生ごみ真空乾燥式減容器
阪神内燃機工業株式会社
1.調査研究の目的
生ごみの処理は陸上・海上を問わず、重要な問題になっており、国内でも、一般廃棄物が5100万トン、この内食品廃棄物は1500万トンで一般廃棄物の約30%を占めているといわれている。
現在、そのほとんどは焼却処理されているが、ダイオキシンの問題や自然保護などの気運が高まる中、廃棄物処理の負担が重くなっている。
生ごみ処理装置は種々開発されているが、レストラン等の外食産業、学校給食、食品加工工場等には普及率が低い。
本調査研究では、従来の処理装置とは異なる真空乾燥方式を採用した高性能で、取り扱いが容易な生ごみ処理装置(減容器)を開発し、主として陸上を対象に普及を図り、生ごみ処理問題緩和に寄与していくことを目的とする。
また、当面は陸上のニーズを対象とするが、将来、船舶からの生活廃棄物の海洋投棄に係わる規制も厳しくなることが予想されるために、将来的には陸用、舶用の両方のユーザーニーズに対応していくこととする。
2.実施経過
2.1 実施項目
本調査研究では、以下の項目について実施した。
[1]水エジェクタの効率化と減圧能力向上の研究
50リットル用水エジェクタを基に300リットル用に対してエジェクタの個数や減圧室からのエジェクタまで(コンデンサーを含めた)の効率的なシステム作りと水エジェクタ自身の吸引及び減圧能力向上を目的とし、設計、製作、性能検証を行う。
[2]減圧室内の撹拌機能と効率的な加熱方法の研究
脱水能力向上のポイントは処理物の効率的な加熱である。その熱源として、温水、温油、蒸気、遠赤外線ヒータ等複数の熱源を利用し効率的な撹拌機能を含めたシステム作りを目的に設計、製作、性能検証を行う。
[3] 性能試験と要求性能の検証(性能試験の一部が補助対象/要求性能の検証は除く。)
[1]項及び[2]項をもとに、試作器を製作し、各種試験を行い、要求性能の妥当性を検証する。
2.2 実施期間
開始 平成12年4月1日
終了 平成13年1月31日
2.3 実施場所
阪神内燃機工業株式会社 玉津工場
3.実施内容(性能試験)
3.1 水エジェクタの効率化と減圧能力向上の研究
当初、乾燥室を300リットル一槽で計画していたが、顧客より150リットル二槽式が使用上合理的であるとの意見が多く、150リットル二槽式を開発することになった。
水エジェクタは乾燥室を300リットル一槽で計画していたため新設計する予定であったが、150リットル二槽となったため既製のエジェクタを使用し循環水量アップで吸入能力向上を行った。
3.2 減圧室内の撹拌機能と効率的な加熱方法の研究
脱水能力向上のポイントは真空の容器の中で処理物をいかに効率よく加熱するかである。熱源として、温水、温油、蒸気、電気など検討した結果、伝熱効率から見れば蒸気、温油が理想的であるが、熱源発生設備等を考慮すると一般的でない面があり、標準仕様は電気式とすることにした。
1)電気式ヒータ及び撹拌機能の検討
[1] 遠赤外線ヒータ(乾燥室外部及び内部照射)
[2] 電子レンジ方式、高周波式
[3] シリコンラバー及びSUS巻ヒータ
[4] 撹拌機能(回転数)
[1] 遠赤外線ヒータ(乾燥室外部及び内部照射)
シリコンラバー及びSUS巻ヒータは乾燥室外壁面に貼り付ける構造となるが、ヒータ接触効率が悪く熱量の伝達効率が低下するため外部及び内部からの照射を検討した。外部照射は構造的にはむずかしいことが判明したため、内部照射のみを検討することにした。
[2] 電子レンジ方式
真空容器の中では最良の方式と考え検討したが、電波障害、構造的、効率などいろいろと問題があり、今回は見送りとした。しかしこれらの方式は今後検討する価値はあると考えている。
[3] シリコンラバー及びSUS巻ヒータ
乾燥室下部の外壁に装着する方法であるが、熱伝導は外壁面への接触面の効率が重要な要素となる。シリコンラバーは作業性がよいが、一部空だき状態となりシリコンラバーが焼けて不具合となることが判明した。
SUS巻ヒータはシリコンラバーヒータで発生した不具合はないが接触面の効率の点では作業性が悪い。それを解決するために乾燥室壁面とSUS巻ヒータの間に熱伝導の向上を目的としたエポキシ樹脂を充填することにした。
[1]〜[3]の検討の結果、内部は遠赤外線ヒータ2kW、外部はSUS巻ヒータ3kW、乾燥室壁面とSUS巻ヒータの間にはエポキシ樹脂を充填に決定し、試作機を製作した。
[4] 撹拌機能(回転数)
乾燥室内部には処理物の撹拌及び破砕を目的とした回転翼を装備しているが撹拌回転数が処理物の加熱には大きな役目をしていると判断し、できるだけ回転数を低下することにした。
最初に開発した小型器(50リットル)は15rpmであったが、今回は3.5rpmに低下することにした。
4.性能試験と要求性能の検証
(性能試験の一部が補助対象/要求性能の検証は除く)
4.1 性能試験
試験は次の項目について行った。
[1] 真空圧上昇速度テスト…時間と真空圧の関係
Max真空圧と到達時間
[2] 真空圧保持テスト
Max真空圧状態で真空圧保持テスト
[3] エジェクタの性能テスト
循環水量、エジェクタ入口圧力と真空圧上昇速度テスト…時間と真空圧の関係
Max真空圧と到達時間
[4] ヒートバランス計測
循環水タンクヘの持込熱量の計測
[5] 蒸発テスト
おからでの乾燥テスト
4.2 試験結果と考察
[1] 真空圧上昇速度テスト…時間と真空圧の関係結果は
Max真空圧 −99.5Kpa
Max真空圧到達時間 約12.5分
小型器(50リットル)と同一レベルにあり、良好である。
計測データは表1に示す。
[2] 真空圧保持テスト
Max真空圧の状態で真空圧保持テストを行った。
結果
真空圧 −99.5Kpaで30分間変化なく、良好。
[3] エジェクタの性能テスト
エジェクタは小型器(50リットル用)と同一のものを使用し、循環水量を増減し、最適なポイントを探した。
結果
エジェクタ入口圧力0.25Mpa、水量13.7m3/hがMax真空圧到達時間約12分、Max真空圧−99.7Kpaで最良のマッチングであることが判明した。
よって循環水ポンプのモータ容量3.7kwを2.2kwに低下することが可能となった。循環水量、エジェクタ入口圧力、Max真空圧到達時間、Max真空圧の関係は表2に示す。
[4] ヒートバランス計測
おからを乾燥中に循環水への持込み熱量を計測した。
結果
循環水量=42L
水温上昇=3℃/1分50秒
持込熱量=4130Kcal/H
小型器(50L)は水道水の供給システムを採用しているが、同様のシステムでは水道水の消費が多く、ランニングコスト面でも問題となるため、チラーの検討を行う。
[5] 蒸発テスト
おから投入し、テストを行った。
投入重量=74.27kg
水分率=74.6%
計測は1時間ごとの水分率と真空圧及びおからの温度を計測し、水分蒸発量の計測をした。
真空圧は運転開始より徐々に低下し、−92。0〜93。0Kpaにサーチレートし、水分率が10%近くなると−98.5Kpaに上昇してくる。
水分蒸発量は運転開始より3時間までは1。4L/H、1.90L/Hで3時間後からは平均5.2L/Hとなった。
おからの温度は3時間後から40〜42℃で一定している。
水分蒸発量を見ると運転開始後3時間までが少ないことが判明した。乾燥時間短縮するためには、運転開始後の早期立上げが課題となる。テストデータは表3に示す。
5.まとめ
5.1 成果
各種試験を行った結果はほぼ計画通りの結果となった。
計画仕様
投入物 75kg(150L)
水分率 60%
水分蒸発量 4.5L/H
運転時間 10時間(水分率10%以下)
5.2 今後の課題
今後、本調査を基にさらなる性能アップと実用化に向けて開発を行いたい。
以下に開発に向けてこの課題を示す。
1)電子レンジ方式の加熱の研究
2)乾燥室外のSUS巻ヒータと室内の遠赤ヒータの容量の最適化の研究
3)水エジェクタの性能向上の研究
4)運転開始後の立上げを早くする研究