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6.試験
1)江ノ島浮力、航走試験
[1]目的
 2次試作ネックガードの特性を知るため、水面での浮遊状況、退避行動、また、実艇を使用して、落水者の浮遊姿勢に対する艇の相対関係を把握し、次期試作ネックガードの改造の指針を得、自動膨張センサーの作動状況、また、退避行動の方法等を調査する。
[2]状況
(1)日時
 2001年8月10日 12:00〜15:40 藤沢市 江ノ島西浜
(2)参加者
 岩森 (JJSF委員)
 野口、松田、梅田 マリンスポーツ財団
 井上、元木 田辺ポーグ(株)
(3)天候
 曇り時々晴れ 気温30度 風2〜3m/sec 波高5cm
(4)器材
試験艇: JJSFマーシャル艇(ポンバルデイア GTX)
計測船: 和船
ネックガード: 2次試作ネックガード
膨張時太さ;フロントおよびサイドともに約10cm径
ネックガード用救命胴衣: セーフティジャケット胴衣の襟部にチャックで取り付け
ウエットスーツ(袖なし、短足)、ヘルメット、ブーツ一式装備
(5)試験者
梅田
(胸囲96cm ウエスト78cm 腰周り96cm 身長177cm 体重74kg)
松田
(胸囲94cm ウェスト78cm 腰周り96cm 身長162cm 体重63kg)
[3]試験方法および結果
(1)浮遊、浮力試験
 ネックガード付き救命胴衣を着用し、浮遊状態をネックガードの膨張前と膨張後で比較試験した。
・立ち泳ぎ状態
 膨張前より膨張後のほうが、空気室の浮力のため、わずか胴衣が浮く感じであるが大差ない。
・仰向け状態
 膨張前後で変化なし。
・うつ伏せ状態
 膨張前は水面に対し上半身が水平に近い状態であったが、膨張後は、浮力が働き頭と肩が水面上にわずか上がった感じがした。
・遊泳時
 遊泳中、湾曲している胴衣後身下端が尾底骨に当たると、ジャケットの後部の襟が更にヘルメットに近くなり当り易くなるため、ヘルメットごと顔面が水面に近くなり泳ぎにくい。
 膨張後は、空気室の浮力で顔があがり、泳ぎやすくなった。ただし、左右に頭を振ると、チンガードがガスボンベに当たり不快感があり、位置を移動する必要がある。
・うつ伏せから仰向けに反転
 膨張後のほうが、空気室が支点となり、うつ伏せから仰向けに立ち直したり、横の回転することは容易。
・その他(意見等)
 力を抜いた状態では、うつ伏せ状態になる。選手が失神等で気を失った場合、呼吸維持のため仰向けになることが望ましいが、うつ伏せになる場合、前胸部の中心の空気室を大きくする必要がある。ネックガードを大きくすると、意識がある場合、顎ガードを掴み潜る姿勢を取るのは更に難しくなるので、この兼ね合いを検討する必要がある。
(2)航走試験
・落水後の乗艇
 膨張後、下方向が見にくく、足掛けやテザースイッチのセットがし難いが、大きな問題でない。
・膨張した状態での水面下からの再乗艇は、前下方の視野が遮られるため、再乗艇時の足掛けおよび乗艇後のテザースイッチのセット等は容易でない。
・膨張後の乗艇走行
・通常の航走は可能で問題ない。
・空気室が顎ガードを抑えるため、左右に首を振るのでなく、体ごと左右に振る感覚が少し必要であった。
・底骨が艇のシートに当り、胴衣ごと持ち上がったとき、ヘルメットも持ち上がり、左右の視界が更に悪くなる。特に背が低い人や女子選手用のサイズを検討すべきである。
(4)航走艇のバウ高さ、落水者の状態測定
 水面状況にもよるが、競技艇バウの上下方向の動きは激しく、一般的なバウ高さ移動は15〜40cm程度であり、落水者のヘルメットに後続艇の先端(バウ)が直接接触する可能性が多い高さである。
 バウ高さ ・加速時: 40〜50cm
  ・プレーン時: 15〜25cm
  ・波の状況、レース時によっては: 0から100cm。
  ・落水者のヘルメット頭部先端高さ: 40cm
(5)自動膨張装置(スプール付き)の動作確認
 落水時に働く自動センサーを装備しての試験結果であるが、走行中の艇から後方に試験者が背中から落水し、完全没水後に再浮上した。直ちに作動せず、膨張を開始したのは落水後、約11秒後であり、その後2秒程度で膨張がほぼ完了した。競技会での後続艇は連なって走行しており、11秒後の膨張では遅すぎる。しかし、顔面前での膨張は、比較的に緩やかで恐怖感は無い。
[4]状況写真
 各種の試験状況を写真1から写真3に示す。
[5]考察
(1)防護
・装備を適確に行えば(梅田の場合)、救命胴衣の浮力で十分体が浮き、膨張したネックガードによる浮力はあまり効いていない状況であった。
・このネックガードが艇と人間(ヘルメット)の間に位置し、衝撃吸収作用を持たせることを目的としたもので、厚みを十分持たせることで首部を固め、更にヘルメットの下半分程度を覆い、艇のバウがネックガードの下に入り込まない形状でなければ、大きな効果は望めないと推定される。
・体が小さい場合やベルトのしめつけを十分行わない場合、胴衣が浮き、体が水面に沈む、また、ネックガードは水平に浮く状況になれば、ヘルメットと救命胴衣とがネックガードで結ばれ、ライダーが一体になった感じになれば、防護性が良いはずである(体が小さい松田の場合水面で着用のためか、救命胴衣の身体ホールドが緩やかで、体が水面下にズレ落ちたようであり、一体感がでていた。)。救命胴衣のサイズやヘルメットの形状との兼ね合いも加味しなければならない。








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