はじめに
本報告書は、競艇公益資金による日本財団の助成事業として平成9年度から2年間実施した「小型内航船エンジン排ガス浄化触媒の調査研究」事業の成果をもとに、平成12年度および平成13年度に実施した「内航船用エンジン排ガス浄化システムの調査研究」事業の成果を取りまとめたものである。
地球の温暖化、フロンによるオゾン層の破壊、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)による大気汚染などの環境問題が地球規模で顕在化してきた。このような状況のなかで国際海事機関(IMO)における海洋環境保護委員会(MEPC)は、船舶からの排ガス規制を取り入れることに同意し、1997年のMEPCにおいて「船舶からの大気汚染防止のための規則」が採択された。これにより、海洋汚染防止のための規定に加えて、船舶からの大気汚染物質の排出抑制についても初めて国際的な規定が設けられ、船舶からの大気汚染物質の低減は世界的に取り組まなければならない問題になっている。
このような状況に鑑み、当財団では舶用ディーゼル機関のNOx低減技術として、多孔燃料噴射、燃料・水層状噴射及び選択接触還元(SCR)等のNOx低減技術の開発を実施してきた。特に小型内航船用排ガス脱硝技術については、触媒を用いたSCR方式の有効性が示されているが、排ガス温度が低い出港時には触媒が有効に働かない等の問題がある。本事業では、従来型の脱硝触媒の問題点である出港時の問題を解決する方法として「吸着剤−選択還元触媒」の複合化による新しい脱硝触媒システムの調査研究を行い,小型舶用ディーゼル機関を用いた実証試験の結果から、本システムにより実排ガスにおいても広い温度範囲でNOxの除去が可能であることが実証できた。本事業の成果が今後の船舶の脱硝技術開発のための新しい道しるべとなれば幸いである。
本事業は、八嶋建明東京工業大学名誉教授を委員長とする「内航船用エンジン排ガス浄化システムの調査研究委員会」の各委員の熱心なご審議による他、多くの関係者の方々にご協力をいただき実施されたものであり、これらの方々に対して心から感謝の意を表する次第である。
平成14年3月
財団法人シップ・アンド・オーシャン財団
会長 秋山 昌廣