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今月の私の一冊
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「姦と姦のあいだ」
寺田 明子著 東京経済(本体定価 1400円)
東京都 上野 章子さん
 60歳で大学生となりその4年後の卒論に発表した「性差が漢字文化にもたらしたもの一女偏を中心に」を下地にした本がこの一冊。990文字の女偏を分類した結果、著者は性差別を強調せず「嬲・嫐=なぶる」は「支え合う共生」を意味するととらえ、そのような社会を未来へ据えたいと説いている。長い人生の蓄積の書としておすすめしたい一書である。

「結婚=幸福、などと思っていたわけではないが、そういう生き方しかでき得なかった私は短歌づくりに恋をして、心も身体も怠惰で稚拙なままに人の妻となって三十数年の月日が流れた(中略)/ふつう漢字は偏と旁を見ると、訓めなくてもその意味は、おぼろげにも解ったりするものだ。けれどこの<嬲>は別もののようで、教室に声はなかった。<な、ぶ、る、>と訓み、それがそのままの意味なのです。私は一音一音を自分で確かめながら学生たちに年を込めて伝えていった」
(本書「あとがき」「ゲスト講師をつとめる」より抜粋)
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