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2 経済の現状
 日本経済は、景気低迷の長期化による雇用環境の悪化や市場の成熟化による消費の低迷、低価格競争の激化などにより、先行きの見えない閉塞状況にある。平成13年6月には、内閣府の月例経済報告における経済の基調判断において、初めて「悪化」という表現が用いられ、明らかな景気の後退局面に入っている。鉱工業生産は低下しており、また大型小売店販売額は個人消費の落ち込みによる影響を受け、前年比マイナスが続いている。バブル経済崩壊後の負の遺産を引きずった企業の大型倒産が相次いでおり、雇用環境は企業倒産や雇用調整を伴うリストラにより厳しさを増して、平成13年11月には完全失業率が全国で過去最悪の5.5%に達している。
 名古屋大都市圏においても、個人消費は弱含みで推移しており、新設住宅着工戸数も減少傾向にあるなど、景気は下降傾向を示している。工業生産については、当地域の主力産業である輸送用機器、一般機械、電気機器の生産が弱含みとなっており、IT関連需要の減退や、アメリカ経済減速の影響などにより低下傾向にある。特に、地域の経済基盤を支えている中小企業では、大企業におけるリストラ強化や国内生産の縮減基調があり、将来に対する展望が見出せない状況にある。
 昨今の国際的な業界再編や中国を中心とした東アジア地域への生産拠点の移行の動きは、これまでの陶磁器、繊維といった地場産業分野にとどまらず、近年では電子機器など、これまでこの地域がわが国経済を牽引してきたリーディング産業分野にも急速に拡大してきている。今後とも多様な産業分野においてこの現象は加速していくことが予想されており、「ものづくり産業」に大きく依存している名古屋大都市圏にとっても、国際競争力の低下や産業の空洞化への対応は喫緊の課題となっている。
 さらに、この地域においても倒産件数は大幅に増加しており、また、全国レベルは下回るものの、名古屋市を含む愛知県の完全失業率も4%を超える高い水準が続いている。 








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