ以外に、船舶の排ガス浄化用システムとして煙突内に吸着剤層を設置するシステムが提案されている。これらの事例を以下に示した。
表‐1 主な脱硝触媒搭載船
SCR装置メーカー |
船舶搭載実績 |
名称 |
国名 |
船舶名称 |
就航航路 |
Siemens |
ドイツ |
"Gotland" |
スウェーデン本土−ゴットランド島 |
"Nils Dacke" |
TT Line |
"Brika Princess" |
ストックホルム―マリエハムン |
その他7隻 |
バルチック海フェリー |
Haldor Topsoe A/S |
デンマーク |
"Stena Jultlandica" |
ヨーテボリ―フレデリクスハウフン |
"Pacific Success" |
韓国―米国(撒積船) |
その他 |
バルチック海フェリー |
ABB Flalt Marine |
スウェーデン |
"Aurora" |
デンマーク―スウェーデン |
*スウェーデンでは政府と船主協会の間で2000年までに排ガス中のNOxを75%削減することで合意。1998年より、環境負荷に応じた港湾料金課金制度が実施されている。
(1)"Stena Jultlandica"のSCRシステム
"Stena Jultlandica"は総トン数29619トン、旅客定員1249人のフェリーで、主機と補助機関の全てに世界ではじめてSCR装置を搭載した船舶である。脱硝装置の設置場所は上甲板上の煙突のすぐそばにあり、消音装置を兼ねている。還元剤としては尿素水を用いたSCRであり、タンク容量は50m3である。また、下流域のNOxセンサー測定値に基づいて還元剤噴射量を変動させている。触媒寿命は20,000時間程度で2〜3年で交換の必要があるとしている。また、排ガスによる付着物の除去は、定期的に400〜450℃に加熱して除去を行っている。
図1 "Stena Jultlandica"に搭載されたSCRシステム
(2)"Aurora"のSCRシステム
"Aurora"はスウェーデン船籍のro-ro 多目的フェリーでスウェーデンとデンマークの間を就航している。1992年4月に2.5MWの中速4サイクルディーゼル機関(Wartsila製)に尿素水を使用したSCRを過給機の後に設置している。システムはバイパスラインをもった脱硝反応器とアフターバーナーより構成されており、反応器はNOx低減触媒、酸化触媒、熱分解質、スタティックミキサ、バイパスバルブ等から構成されている。また、噴射ノズルは停止時に還元剤噴射ノズル中に空気が流入する機構を備える。
本SCR装置は1996年までに8,000時間以上稼動しており、平均NOx浄化率は97%の実績がある。
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図2 "Aurora"搭載の脱硝システム構成
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図3 "Aurora"搭載の脱硝装置
(3)新潟鐵工所のSCRシステム
秋田県練習船(1800ps4サイクルディーゼル、A重油使用)に搭載した実績があり、国内実船搭載した数少ない事例である。本試験は日本財団補助事業として平成5,6年度にシップ・アンド・オーシャン財団が実施したものである。
装置構成は脱硝触媒反応器、噴霧ユニット、制御・計測ユニットからなり、還元剤は尿素水を用いており、還元剤タンクの容量は2000リットルで約5日分とされている。また、還元剤の噴射ノズルは還元剤噴射を定期的に水洗可能な置換水系統を備える。また、触媒への付着物除去用のブロアーを備えている。
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図4 SCRシステム配置
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図5 SCRシステム構成
(平成6年度「内航船用小型排ガス脱硝装置の開発」報告書、シップ・アンド・オーシャン財団.)
(4)三菱重工の排ガス浄化システム
実船搭載した事例ではないが、吸着剤を用いた特許出願(特開平5-337326 排ガスの処理方法)の事例がある。吸着剤単独使用で、除去効率はNOx、SOxに関してそれぞれ以下の通りである。
NOx:1000ppm→650ppm
SOx:800ppm→150ppm
吸着剤にはFe2O3―SiO2−Ca(OH)2を使用しており、帰港ごとに吸着剤を交換できるような交換ステージを設計している。
図6 吸着剤を利用した排ガス浄化システム特許出願事例