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1. はしがき
 調査・研究のフォローアップは、本来極めて重要な作業であり、フォローアップにより完了した事業に新たな命を与えて事業成果の価値、効用を高め、また新たなる調査研究事業の計画、展開に資することができる。我が国においては、調査研究事業の評価システムが暖昧なことも手伝って、調査研究事業が完了した後、その必要性を感じても、残念ながら、当該事業の自己評価、補足もしくは修正作業などを行うことは稀である。
 日本、ロシア、ノルウェーの3ケ国を中核とする国際事業及び我が国独自事業からなる北極海航路開発調査研究事業(INSROPおよびJANSROP)は、平成12年3月、「北極海航路‐東アジアとヨーロッパを結ぶ最短の海の道」および引き続いての同英文版の刊行を以って終了したが、実質上の調査研究作業は平成10年末に成功裏に終了している。この成果は、我が国の貴重な知的財産となり、また国際社会共有の財産としても広く認知されている。しかし、事業終了後3年余りが経過し、この間、国際情勢、取分けロシア政治・社会には著しい変化があり、これらの状況変化を調査・把握し北極海航路の将来像および周辺情勢について視点を新たに検討を行い、航路の再評価をしておくことが肝要である。また、INSROPにおいて調査、検討が不十分であった事項については調査・補足を行って、当該事業成果の効用を高めることを図った。
 北極海航路開発調査研究事業終了後、ロシア及び関係各国の動静、関係学会国際会議等での発表論文、報道メディアの情報に注目してきたが、ロシア政府政策に深く依存する本件については、相互に脈絡を欠く散発的情報のみから結論を導くことは至難である。本事業のフォローアップは、幸い平成13年12月、中央船舶・海洋研究所(サンクト・ペテルスブルグ)及びフリチョフ・ナンセン研究所(オスロ)での会議議題として合意され、会議を通じて関係情報の経絡を確かめ、脈絡を明確にし得る機会を得たので、事業終了後のフォローアップ報告書として取りまとめ、北極海航路及び関連輸送システムに関わる根源的な問題を再度検討し、さらに、取得した貴重な知的財産の活用と現下の社会情勢、科学技術の近未来像を勘案しつつ、今後行うべき調査研究事業の策定に資するものである。
 なお、本報告書は、上記会議において提供された資料、日本政府関係省庁発行の報告書、関連国際会議、諸機関発行の報告書等を参照し、国会図書館、北海道大学中央図書館及びスラブ研究センター図書室、札幌市中央図書館にて閲覧、転記した資料を基に取りまとめたものである。








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