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今月の私の一冊
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「えごの花散る ナーシングホームの日々」
水谷 きく子著
藍書房(本体定価1600)
 
匿名希望さん
歌人としてもご活躍の水谷さんは老人介護に携わり、すばらしいお仕事ぶりと思います。自分が体験して、そしてこんなにやさしい方がおられうれしく思いました。必読です。
 
「老人介護を職業とする私は、よりよい介護をするために多くの研修会に参加してきた。そんなときに講師は繰り返し「お年寄りに幼児言葉を使ってはいけない」と言う。(中略)しかし、母はある日突然、自分から幼児言葉を使いだし、一緒に住んでいる妹を、「お母さん」と呼んだりした。「おんもへ行こう」と妹の手を取って四六時中、外へ出たがり、仕方なく妹がついて行くと、今度はすぐに「お家へ帰る」と逆もどりする。何かにせかされるのか。重い玄関のドアを開けてもらって中に入り、廊下を渡って茶の間に座ると一分もしないうちに、また、「おんもへ行こう」が始まる。季節は暑い夏にさしかかっていた。」
(本書「わたしの福祉元年」より抜粋)
 
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