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21世紀の医療を支える 電話による相談技法の活用
 病院の外来や地域の診療所では,受診者の長い列がみられます。しかも,いざ受診となると,悪名高き「3分診療」が今でも行われています。私は過去64年間,内科医として日本の医療に携わっていますが,東京都港区三田にありますライフプランニングクリニク(以下LPクリニク)など少数の施設を除いては,外来診療のシステムは,一向に変わっていません。
 アメリカ前大統領のクリントンは,アメリカにも国民全体の健康保険システムを作ろうと日本へ代表を送り,東京にある大病院を見学させたことがあります。この代表者たちは,病院が多数の外来患者をさばいている様子をみて,「これは診療ではない」と酷評したといいます。
 病気の診断になにより必要なのは,患者の病歴です。ところが,日本のように,数多くの患者を外来で短時間で診るという状況では,医師には時間のゆとりがありませんから,患者は自覚症状や日常生活を話すことを遠慮してしまいます。多くの医師は,患者のごく一部を診て,心電図,超音波検査,X線撮影,血液検査と検査をさせ,その結果に頼っています。更にその結果を聞きに再診すると,「異常はない」,「胃が悪いから」,「食事に気をつけなさい」と抽象的なことを告げ,「様子をみましょう。来週きなさい」という言葉で診療を終えます。
 これでは,根本的な治療にはなりません。LPクリニクの受診者には,医師の説明のほかに看護婦や必要であれば栄養士また検査技師による説明や指導があります。また即日検査結果が出ない場合には,電話で指導し,わざわざ来診しなくてもいいように配慮しています。
 21世紀はますます情報サービスがすすみます。医療の世界でも,もっと電話を活用して来診者数を減らし,初診に時間をかけることを考えるべきだと思います。アメリカでの初診の予約は,30分から50分の範囲です。日本でもせめて20分から30分の時間をかけ,医師は患者の病歴や生活状況をしっかり把握してほしいと思います。その後の診断結果や生活指導は,ナースが電話でもできるような体制がとれれば,来診者数が減り,時間に余裕がでてきます。LPクリニクでは,訓練されたナースが初診者の病歴や日常生活について問診し,それを上手に医師に伝えることもしています。
 私が診療した患者には,夜間でも必要があればいつでも私の自宅に電話をくださいといっています。高血圧の患者には,自宅で血圧測定を行ってそれをファックスでクリニクに送ってもらうようすすめています。送ってもらった血圧値の変動をみて,降圧剤は半分に減らそうとか,増やしましょうとか,やめて1週間の変動をみましょうと判断ができるのです。
 これらの経験をもとに,LPCの健康教育サービスセンターでは,「ナースによる患者・家族のための電話相談技法」というコースを,1998年から開講しています。ナースが電話で患者や家族の病歴を聞いて病状を判断し,適切なアドバイスや生活改善の指導ができるよう,専門の医師やナースによる実践に即した講義が行われ,ロールプレイによる演習もあります。この講座には,すでに175名の方が受講され108名の修了者が出ています。経験年数3年以上の意欲に燃えるナースに受講をおすすめしたいと思います。
 LPC理事長 日野原重明








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