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2.3 「海の健康」に関する考え方等調査結果
 それぞれの訪問先では、「海の健康」に関して、その捉え方、指標、評価基準、モニタリング方法などについてヒヤリングした。
 「海の健康(healthiness of the sea)」については、一様に「大変難しい課題」との反応であった。
 海の環境の何に着目するかで変わる。優先させる環境を何にするかで定義が変わる。
 経済と環境の両立が大切。
 全体的な生物相に変化がないこと(エネルギーフローが変わらないこと)。
 種を特定して生産を見るのも大切。
 デンマークの環境研究所で紹介された富栄養化に関するモニタリング計画では、負荷から生物生産に至るフローが示されており、物質循環に着目しているが、大気中からの負荷も対象としている(図2-2)。
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図2-2 物質循環の流れ
(Coastal Eutrophication and the Danish National Aquatic Monitoring Program の Concept)
 「海の健康の指標」については、生態系の食物連鎖、生物多様性が異口同音に帰ってきたが、とりわけ底生生物を中心とした底層環境に着目したモニタリングの重要性が強調されていた。
 底生生物の種及び群集(底生生物相) 底生系(Bernice system)
 エネルギーフロー 生物生産 底生生物と基礎生産(プランクトン)
 汚濁負荷や底層の溶存酸素畳
 また、デンマーク(国立環境研究所)では、沿岸の富栄養化に関するモニタリングの指標項目として、
 冬の窒素濃度 夏のクロロフィル量 生物生産 植物生産の限界水深
 底層の溶存酸素量 底質の汚染と生物 生産不能(環境ホルモン?)
 を、具体的な例としてあげていた。
「海の健康の評価」については、具体的な手法を得るには至らなかったが、長期的・広範囲な生物モニタリングの情報を、時系列で追跡することでわからなかったことが見えてくることが共通している。今回訪問した研究機関では、例外なく10年以上の継続した生物モニタリングの情報を持ち、種類数、現存量などの変化が整理されていた(図2-3)。
 オランダでは「アメーバ法]が評価手法として多用(国のスタンダード)されているが、これは長期的な、しかも健全な(人為的負荷がない)頃の生物データがあることが普及しているポイントと考えられる。オランダの海洋研究所の玄関には1950年代から10年ごとの生物相の移り変わりがパネルにされていた(図2-4、写真2-9)。
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写真2-9 NIOZ玄関のパネルの生物相変遷の図(1950年代からの変化が表示されている)
 
 
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図2-3 オランダGrevelingenにおける底生生物の出現状況変化
(1994年から貝類から多毛類の出現に変わった)
 
Figuur3.5.1-1: AMOEBE zoute wateren
 
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図2-4 アメーバ法の一例
(代表的な出現種の基準年の状態を円で表し、比較年の状態をその割合で表示している)
 








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