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(3)志段味ヒューマンサイエンスパーク
 名古屋市守山区志段味地区(約758ha)では、居住、研究開発、商業などの機能の調和した「志段味ヒューマン・サイエンス・タウン」の建設をめざし、自然環境や歴史・文化資源に配慮しながら、組合施行の特定土地区画整理事業を推進している。その中核として、既存産業の高度化や新産業の創出を図るための研究開発拠点づくりとして、人と自然と科学技術の調和した21世紀のまち「志段味ヒューマンサイエンスパーク」の建設を進めている。これにより、この地域の高度制御技術、情報・エレクトロニクス、新素材・材料、環境関連技術などの分野における先端技術の研究開発機能が飛躍的に高められ、地域産業の活性化に繋がるものとして期待されている。
 また、サイエンスパークの研究施設の管理運営、研究推進業務を行う(財)名古屋都市産業振興公社では、新事業・新産業の創出に向けて産・学・行政の連携のもと、共同研究の支援や先端技術に関する普及啓発事業などを実施している。
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志段味ヒューマンサイエンスパーク
[1]研究開発センター
 研究開発センターは、平成9年5月に開館し、理化学研究所や地域の研究機関などによる先端産業技術に関する研究開発の拠点として、地域の産業振興と新たな産業の創造育成に寄与している。敷地面積は32,371m2、延床面積は6,439m2。各研究機関の主な研究内容は次のとおりである。
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[理化学研究所バイオ・ミメティックコントロール研究センター]
 高等生物の高度な制御機能を工学的に模倣し、柔軟、精練かつ信頼性の高い工学システムを創造することをめざして研究を行っている。
[名古屋産業科学研究所研究センター]
 情報・エレクトロニクス・材料等の分野の研究機関として、産・学・行政の共同研究プロジェクトを展開している。
[マイクロメカトロニクス研究開発センター]
 名古屋圏のマイクロメカトロニクス分野での技術優位性をさらに発展させ、この分野での全国的な研究開発拠点をめざしている。

[2]先端技術連携リサーチセンター
 先端技術連携リサーチセンターは、敷地面積25,258m2、延床面積6,500 m2で、平成11年11月に開館した。名古屋を中心とする地域の産業の未来を築く基礎的、基盤的な先端技術に関する研究開発を行う実験研究施設であり、民間企業、大学、公的研究機関などの研究者が連携して行う共同研究開発プロジェクトが進行している。主なプロジェクトは次のとおりである。
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[シナジーセラミックスの研究開発]
 独立行政法人産業技術総合研究所、ファインセラミックス技術研究組合等の共同研究で、高温や磨耗等に強いセラミックスや、連続的に排気ガスを浄化するセラミックスなど、今までにない特性をもった材料の開発を行っている。
[ガスセンサ材料の微構造制御の研究開発]
 独立行政法人産業技術総合研究所、岐阜大学等の共同研究で、過酷な環境下でも安定して作動するガスセンサや高感度ガスセンサの開発をめざしている。
[分子・ハーモニック構造の構築と電磁場制御デバイスの開発]
 独立行政法人物質・材料研究機構と独立行政法人産業技術総合研究所の共同研究で、機能性分子を用いた次世代のエレクトロニクス素子や発光素子をめざし、ナノレベルでの研究を行っている。
[都市廃棄物の資源化・再利用化技術の研究開発]
 (財)科学技術財団、名古屋大学、トヨタ自動車(株)、東邦ガス(株)による共同開発で、有機廃棄物から高品質のガスを製造し、これを燃料とする次世代型燃料電池による高効率発電プロセス及び排熱利用システムの研究開発を行っている。
[ダイオキシン類の除去・分解技術の開発]
 名古屋市環境科学研究所、名古屋大学等による共同研究で、焼却灰中のダイオキシン類を除去・分解する技術の開発をめざしている。

[3]独立行政法人産業技術総合研究所中部センター
 独立行政法人産業技術総合研究所中部センターは、旧通商産業省工業技術院名古屋工業技術研究所が、平成13年11月に名古屋市北区から志段味地区に移転したもので、敷地面積は30,000m2、延床面積は22,000m2である。 セラミックス、無機材料を中心とする先進工業材料に関するナショナルセンターをめざし、研究開発を推進しており、自然環境、人間社会における調和のとれた材料の開発、ものづくりに重要な技術の提供、新事業・新産業の創出などが期待されている。 

[4]クリエイション・コア名古屋
 クリエイション・コア名古屋(新事業創出型事業施設)は、新事業創出促進法に基づき、名古屋地区における新事業・新製品・高度技術に関する研究開発や新分野への事業展開などを行うベンチャー企業・中小企業等を支援するため、地域振興整備公団が整備する賃貸型の事業施設である。敷地面積は7,568m2、延床面積は2,520m2で、19室(52〜252m2)の賃貸スペースがあり、平成14年2月に完成し、4月から入居を開始する予定である。
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[5]テクノヒル名古屋
 テクノヒル名古屋は、研究開発型企業の集積を図り、名古屋市の産業の高度化や新産業の創造をめざすため、総面積約10haの区域に、民間企業の研究所や環境関連分野、医療・福祉健康関連分野、情報関連分野、新製造技術関連分野などの研究開発型企業を誘致しようとするものである。 平成13年度から民間企業の研究所や研究開発型企業向けに500m2以上の区画割で用地の分譲・賃貸の募集を開始している。 

(4)起業家向け各種助成制度
 名古屋市では、起業家向けに各種の助成制度を設けているが、そのひとつとして、創造的研究開発事業助成がある。これは、中小企業が、単独または他の企業との共同で、あるいは大学などの研究機関を活用して新技術・新製品の開発につながる独創的な研究開発を進める場合に、学識経験者等で構成される審査会で研究内容を審査のうえ、500万円を限度として、研究開発に必要な経費の2分の1を補助するものである。平成12年度には18件の応募に対して5件を採択し、総額1,571万円を補助した。 

(5)新産業フォーラム
 名古屋市では、21世紀の快適で質の高い産業技術を創出するために、それを担う新産業の育成に取り組んでいる。地方自治体が地域の産・学・行政のパートナーシップを強化して、このような先進的な課題にチャレンジしようとしているのは全国的にもユニークな施策である。名古屋市が進めている新産業育成プログラムの対象テーマは次のとおりである。
[1]マイクロ・メカトロニクス研究会
 名古屋地域の基幹産業であるメカトロニクスのより一層の高度化(インテリジェント化、マイクロ化、ファイン化等)を導く超未来技術、マイクロ・メカトロニクス技術の普及、振興を図り、地域産業経済の発展に資することを目的として、平成2年にマイクロマシン研究会(設立当時の名称、平成9年に名称変更)を設立し、交流研究会を開催するなど、産・学・行政の交流を進めている。

[2]資源循環型生産システム研究会
 「世界的なレベルの産業技術中枢圏域」と位置づけられる名古屋地域に集積している卓越した生産技術を生かして、従来の生産プロセスの「順工程」(設計→生産→販売→消費→廃棄)に「逆(インバース)工程」(未利用資源の回収、再製品化、再材料化、再エネルギー化等)を組み込んだ資源循環型の新しい生産システムの確立をめざす活発な技術情報交流を行い、21世紀のものづくり産業のあり方を提案するため、平成7年にインバース・マニュファクチュアリング・システム研究会(設立当時の名称、平成11年に名称変更)を設立した。現在、セミナーやシンポジウムの開催、ワーキンググループの設置などにより、業種を超えた幅広い人的ネットワークの形成に寄与しており、このネットワークが数々の新事業の実現に役立っている。

[3]福祉工学研究会
 医療・福祉・健康に関する産業(ヒューマンテック産業)は、21世紀の名古屋を担う新しい都市産業として期待を集めている。ヨーロッパには、国境を越えて300ほどの市が参加しているヘルシーシティリーグという組織があり、WHOの精神に則り、建築、福祉、教育、交通、職場環境など、あらゆる面で健康都市づくりを進めることを義務づける協定を結んでいる。このような社会システムの改善と、それをになうヒューマンテック産業の育成、支援をめざして平成10年にヒューマンテック研究会を設立し、アドバイザリー委員会、セミナーの開催などの活動を実施した。研究会は、会員のベンチャー企業と大学教授の連携による個人版TLO企業が誕生するなど、さまざまな具体的な成果をあげている。平成13年度に、この研究会を改組し、新たに福祉工学研究会を設立した。 








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