今月の私の一冊
「白い犬とワルツを」 テリー・ケイ著 兼武 進訳
新潮文庫(本体定価552円)
東京都 山田みちさん
アメリカに住んでいた知り合いからこの本を最近教えられた。妻を亡くした老人と、その後の余生のかたわらに現れた不思議な「白い犬」。最後は主人公もがんで亡くなるけれど、その間の心の動き、子どもや妻への想いにさわやかに胸を打たれました。
「もう一度あれの顔をなでてやれないだろうか。「きょうの日をけっして忘れないように」と牧師が彼や息子や娘や孫たちにさとす。「お亡くなりになった方をけっして忘れることのないように」きのうの夜、俺は毎日つけている日記をライティング・ビューローから取り出して書きつけた。きょう妻が死んだ。結婚生活五十七年、幸せだった。こんな簡単な日記ははじめてだった。この日は決して忘れない。牧師は忘れても、俺が忘れるものか。」
(本書より抜粋)